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政府が、ライドシェアの解禁に向けて動き出した。
岸田文雄首相は2023年10月23日、衆院本会議の施政方針演説で「地域交通の担い手不足、移動の足不足といった深刻な社会問題に対応しつつ、ライドシェアの課題に取り組んでまいります」と述べ、ライドシェアの導入に向けた本格的な検討を進める方針を表明した。
背景にあるのは、タクシー運転手の深刻な人手不足と訪日観光客の増加だ。
人手が足りないなら、早く解禁すればいいのにと思う人もいるかもしれない。
しかし、準備は簡単には進まなそうだ。
NHKによれば、10月17日には、タクシー業界を支援する自民党の議員連盟の会合が開かれ、ライドシェアに反対する声が相次いだという。
世界各国で、ライドシェアのプラットフォームが広がっているが、日本ではタクシー業界が壁になる形で、ライドシェアの解禁が実現しなかった経緯がある。
ライドシェアを巡る議論は、しばらく紛糾しそうな雲行きだ。
「乗り合い」の仕組み
まず、おもなライドシェアの仕組みを、あらためて押さえておきたい。
ライドシェアは、「乗り合い」と和訳される。ドライバーは自家用車で乗客を迎えに行き、目的地まで送り届ける。
ライドシェアを代表するプラットフォームと言えば、Uberだろう。
Uberのウェブサイトに、その仕組みの解説が掲載されている。
1.乗客がアプリを起動
2.乗客とドライバーをマッチング
3.ドライバーが乗客を車に乗せる
4.ドライバーは、乗客を目的地に送る
5.ドライバーと乗客は、お互いを評価し、レビューを記録する
優良と評価されるドライバーには、優先的に仕事が回ってくるそうだ。
乗客も評価の対象で、優良な乗客には、優良なドライバーが迎えに来てくれる確率が高くなるようだ。
国交省「安全、利用者保護に問題」
まず、国土交通省は現状で、ライドシェアについてどう考えているのだろうか。
少し長くなるが、4月26日の衆議院国土交通委員会での、斉藤鉄夫大臣の答弁を確認してみたい。
「運行管理や車両整備等について責任を負う主体を置かないままに、自家用車のドライバーのみが運送責任を負う形態を前提としており、安全の確保、利用者の保護等の観点から問題がある」
「安全性及びサービスの安定的な提供の観点から、まずはタクシーやデマンド交通を御活用いただき、それでも不十分な地域では、自家用有償旅客運送も組み合わせて交通サービスを確保していくことが重要」
答弁からは、国交省は「安全」と「利用者の保護」がポイントだと考えていることが読み取れる。
解禁に向けて、特に議論を呼びそうなのは、やはり「利用者の保護」だろう。
米国で多発する性被害
ウーバーの米国版「安全性報告書」によれば、2019年~2020年の間に、3824件の性的暴行等が起きている。
報告書は、「性的でない身体の部分への合意のないキス」からレイプまで、5つのカテゴリーに分類している。レイプについては、報告書の対象期間に141件が報告されている。
ドライバーも乗客もオンラインでの登録が必要であるため、個人の特定は難しくないはずだ。それでも、これだけ多数の事案の発生が報告されている事実には、驚くしかない。
これまで日本でライドシェアの導入に対する慎重論が根強いのは、タクシー業界が全力でブロックしてきたからだけではない。
ライドシェアという新しい分野をリードするウーバーは、明らかに利用者保護に深刻な課題を抱えている。
タクシー需要増、運転手減
タクシーを中心とした移動手段の需要は急増している。
政府観光局によれば、2023年9月の推計値で訪日観光客は218万人を超えた。コロナ禍前の2019年9月の9割を超えており、このまま増加が続けば、観光客数はコロナ禍前を上回る可能性が高い。
反対に、タクシー運転手の人手不足は深刻さを増している。
3年にわたるコロナ禍で人々の動きは止まり、タクシー業界では離職が相次いだ。
9月9日のNHKの報道によれば、2023年3月末の時点で、タクシーの運転手23万1938人。2019年3月末と比べ、約6万人減った。およそ2割がタクシー運転手の仕事を離れた計算になる。
この結果、日本の利用者も外国人観光客も、タクシーに乗りたくても捕まらないという現象が起きている。
ウーバーは劇薬
先ほど紹介した斉藤大臣の答弁には、「自家用有償旅客運送」というあまり耳慣れない言葉が出てくる。
実はこの制度は、ライドシェアに似たところがある。
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