パスポートの更新や新規発行の手続きが、オンラインでできるようになる。
2022年4月20日、改正旅券法が参院本会議で可決された。
時事通信の報道によれば、更新手続きは2022年度末ごろから新規発行は2024年度中にオンラインで申請できるようになるという。
行政手続のオンライン化が一気に進み、多くの分野でPCやスマホで申請ができるようになったが、次に議論のテーブルに上がっているのは、交付のデジタル化だ。
パスポートについては、申請はデジタル化されるが、交付についてはまだ、具体的な議論も始まっていない。
当面は、スマホで申請して、従来の冊子型のパスポートを受け取る方法が続くことになる。将来的に、交付がデジタル化されると、スマホなどに各種証明書やパスポートがインストールされることになる。
さまざまな手間が省けることは確かだが、交付のオンライン化は申請以上に高いハードルがある。
2024年度、戸籍は提出不要に
外務省の公表資料によれば、パスポートの申請に必要な手続きを段階的にデジタル化する方針であるようだ。
オンライン申請の導入で、本人確認がひとつのハードルと考えられているが、マイナンバーカードの個人認証機能や、顔認証技術等を活用するという。
マイナンバーカードには4桁の暗証番号と、パスワードが設定されている。こうした機能や、スマホの顔認証を併用して、他人による申請を防止する考えのようだ。
現在、パスポート関連の申請には戸籍抄本の添付が求められている。申請する人は、戸籍がある市区町村の窓口に出向くなどして、戸籍抄本を取得して添付する作業が発生する。
こうした添付書類についても、法務省が発行する戸籍の電子証明書を参照する仕組みを使って、添付を不要とする方針だという。
交付のデジタル化は低調
デジタル庁のまとめによれば、2020年3月末時点で、行政手続のうち申請については59.6%がデジタル化されている。
一方で、交付についてのデジタル化率は17.4%にとどまる。
現時点でわかりやすい例はないかと考えてみると、登記の手続きが思い当たった。
経済関連の記事を書いたり、調査をしたりするときに、企業の商業登記を確認することがある。
特定の会社の登記簿を確認したいとき、オンラインで申請してPDFの登記簿のコピーをダウンロードすることができる。
しかし、証明書については手続きが異なる。
PCで申請はできるものの、証明書は後日郵便で送られてくる。
コピーであればPDFで見てもらってもいいが、「証明書」となると今のところ紙でないとダメということになる。
パスポートの申請はデジタル化されるが、当面は冊子型のパスポートが維持される理由のひとつでもあるだろう。
「デジタル完結」掲げるデジ庁
この連載の記事
- 第314回 SNSの“ウソ”選挙結果に影響か 公選法改正議論が本格化へ
- 第313回 アマゾンに公取委が“ガサ入れ” 調査の進め方に大きな変化
- 第312回 豪州で16歳未満のSNS禁止 ザル法かもしれないが…
- 第311回 政府、次世代電池に1778億円 「全固体」実現性には疑問も
- 第310回 先端半導体、政府がさらに10兆円。大博打の勝算は
- 第309回 トランプ2.0で、AIブームに拍車?
- 第308回 自動運転:トヨタとNTTが本格協業、日本はゆっくりした動き
- 第307回 総選挙で“ベンチャー政党”が躍進 ネット戦略奏功
- 第306回 IT大手の原発投資相次ぐ AIで電力需要が爆増
- 第305回 AndroidでMicrosoftストアが使えるように? “グーグル分割”の現実味
- この連載の一覧へ