ASCII Power Review 第136回
デザインも写りも、正しく「ライカ・クオリティ」だった!
ライカ「Leitz Phone 1」実機レビュー = 「写真を撮る」ために生まれたスマホだった!!
2021年07月20日 10時00分更新
カメラマニアなら誰でも一度は憧れるドイツの名門光学メーカー「ライカ」がスマートフォンを発売!ということで話題になっているのが「Leitz Phone 1」だ。
実際のところはライカ監修のもとシャープが製造しソフトバンクから発売と、3つの会社が関わっているのだが、ライカはライカ! カメラマニアにとっては非常に気になる製品に違いない。
7月16日に発売となったので、カメラ好きとしてレビューしていこう。
デザインと質感に感服 アクセサリーもライカだ!
主なスペックは同じくライカがカメラ機能を監修した「AQUOS R6」と同等。Snapdragon 888に12GBのRAMは同じで、ストレージは128GBから256GBにアップしている。
「Pro IGZO OLED」ディスプレーなどスマホとしての基本性能はもちろん、1型サイズで2020万画素の撮像素子に、35mm換算19mm相当F1.9のレンズとカメラ性能も変わらず……となると「AQUOS R6」にライカのロゴを付けただけ? と思われるかもしれないが、そんなことはない。外観のデザインからは機能美を大切にするライカならではのこだわりがしっかりと伝わってくる。
背面はマットブラックで一般的な光沢塗装と比べ落ち着きがある。レンズの横にはおなじみ赤丸のロゴ。人によってはこれだけで価値を感じるだろう。
天面と底面はフラットに加工され、アルミ削り出しボディーのライカ「T」シリーズを連想させる美しい仕上がりだ。
側面にはローレット加工が施され、見た目の華やかさはもちろん手にしたときに滑りにくく実用性も備えている。専用のレンズキャップとケースも、別売ではなく付属するのはうれしい配慮だ。
レンズキャップはマグネット着脱式で、ライカのロゴが正対する位置に装着されるように工夫されている。撮影時に取り外す手間や、外したキャップの保管など実用性は微妙だが、とにかくカッコイイからいいからオーケーだ。
ケースは装着するとせっかくの美しい外装が隠れるのが難だが、実は本体のロゴが塗装なのに対しケースのロゴはちゃんと彫り込まれている。このようにアクセサリーにもしっかりと付加価値を付けるあたりはライカの秀でたブランディング力と言えるだろう。8月上旬以降、ライカストアとオンラインストアにてパーツとして販売される予定という。
写真を撮る装置として、まさしく「ライカのカメラ」
気になるカメラ機能だが、前述のとおりアウトカメラには1型サイズで2020万画素の撮像素子を搭載している。スマホのカメラとしては大型ということで話題になってはいるが、ピュアなカメラマニアからすると使い慣れたデバイスだ。
ソニーの「RX」シリーズや、「Nikon 1」シリーズなどの名機を思い浮かべると、1インチ撮像素子にはもっと可能性があるはずで、このようにハイエンドスマホに採用されることで、評価されるとうれしく思う。
レンズは35mm換算19mm相当(実焦点距離6.9mm)絞り値F1.9でSUMMICRON(ズミクロン)の名が付けられている。
カメラマニアならご存じだろうが、ライカのレンズは開放F値によって名称が付けられる。F1.4はズミルックス、F2.8はエルマリートなどだ。
ズミクロンは本来F2なので、できれば揃えてもらいたかったと、どうでもいいことを思ってしまうのはマニアの悪い癖である。
カメラアプリのUIも基本的には「AQUOS R6」と同様だが、撮影画角をM型のファインダーや「Q」シリーズのクロップ撮影時のように「ブライトフレーム」で表示できるのがライカらしい。
ただ慣れるまでは、フレームが出ているのに全画面の画角で撮ってしまうミスを連発、また「ナイト」や「背景ぼかし」などのモードではブライトフレームが表示できず一貫性が無いのは気になる。ブライトフレームは設定からオンオフを切り替えられるので好みで使い分けるといいだろう。
カメラアプリを起動すると、まず24mm相当(デジタルズーム120%拡大)の画角が1倍として表示される。画面上のズームボタンをタップすると2倍の48mm相当(デジタルズーム260%拡大)、19mm相当(拡大無)の順で切り替わる。もちろん画面のピンチイン・アウトで微妙なズームも可能で、最大6倍(デジタルズーム800%拡大)まで拡大できる。
拡大して厳密に見なければ2倍(48mm相当)くらいまではデジタルズームによる画質劣化は許容できるがレベルだが、できれば「Q」シリーズのような画像をトリミングして画角を拡大するクロップ機能が欲しいところだ。
24mm相当なら1200万画素、48mm相当でも300万画素程度の解像度は保持することができ、もちろん画質も劣化しない。1型の撮像素子とレンズ描写を最大に活かすという点でも意味があったはずだ。
もっとも、マニュアル撮影モードでRAWの同時保存を選択しておくと、RAWデータにはデジタルズームが適応されないので拡大前の画像が保存される。つまり現像時にトリミングすればクロップ機能と同等のことはできる。手間はかかるが解像度より画質を重視したい人は試す価値ありだ。
物理的シャッターは音量ボタンでできるが、横位置で構えると左手人差し指で押す(逆さに構え右手親指で押し上げることも可能だが)ことになるので違和感がある。カメラにこだわるなら右手人差し指の位置にシャッターボタンが欲しかった。
1型撮像素子を堪能できる専用のカメラアプリはRAW撮影も楽しい
画質を見てみると、やはり一般的なスマホカメラよりワンランク上に感じる。特にデジタルズームを行わない「19mm相当」なら、デジタル一眼やミラーレスユーザーでも満足できる解像感が得られる。
もちろん超広角レンズなので、周辺部は光量低下や近接撮影時の像の乱れはあるし、スマホカメラ特有ともいえる逆光時のフレアやゴーストも豪快に発生する。しかしそれも画質が悪いと捉えるではなく、レンズ描写の味と思わせてくれるのはライカの魔力なのだ。
豊富に再現された発色や明暗差の階調も印象的で、ライカが写真に求める絵作りへのこだわりが伝わる。
高感度は「マニュアル撮影」モードなら最高ISO3200まで自分で設定することができる。ただしJPEGではノイズ処理が強すぎて、解像感が犠牲になっているのが気になる。試しに同時記録したRAWデータを見てみると、ノイズは目立つが解像感が保持され銀塩の高感度フィルムのような雰囲気が味わえる。現像処理が苦にならないならRAWでの撮影をオススメしたい。
また「マニュアル撮影モード」でISO感度を設定すると、シャッタースピード下限が制限され、シャッタースピードを遅くした際のISO感度も同様で、これはちょっとライカらしくないと感じた。
普通のスマホと同様に長時間露光で画像を加工する「ナイト」モードも搭載。通常の撮影モードよりノイズが少なくHDRのような広階調の夜景写真が撮れる。ただし、少し加工した感があるのと、暗い場所では撮影が長時間になりブレやすかったので、どこかに押し付けて撮ることをお勧めする。
「Leitz Looks」というモノクロの撮影モードも搭載していて、明暗の調子が秀逸で印象的なモノクロ写真に仕上げてくれる。ただしユーザーが設定できる画質調整が無いのは残念。せっかくモノクロ専用のモードを備えるなら、コントラストや粒状感などを好みに仕上げたいので、アップデートでの機能追加を願いたい。
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