働き方・仕事についてのお悩み、募集しています!
「こんな働き方はもう嫌だ」「仕事がなんだか楽しくない」。
誰かに聞いてほしい、でも近しい人にこそ言いにくい仕事の悩み。この連載では、そんなお悩みの解決の糸口を一緒に考えていきます。
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「不妊治療」と仕事の両立にまつわるお悩み
ASCII読者の皆さん、こんにちは!正能茉優です。
この連載「お仕事悩み、一緒に考えます。」では、今月も、読者の皆さまからいただいたお仕事に関するお悩みについて、一緒に考えていきたいと思います。
今月のテーマは、前回に続いて、30代女性にいただいた「不妊治療」と仕事にまつわるお悩み。
とてもセンシティブなテーマであることを自覚しながら、働く女性にとっては、働くことと切っても切り離せないテーマなので、ぜひいっしょに考えさせてもらえたら、そして当事者以外の人もこのテーマを考えるきっかけになる記事にできたらうれしいです。
妊婦検診で気遣われる同僚にイライラ。私も病院に行きたい
正能さん、はじめまして。
前回の卵子凍結に関する記事を読んで、こういう遠い距離感だからこそ相談できることもあるのかと思い、「不妊治療」と仕事にまつわる悩みでご連絡しました。
私は今、会社に勤めながら、不妊治療を続けて2年ほどになる34歳です。そして今、私のチームには、妊娠7ヵ月になる後輩がいます。
こんなこと口が裂けても会社の人には言えないですが、最近この後輩にイライラモヤモヤしてしまうんです。
というのも私は今、月に数回、多い時には月6回ほど、不妊治療のためにクリニックに通院しています。
ただ、今私がいるチームは6名のチームで、うち一人が妊婦さんであるために、なかなか有給が取りづらい現状です。なので通院は、土曜日の朝一を中心に、どうしても平日に行く必要がある時には夕方の打ち合わせ後にダッシュでこなしています。
かたや妊婦さんである後輩は、検診のたびに堂々と有給を取って、それもみなし勤務という扱いで、それでもなお「体第一で」と周囲に気遣われて、休みを取ったり早退したり、出張を免除されたりしています。それを見ると、イライラモヤモヤした気持ちが止まりません。
私だって子どもが欲しい。そのために私だって病院に行きたい。私だってストレスをできるだけ減らすようにって言われているのに。
この出張がなければ、もう一回チャンスがあったかもしれないのに。
こんな感じで、もはや子どもの駄々こね状態です。(苦笑)
後輩が妊娠したことはとても喜ばしいことのはずなのに、そしてその後輩のことはケアすべきはずなのに、真っ直ぐ喜んだり、気遣ったりできない自分が嫌になります。
でも、イライラモヤモヤしているのもまた事実で、そろそろその気持ちを隠すことも難しくなってきました。今は精一杯思い遣って接していますが、もしかすると表情には出ているかもしれません。
自分の気持ちを推測するに、会社によっては「不妊治療」に関する制度が整ってきていることもあり、自分ももう少し理解されたい・フォローされたいのだと思います。
こんなことなかなか会社の人には言えませんが、私はどんな気持ちで毎日会社に行ったらいいですか?そして不妊治療に理解を示してほしいことをどう伝えたらいいですか?
こんな状態が後輩が産休に入るまであと数週間続くと思うと、心を乱さずに乗り切れる自信がありません。
(エリナさん・34歳・会社員)
自分のこととは一旦切り離して、社会問題として、会社の問題として、捉えてみる。
エリナさん、お便りありがとうございます。今回は、会社への伝え方・サポートの得方について、一緒に考えさせていただきますね。
お便りに書かれていたご状況、私は当事者ではないので、エリナさんのお気持ちを100%理解することはできませんが、なんともやりきれない状況だと感じました。と同時に、どうしたらそのしんどい状況から抜け出せるのだろう?と真剣に考えました。
ゆえに今回書かせていただくのは、「不妊治療に通いやすい就業環境を、どうしたらチームのメンバーと共につくっていけるのか?」ということへの私なりのアイデアです。
もしお気持ちへの理解・共感が至らないところがあったらごめんなさい。
まず今のエリナさんは、置かれた状況に対して様々な思いを抱えていらっしゃると思うのですが、あえてその「私は怒っている、困っている」という感情・状況から、「私」という主語を切り離してみることは難しいでしょうか?
というのも人は、「私は」から始まる主張を聞いた瞬間、その主張を“その人個人の主張”、もっと言えば“ワガママ”と捉えがちです。
「エリナさんが言うならそうだよね。エリナさんの主張の通りにしよう」と思われるようなチームのカルチャー・関係性がそこにあれば、すでにエリナさんはなんらかの個人的な主張をなさって、この件は解決しているはずなので、今はそうではないという前提でお話しさせてもらいます。
「私は」から始まる主張がどんなに正しくても、個人の主張・ワガママと捉えられてしまう場合、私たちはどう動いたらいいのか?
その一つの方法は、「主張の主語を、組織・事業・社会のいずれかに拡大して主張すること」です。
個人の主張を、大義ナイズドする。
これは私が「大義ナイズドする」と呼んでいる行為なのですが、視野を広げて、自分個人の主張を捉え直した時、その個人の主張は、多くの人を巻き込む存在になり得ます。
私がこのことに気づいたのは、大学時代に、地域のモノをかわいくして発信・販売する会社を始めた時のことです。
創業を考えた当初、私は「私が地域のモノをかわいくしてみたい」という個人の想いから活動を始めたのですが、そのうち「(地域のモノをかわいくすることで)地域を元気にしていきたい」という大義めいた思いが湧いてきて、それ以降、協力してくれる人の数・質が明らかに変わりました。それは、私の想いが、個人の主張から、社会への想いに変わったからだと私は考えています。
今回のエリナさんのお話も、見方によっては「個人の問題、女性の問題」と思われそうですが、今社会で働く人材の51%は女性であること、さらには「実際に不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)夫婦は夫婦全体の18.2%」とも言われていることを考えると、不妊治療と仕事の両立は個人に閉じた問題ではなく、組織が取り組むべき問題であり、社会全体の問題であると私は考えます。
主語が大きすぎると、意識高い系の話になってしまって、目の前のことが解決しないケースも。
とはいえ、主語を広げすぎると、意識高い系の話と捉えられてしまって、問題が本質的にはなかなか解決しないことも。
そんな時に大切なのは、チームのカルチャーやフェーズに合わせて、「個人・組織・事業・社会」のいずれかに視野・視座のチューニングをしていくことです。
例えば、「このままじゃ社会が〜」と話してみても「それは社会問題でしょ?自分たちには関係ない」とメンバーの気持ちが動かなかったら、「このままじゃうちのチームも、まずくないですか?」と話してみる。
「このままじゃうちのチームが〜」と話してみても「それは今回の件に限った話でしょ?今回は我慢してよ」とメンバーの気持ちが動かなかったら、「このままじゃ会社としてまずくないですか?」と話してみる。
こんな感じで、チームのカルチャー・フェーズに合わせて、視野・視座を拡縮しながら、メンバーとのコミュニケーションを是非とってみてください。
(今の自分のチームにはどんな伝え方が合うんだろうと実験するくらいの気持ちで取り組まれると、伝わらなかった場合にも、お気持ちが乱れにくいかと思います。)
伝え方の話でありながらも、実際に社会問題でもあります。
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