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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第353回

世界初「AI大臣」汚職対策に取り組む

2025年09月16日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 南東ヨーロッパのアルバニアがAIを大臣に任命した。

 筆者がこのニュースに最初に接したのは、2025年9月11日付のロイターの英文記事だ。一瞬、日本のデジタル大臣のような、AIを担当する大臣なのか、それともAIが大臣になるのか混乱した。よく読むと、やはりAIが大臣になると報じている。AI大臣の担当は公共調達で、汚職の撲滅に取り組むという。

 AI大臣の名前は、Diella(ディエラ)で、アルバニア語で「太陽」の意味だという。ロイターによれば、エディ・ラマ首相は任命の際に、「物理的に存在しない初めての内閣のメンバーだ」とDiellaを紹介したという。

 BBCは、AIが大臣に任命されるのは「世界初」だと報じている。ただし、アルバニアの憲法では、大臣は責任能力のある18歳以上の国民と定められている。憲法上の制約を考えると、AIを「大臣」に任命する施策は、日本の警察が芸能人を一日署長に任命するイベントを思わせる。

 Diellaが担当する公共調達は、政府が民間企業に仕事を発注するため、ワイロや談合といった汚職がはびこりやすい分野だ。政治とカネの問題は、日本と同様にアルバニアでも深刻な問題であるようだ。Diellaは、どのように世界共通の問題に取り組むのだろうか。

EU、アルバニアに汚職対策強化を求める

 そもそも筆者は、アルバニアの位置を、すぐには思い出せなかった。あらためて地図を確認すると、アドリア海をはさんでイタリアの東側にある。バルカン半島とも呼ばれるエリアにある。人口約276万人で、広島県と同じくらいの規模だ。

 国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナルが公表した2024年の「腐敗認識指数」のランキングでは、調査対象の180の国と地域のうち、アルバニアは80位にランキングされている。このランキングは上位の国・地域であるほど、腐敗していないと評価される。ちなみに、日本は2024年のランキングで20位だった。

 汚職対策は、アルバニア政府にとって重要な政治課題でもある。同国は2009年にEU加盟を申請しているが、政府高官に対する汚職対策が不十分であるとして、加盟が認められていない。欧州委員会の報告書は、アルバニアの現状について、次のように指摘している。

 「アルバニアに対し、法の支配と経済成長を強化し、汚職と組織犯罪に対抗し、人身売買を防止し、基本的人権の保護を確保し、表現の自由、情報の自由、メディアの多様性と独立性の分野で前進するための改革を加速するよう求める」

 アルバニアの現政権は2030年までにEU加盟を目指しているが、その前提として、EUから汚職対策の強化を求められているのが現状だ。AI大臣の登場も、EU加盟問題が背景にあるのは間違いない。

具体的な方針は不明

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