めちゃくちゃ遠い第9惑星だったが……
太陽系の惑星の並び順、覚えていますか?「水金地火木(すいきんちかもく)……」って大半の人が覚えたヤツだと思いますが、この“もく”の後、どう続きます? 冗談好きな小学生だった方なら「どってんころりん」とか言ってそうですが、正しくは「土天海(どってんかい)」です。……ちょっと語感が悪いように感じません? そう、最後の“冥(めい)”が無いのです。「いや、水金地火木土天海冥(すいきんちかもくどってんかいめい)で惑星でしょ!?」と言いたいところ、実は“海”で終わって正解なのです。
冥、太陽系の最果ての惑星だった『冥王星』ですが、2006年8月に“惑星”という区分から外されました。冥王星は今“準惑星”という位置づけになり、惑星ではないのです。とある事情によって、惑星から準惑星に降格しちゃったんですね。降格という言い方が正しいのかはわかりませんが、実に“惑星の定義から外れてしまった”のです。惑星の定義、というと、この現代にあわせて再定義でもされたのかな、と思いたいところですが、なんとそれまで惑星という単語に対して、物理的な定義自体がなされていなかったのです! 冥王星にとってはとんだ迷惑な話ですよね!? あやふやなまま「おっ新しい惑星だ!」と発見され、太陽系の第9惑星になったにもかかわらず、「あ……ごめん、定義したら惑星じゃなくなってしまったわ……」と、勝手に降格扱いのようになってしまうという、人間だったら間違いなく訴訟案件かもしれません、これ。せっかく冥王星という立派な和名もつけられたのに……。
かわいそうな冥王星、彼(彼女?)が準惑星になってしまうまでを追いましょう。
冥王星、4年前の今頃に、探査機『ニュー・ホライズンズ』がその姿を初めて写真に捉え、ちょっとした人気になりました。うすオレンジのカラーリングが施されたハートの模様を思い出す人もいるかもしれませんね。太陽から約60億キロメートルも離れた場所を公転している準惑星です。太陽の周りを1周するのに約248年もかかります。私たちが一生を終える間に、まだ3分の1しか進めていない計算です。地球から見れば、こんな動いているか動いていないかわからないものをどうやって見つけたのでしょうか。その方法は“定点写真”です。
冥王星を見つけたクライド・トンボーさんは、当時ローウェル天文台で働いていました。そこでは「天王星と海王星の動きをみた限り、どうやら未知の惑星がその2つの軌道に影響していそうだ」と、その未知の惑星の捜索活動が行われていました。そこで、トンボーさんは、未知の惑星があると思われる空の同じ一区画を、当時最新だった天体写真の技術で、日にちをずらして撮影したのです。そしてその写真を丹念に比べた結果、動いている星があったのです。
その星が海王星より遠いことや、身近な天体でないことを確認した結果、“太陽系の第9番目の惑星である”ということがわかったのです。発見にかかった歳月はまる25年、そしていまから約90年前の1930年2月にその存在が認められました。
見つかった惑星は、ローマ神話の“冥府の王様”から、『Pluto(プルート) 』と名付けられました。最果ての惑星にピッタリですね!
余談ですが、冥王星の衛星などには、カロン(冥府の川の渡し守)、ケルベロス(冥界の番犬)など、冥界に関する神話から名前がついています。聞いているだけで中二病がくすぐられますね。この惑星の和名が“冥王星”になったのもうなずけます。
さて、太陽系第9惑星として一躍時の惑星となった冥王星。ですが、時が経つにつれ、その地位が危うくなってきたのです。むしろ、新たな“地位”をつけざるを得なくなってしまったのです。
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