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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第117回

自治体Uber、自治体ライザップ──スーパーシティという公共事業の中身は

2021年03月08日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 AIやIoT(モノのインターネット)を活用し、新しい形の都市をつくる「スーパーシティ」をめぐり、自治体の動きが加速している。

 内閣府によれば、スーパーシティのアイデアを提出した自治体は、北海道から沖縄までの市町村や、複数の自治体でつくるグループ計57団体にのぼる。

 そのひとつ群馬県前橋市が、スーパーシティに関連する提案を企業から募集したところ、2月10日までに計155社から105件の応募があったという。

 企業が提案した内容は、「電子投票」「キャッシュレスシティ」「デジタル児童相談所」などのアイデアが含まれる。

 この構想について、政府は「生活全般にわたって未来社会を前倒しで実現」する「まるごと未来都市」の実現を目指すとしている。

 ただ、各社が前橋市に提案した各要素については、それほど目新しさは感じない。

 同市の発表から見えてくるのは、「まるごと未来都市」の実現に近づくには分野の異なる企業の提案をうまく連携させる、指令塔の役割を担う組織や人が必要だということだ。

●個人認証が核の前橋市

 前橋市の構想では、「まえばしID」というマイナンバーと顔認証を組み合わせる個人認証の仕組みが核となる。

 たとえば、高齢者が散歩をしている途中で倒れてしまった。急病人が身分証明書を持っていなくても、顔認証で個人を識別し、既往症などのデータを照会し、適切な医療を提供する――。

 あるいは、市が保有する個人データを基に、面倒な手続きを簡略化して、速やかに給付金を受け取れる――、といった構想だ。

 本人の同意がない限り、勝手に個人データを活用することはない、と前橋市は強調している。

 同市の構想は、情報銀行の考え方に似ているところがある。

●「自治体配車サービス」で高齢者の通院支援

 内閣府が2021年3月に公表した資料には、各地の自治体から寄せられたさまざまなアイデアが紹介されている。

 ある市では、高齢者が急増し、通院が困難になっている。そこで、自治体がスマホアプリを使った配車サービスを提供。市内のボランティアドライバーが車で、高齢者の送り迎えをする。

 対価として、ボランティアドライバーに対しては、地域通貨やポイントなどが付与される。「自治体Uber」と呼べそうな仕組みだ。

 別の市では、全国的に塩分を摂取する量が高く、全国でもっとも脳卒中の死亡率が高い。

 市が、スマホやスマートウォッチで運動や食事のデータを管理するヘルスケアプラットフォームを市民に提供する。

 データを基に、運動を増やすよう促したり、食事を改善したりして、病気を予防する仕組みだ。

 こちらは「自治体ライザップ」を思わせる。

●新しい形の公共事業

 各自治体が公表したスマートシティ構想や、参加する企業のリストを見ているうちに、これは新しい形の公共事業ではないか、と考えるようになった。

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