最近、米オラクル社の名前を頻繁に目にする。
まず、大きいのはTikTokの米国事業(以下、「米TikTok」)を買収する企業連合としてオラクル社のグループの名前が挙がっている。2025年9月16日のロイターは、オラクルと投資会社のシルバーレイクとアンドリーセン・ホロウィッツで構成する企業連合が、米TikTokを買収すると報じている。
オラクル連合がTikTokの米国事業の約8割を保有し、中国側が残る2割程度を保有する。そのうえで、米国専用のTikTokのアプリを新たにリリースし、既存の米国のユーザーに対しては、現行のアプリから新しいアプリへの移行を促すという。ユーザーの情報については、米国内のデータセンターに保存され、オラクル連合が管理するという。
9月10日にはブルームバーグが、共同創業者ラリー・エリソン氏が、イーロン・マスク氏を抜いて、世界一の富豪になったと報じた。エリソン氏が保有する資産の大部分は、オラクル株だとされ、同社の株価上昇にともない、保有資産の価値が上昇した。
このオラクル社については、データベースの会社というイメージがあるものの、グーグル、アップル、マイクロソフトといった他の大手IT企業ほど、なじみのある名前ではない。スマホや、PCのOS、ブラウザといった日常的に接する製品を提供しておらず、企業向けのサービスが事業の中心だからだろう。
しかし、少なくとも米国においては今後、TikTokという絶大な人気のあるSNSプラットフォームを保有することで、その一般的な知名度は一気に上昇するはずだ。あらためて、オラクルとはどんな会社なのか、復習してみたい。
50年前からデータベースの会社として知られる
オラクル社のこれまでを確認してみると、データベースの会社という大ざっぱなイメージはおおむね間違っていない。
エリソン氏が米オラクル・コーポレーションを創業したのは、1977年のことだ。当時の社名は、オラクル社ではなく別の名前だったが、Windowsもまだ登場していない時代だ。調べてみると、アップル社が「Apple II」を発売した年にあたる。
2年後の1979年、同社は企業向けのデータベース管理システム「Oracle」を発表し、1982年に会社の名前もオラクルに変更している。現在も、同社の主力製品のひとつは、Oracle Databaseとされる。
株価急騰の要因になったAIシフト
2025年9月9日の2026年度第1四半期の決算発表時には、オラクル社の株価は一時、米国市場で43%上昇した。この決算発表で同社株が急騰した要因として、受注残高の急増が挙げられる。
受注残高は「残存履行義務」とも呼ばれ、契約はしたもののまだサービスは提供していない、将来の収益の見通しを示す指標だ。この決算でオラクル社は、受注残高が前の年と比べて約3.5倍の4550億円(約67兆円)に達したと発表している。
この受注について、内訳は明らかにされていないが、7月にはオラクル社とOpenAIが、オラクル社のデータセンターの演算能力を利用する契約を締結している。受注残高が増加した大部分が、OpenAIとの大型契約に関連するものと見られている。
アマゾン、マイクロソフト、グーグルが提供するクラウド上で、オラクルのデータベース関連サービスを使えるようにする新しいサービスも、第1四半期に約1500%の成長を遂げたとされる。
こうした大規模な受注に注目が集まり、オラクル社に買いが集まったと見られている。
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