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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第135回

局地的な大雨、AIで予測精度上げる研究進む

2021年07月12日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 西日本の大雨のニュースを目にすると、いつも少し気持ちがざわつく。

 親戚の家族が、小さな里山の斜面に広がる集落で暮らしているからだ。

 7月8日夕方のNHKの報道によれば、静岡県熱海市で起きた土石流で7人が亡くなり、22人が行方不明のままだ。

 梅雨や台風の季節になると、日本のどこかで大雨による水害や土砂災害の死者・行方不明者が出るようになり、個人として、地震や津波だけでなく大雨にも備えるべき時代に入っている。

 局地的な大雨の予測の精度を高め、必要な情報をタイムリーに届ける努力も続く。

 気象庁は2030年までに予測の精度を大きく向上させるとして、人工知能(AI)を活用する研究を進めている。

線状降水帯と「顕著な大雨に関する情報」

 最近、ニュースで耳にするようになった気象関連の新しい言葉として、「線状降水帯」と「顕著な大雨に関する情報」が挙げられる。

 「顕著な大雨に関する情報」は2021年6月17日に気象庁が運用を始めたばかりの、新しい気象関連の情報だ。

 雨量や雨雲の形などから、短い時間で集中的な豪雨をもたらす「線状降水帯」が発生したと判断できる場合、「顕著な大雨に関する情報」を出す。

 ポイントは、線状降水帯の発生は現時点で予測が困難な点だ。

 発生のメカニズムには未解明な点が多く、予測が困難な以上、「顕著な大雨に関する情報」が出た時点で、身の回りに危機が迫っていることを理解する必要がありそうだ。

 「顕著な大雨に関する情報」について解説する気象庁のウェブサイトには、次のように書かれている。

 「少しでも危険を感じた場合には、自ら安全な場所へ移動する判断をしてください」

危険度分布示す「キキクル」

 今後の精度向上に向けた研究も気になるところだが、すでに運用が始まっているシステムのひとつとして気象庁の「キキクル」が挙げられる。

 キキクルは、日本地図上に土砂災害の危険度を次の5段階で表示する。

1.今後の情報等に留意
2.注意=レベル2
3.警戒=レベル3
4.非常に危険=レベル4
5.極めて危険

 7月8日19時50分の時点では、鳥取県の一部が「極めて危険」にあたる紫色になっている。

 鳥取の大雨に関するニュースを確認すると、7日午前6時59分に島根県と鳥取県で線状降水帯が確認され、気象庁が「顕著な大雨に関する情報」を出している。

 同じ日の朝日新聞は、7日午前7時までに島根県松江市、出雲市、安来市では観測史上最多の3時間降水量を記録したと報じている。

 松江市では1時間に約100ミリの雨が降った。雨量と雨の降り方の関係を5段階で示す分類を確認すると、松江で降った雨は、極めて激しいものだったことがわかる。

●やや強い雨:1時間に10~20mm
●強い雨:20~30mm
●激しい雨:30~50mm
●非常に激しい雨:50~80mm
●猛烈な雨:80mm以上

 1時間に80mm以上の雨は「猛烈な雨」に分類され、「息苦しくなるような圧迫感のある雨」と表現されている。

 7日から8日にかけてのニュースを確認するだけでも、線状降水帯が発生が認められた時点で、かなりの大雨が降っている可能性が極めて高いと理解できる。

 「息苦しくなるような圧迫感ある雨」の中を避難するのは、それだけで危険だ。線状降水帯が確認される前に、安全な場所に避難しておく必要がある。

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