働き方・仕事についてのお悩み、募集しています!
「こんな働き方はもう嫌だ」「仕事がなんだか楽しくない」。
誰かに聞いてほしい、でも近しい人にこそ言いにくい仕事の悩み。この連載では、そんなお悩みの解決の糸口を一緒に考えていきます。
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今回のお悩みは「仕事における感情」について
ASCII読者の皆さん、こんにちは!正能茉優です。
この連載「お仕事悩み、一緒に考えます。」では、今月も、読者の皆さまからいただいたお仕事に関するお悩みについて、一緒に考えていきます。
今月のテーマは、先月に引き続き「仕事における感情」の取り扱い方について。
仕事における感情の存在は、果たして「仕事を邪魔する」ものなのでしょうか? それとも「仕事にプラスになる」ものなのでしょうか?
この連載では、ここ数十年の国際学会の論文をもとに、「仕事における感情」の存在を全4回に分けてひも解いているので、ぜひご覧ください!(第1回、第2回、第3回)
イライラ、モヤモヤ、そして涙。仕事における「感情」の取り扱い方に悩んでいます。
正能さん、はじめまして。
私は新卒で入ったIT企業に勤め、今年で4年目になります。
今年度からサブマネジャーという新しい役職につきました。
マネジャーの意向を踏まえつつ、現場のメンバーをマネジメントしていく、いわゆる現場リーダーのような仕事です。
メンバーの一人として仕事をしてきたこれまでとは違い、思うようにいかないことも増え、最近はその都度発生する自分の感情に悩まされています。
例えば、自分の部下にあたるメンバーに丁寧に指導・アドバイスしたつもりでも泣かれてしまったり、上長にあたるメンバーに事前にこまめに報告をしていた内容について叱責を受けたり、一つ一つのことは大したことではないのですが、小さなイライラ・悔しさ・不甲斐なさが日々たまっている感じです。
たまっているだけならまだいいのですが、どうしても我慢できないとき、上司との面談で涙が流れてしまったり(リモートだからバレていないかもしれませんが)、それ以外の時にも自分のイライラやネガティブな感情がメンバーに伝わってしまったりしているようにも思えて、それによってチームのモチベーションや心理的安全性が揺らがないかということも気になります。
単純に「我慢しろ」という話のような気もするのですが、やはり感情というのはそうもいかない部分もあり。
そんなときSNSで正能さんが「仕事における感情」について研究されているというのを見て、連絡しました。
「仕事における感情」って、正直どう取り扱うべきものなのでしょうか?単純に我慢できない自分のようなケースの場合の考え方を教えてもらえると、うれしいです。
(ケイスケさん(仮名)・28歳・会社員)
「EASI理論」とは?
ケイスケさん、改めてお便りをありがとうございます!
EASI理論をもとに「仕事における感情」を考えた前回に続き、今回は「仕事における感情をどう表出していくべきなのか?」について、考えていきましょう!
前回ご紹介したEmotions as Social Information (EASI) 理論 [1][2]ですが、この理論では、感情表出が組織における対人にもたらす影響を、対称性という観点から分析しようとしています。
対称性というのは、ある感情表出と、その感情表出が組織における対人にもたらす影響の関係性を表す概念です。
感情表出と、その感情表出がもたらす影響をポジティブあるいはネガティブに類型した場合、感情表出とその影響が共にネガティブあるいはポジティブな場合にはそれは対称影響をもたらしているということであり、逆に感情表出とは逆の影響が発生している場合にはそれは非対称影響をもたらしているということになります。
少しわかりにくいので具体例を挙げると、前回の再掲になりますが、例えば、ある人がネガティブな感情表出(例:怒り)をしたときに、その感情表出の受け手がポジティブな反応(例:「怒るほどに本気なんだね」と前向きな捉え方・対応をする)をした場合には、その影響は非対称であるということになり(=ネガティブな感情表出に対して、ポジティブな対人影響をもたらしたから)、逆に、同じくある人がネガティブな感情表出(例:怒り)をしたときに、その感情表出の受け手がネガティブな反応(例:「あなたが悪いのに、なぜ怒るのか」と逆ギレする)をした場合には、その影響は対称である(=ネガティブな感情表出に対して、ネガティブな対人影響をもたらしたから)といった具合です。
これらの影響を対称かあるいは非対称かに分けるのは、その感情表出の受け手の「感情反応」と「推論プロセス」のどちらがより強く引き起こされたかによって決まる[3]というのがEASI理論の大枠であり、さらにその感情表出の受け手の「感情反応」と「推論プロセス」のどちらがより強く引き起こされたかは、感情表出を観察した受け手がその感情表出に対し、「感情表出の妥当性」と「情報処理」のどちらをより強く引き起こすかによって決まる[3]とされています。
ゆえに、このEASI理論においては、感情表出した本人にとっては、「全く同じ感情をもとにした、全く同じ感情表出」でも、その感情表出の「妥当性」(その感情表出が、受け手にとっての規範的期待と一致するか)と「情報処理」(受け手が感情表出によって伝えられた情報を処理する動機と能力)のどちらをより強く引き起こすかによって、その感情表出がもたらす対人影響は変わってくるということらしいのです。
感情がもたらす影響を、コントロールできる可能性がある!?
これらのポイントを押さえることができれば、私たちは、感情のもたらす対人影響を一定コントロールできる可能性もあるのかもしれません。EASI理論に基けば、その際に大事なのは「自分がどんな感情なのか、そしてどんな感情表出をするのか」ではなく、「受け手が、その感情表出をどう受け取るのか」を想像しコントロールすること。
例えば、「怒り」というネガティブな感情表出をする場合、受け手に結果としてポジティブな影響をもたらしたい場合と、結果としてネガティブな影響をもたらしたい場合とでは、「感情表出の妥当性」(その感情表出が、受け手にとっての規範的期待と一致するか)と「情報処理」(受け手が感情表出によって伝えられた情報を処理する動機と能力)のどちらを強くするかによって、もたらす影響を一定コントロールできる可能性があると理論上は考えられます。
「戦略的感情表出」は実は逆効果という研究も
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