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ASCII Power Review 第165回

オリンパスのロゴが入る最終モデルです

「OM-1」実機レビュー = OM SYSTEMのフラッグシップカメラは完成度MAXだ

2022年02月22日 10時00分更新

文● 写真 岡田清孝 + 編集● ASCII PowerReview軍団

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 オリンパスから分社化したOMデジタルソリューションズが、マイクロフォーサーズのフラグシップモデル「OM SYSTEM OM-1」を発表した。

 オリンパス時代の2020年に発売された「OM-D E-M1 Mark III」(俺の愛機でもある)の後継モデルで、約2年という、今時では早めのモデルチェンジになるが、どう進化したのかユーザーとしては気になるところだ(試用機は発売前なので、画質や動作は実製品とは異なる場合があります)。

量販店価格はボディーのみ27万2800円。「M.ZUIKO 12-100mm F4.0」とのレンズキットは38万2800円(別々に買うより6万円以上お得!)。いずれも3月発売予定。

「OM-1」という名前に負けない操作性と機能の向上

 ボディーはグリップの形状が変更され、見た目が少し大柄に感じるが、実際はサイズで数mm程度、重量19gの微増と大差はない。

ボディーサイズは 134.8(W)×91.6(H)×72.7mm(D)。重量はメディアとバッテリー込みアイカップは無い状態で599g。

ペンタ部のロゴは「OLYMPUS」のまま。新たなブランドネームである「OM SYSTEM」のロゴは正面右下にひっそりと。

 グリップの深さやシャッターボタンの角度が変更されたおかげで、手にすると格段にホールド感が向上している。

 操作系は上面のデザインやコマンドダイヤルの形状が変更されたので一瞬違和感はあったが、よく見ると配置は全く同じ。前モデルユーザーには嬉しい配慮だ。ただフロントのコマンドダイヤルの位置が少し窮屈に感じ、個人的は「E-M1Ⅲ」シャッターボタン周りに配置したダイヤルの方が好み。

上面は「OM-D E-M1X」に似たデザイン。グリップがサイズアップしているが、そのぶんホールド感は向上している。

 背面には「AF-ON」ボタンが追加された。従来機で親指AF行うには「AEL/AFL」ボタンを使用していたが(しかも設定が少し複雑)、単独のボタンが追加されたのは親指AF派には歓迎されるだろう。

背面操作系は「AF-ON」ボタンの追加とファインダー右横の「AEL」レバーの形状以外は変更無し。

 ファインダー部も大きくなり、EVFは576万ドットと高精細で倍率も最大約1.65倍にアップしている。実際に覗いて感じたのは階調の滑らかさで、明暗部が白とびや黒つぶれすることなく視認できた。

 メニュー画面は縦から横のタブに変更し、機能の配置も整理し直した。初めは戸惑ったが、正直従来機のメニュー配置は少しわかりにくかったので、慣れればこちらの方が見やすいだろう。ただメニュー画面でのタッチ操作はできない。タッチ操作と相性の良さそうな構造なので残念だ。

メニュー画面は大幅に変更。機能の組み合わせによって選択できない場合に、選択できない理由を表示してくれるのが何気に便利。

 細かい点だが電子水準器が画面中央付近に表示されるようになり、おかげで少ない視線移動で水平垂直を図ることができるようになった。

電子水準器の表示が変更。OMシリーズは真俯瞰でも電子水準器が使用できるので製品撮影などで重宝する。

 端子類は変更がないがデュアルのメディアスロットは共にUHS-Ⅱ対応になった。

右側面にはメディアスロットとレリーズケーブル端子。左側面にはマイク、ヘッドフォン、HDMI、USBを備える。

 バッテリーは容量がアップした新型の「BLX-1」に変更。従来機のバッテリーで複数所有している身としては使い回しができないが悲しい。また専用充電器「BCX-1」(実売1万4300円)も別売になっている。USB充電が可能なので困ることはないが、この価格帯の製品なら同梱して欲しいところだ。

新しいバッテリーの撮影可能枚数は約520枚と従来機より向上しているが、連写や「ハイレゾショット」などの合成機能を多用すると消費が激しい。やはり予備(実売1万1000円)は欲しいところだ。

裏面照射型素子の採用で感度と画質がアップ

 撮像素子の画素数は従来と同じ2037万画素だが、裏面照射積層型で「1053点オールクロス像面位相差クアッドピクセルAF」を採用。また新画像エンジンでは解像感の向上と処理の高速化がアピールされている。

 まず裏面照射ということで高感度は常用ISO6400+拡張ISO25600から常用ISO25600+拡張ISO102400に引き上げられた。実際に撮影した画像をみるとISO6400を超える感度ではわずかにノイズが減り、ノイズ処理による解像感低下も改善されている。劇的とはいえないが従来機より1EV程度のアドバンテージはありそうだ。

感度別に撮影した画像の一部を等倍に拡大して比較。左上からISO1600・ISO3200・ISO6400・ISO12800・ISO25600・ISO51200。使用レンズM.ZUIKO 12-100mm F4.0・絞りF5.6・ホワイトバランスオート・ノイズ処理標準。

ISO6400で撮影。従来機より細部の解像感が高くなっている。使用レンズM.ZUIKO 12-100mm F4.0・絞りF5.6・シャッタースピード1/20秒・ホワイトバランスオート・ノイズ処理標準。

ISO12800で撮影。ノイズ処理の影響で解像感低下はあるが、まだ許容範囲。使用レンズM.ZUIKO 12-100mm F4.0・絞りF4・シャッタースピード1/80秒・ホワイトバランスオート・ノイズ処理標準。

常用感度最高のISO25600で撮影。細部の描写はつぶれているが、意外と健闘している。使用レンズM.ZUIKO 12-100mm F4.0・絞りF4・シャッタースピード1/160秒・ホワイトバランスオート・ノイズ処理標準。

拡張感度のISO51200で撮影。拡大して見なければ、これも十分いける。使用レンズM.ZUIKO 12-100mm F4.0・絞りF4・シャッタースピード1/500秒・ホワイトバランスオート・ノイズ処理標準。

 高速読み出しの積層型ということで電子シャッターの歪み改善が期待されるが、既に積層型を採用しているライバル機達と比べると歪みが残るように見える。ストロボ同調も電子シャッターでは使用不可なことから、読み出し速度は少し遅めかもしれない。とはいえかなり高速に動く被写体でなければ気にならないレベルなので電子シャッターも十分実用できる。

ホームから出発する列車を電子シャッターの連写で撮影。スピードが乗る最終車両あたりの一枚。少し歪みはあるが気になるほどではない。使用レンズM.ZUIKO 12-100mm F4.0・絞りF4・シャッタースピード1/2000秒・ISO1600・ホワイトバランスオート。

 AFでは人物の顔/瞳以外にも車や飛行機、鳥や猫の被写体検出機能も搭載。試作機ということもあり若干認識が不安定になることもあったが、既に「OM-D E-M1X」で採用されている機能なので実製品では改善されるだろう。

被写体検出は個別に選択する。S-AFやC-AFでも検出してくれるが、動きのある被写体ならC-AF+トラッキングが相性はよさそうだ。

被写体検出で飛行機を撮影。直線的な動きでヌケのある構図なら完璧に検出してくれる。使用レンズM.ZUIKO 40-150mm F2.8+MC-14・絞りF5.6・シャッタースピード1/25 00秒・ISO200・ホワイトバランスオート。

被写体検出で行き交う電車を撮影。このような場合は手前の被写体を検出してくれる。使用レンズM.ZUIKO 12-100mm F4.0・絞りF4・シャッタースピード1/1250秒・ISO200・ホワイトバランスオート。

被写体検出の鳥で撮影。途中で一瞬ロストしたが、すぐ検出し直す粘り強さを見せてくれた。使用レンズM.ZUIKO 40-150mm F2.8+MC-14・絞りF4・シャッタースピード1/4000秒・ISO400・ホワイトバランスオート。

 「1053点オールクロス像面位相差クアッドピクセルAF」のAF性能だが、暗所での合焦速度の素早さや、動体の追随が粘り強くなった気はするが、実のところ従来機との差は感じにくい・・・・AF性能は発売後のファームアップで向上することもあるので、今後の進展に期待したい。

 電子シャッターの連写速度がAF/AE追従で秒50コマ、AF/AE固定なら秒120コマと大幅に向上。シャッター半押し時に内部メモリーに記録し続けることで、シャッターを切った瞬間からさかのぼって記録することができる「プロキャプチャー」機能も最高70コマまで設定可能になった。鳥が飛び立つ瞬間など撮影するのに活躍してくれる。

プロキャプチャーの設定画面。連写速度や、さかのぼって記録する枚数が設定できる。

欄干から飛び立つ瞬間を撮影。このような予測ができない状況ではプロキャプチャーが大活躍。使用レンズM.ZUIKO 40-150mm F2.8+MC-14・絞りF4・シャッタースピード1/4000秒・ISO400・ホワイトバランスオート。

高速エンジンのおかげでデジタル処理もより楽しめる

 「ハイレゾショット」や被写界深度を深くする「深度合成」、スローシャッター効果が得られる「ライブND」など、従来からある画像合成機能も、新画像エンジンのおかげで処理時間の短縮や効果の幅が向上されている。

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