打ち上げ大変だし
辿って登ればラク!?
平成最後に盛り上がった、ブラックホールの撮影成功、そして令和になってすぐ、民間ロケットの打ち上げ成功(宇宙空間への到達成功)と、我々人間にとって宇宙が身近になるニュースが相次ぎましたね! こんなに宇宙を感じる機会が多いと、海外旅行のノリで、我々一般人が「ちょっと宇宙行ってくるわー」という時代もすぐそこなのかもしれません。
今のところ、一般人が宇宙に行く方法は“宇宙飛行士になる”、“民間ロケットの一般化を待つ”などが考えられますが、前者は半端ない努力、後者は半端ない費用がかかりそうです。もっと手軽に宇宙に行く方法はないんでしょうかね? 実はあるのです。あるというか、“あるといえそうな方法がある”のです。それが、『軌道エレベーター』です。宇宙エレベーターと言ったほうが、ピン! と来る方もいそうですね!
軌道エレベーターは、その名の通り“エレベーターで地球と宇宙空間を行き来する技術”です(とはいっても、私たちが普段使うエレベーターの仕組みとは違いますが)。ひょいっと乗って、上に参るとそこは宇宙空間なのです。その手軽さから、宇宙観光や宇宙体験教室、重力を活かしたビジネスなどの利用が考えられています。ぱっと思いつきそうなのは“無重力体験”ですね! 地球の大気の影響を受けないので、真の星空観察みたいなものもよさそうです。
この軌道エレベーター、人工衛星の技術を応用していることから、“きっとできる”と思われてきました。しかしながら、宇宙空間と地球をつなぐには、それなりの強度を持ったケーブルが必要になります。ここがネックだったんですね。が、30年ほど前に、ここをクリアしそうな素材が見つかって、一気に現実的な話になったのです。日本でも『宇宙エレベーター協会』という組織が発足しています。
それでは、軌道エレベーターに必要なものを挙げましょう。大きく“静止衛星”、“地球”、“強度の高い素材でできたケーブル”です。
まず、静止衛星です。静止衛星とは、“上空のある1点に止まっているように見える人工衛星”です。実際は、赤道上の高度約3万6千キロメートル上空の軌道を、地球の自転と同じスピードで回っています。自分と、ある対象物が同じ速度で動くと、対象物が止まって見える原理ですね。
主な静止衛星には、天気予報でよくその名前を耳にする『気象衛星ひまわり』がありますね。
そして地球です。当たり前じゃんか! と怒られそうですが、エレベーターの発着点以外にも大切な役割を持っています。それは“重力”です。静止衛星は、地球の重力と自身にはたらく遠心力を釣り合わせることで高度と軌道を保ちます。この静止衛星と地球をつないで、エレベーターを実現するのが、最後の“強度の高い素材でできたケーブル”です。わざわざ“強度の高い”と書いたのには理由があります。軌道エレベーターの仕組みとともに、このケーブルになぜ強度が必要なのでしょうか。
静止衛星は、地球の重力(下に落ちる力)と遠心力(上に向かう力)を使って、その高度を維持しています。この2つの力がイコールとなって釣り合った状態です。
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