大きくても1ミリ 小さくても強いヤツ
この俺こそが世界最強だ、というセリフをよく聞く通り、人間はやたらに一番になりたがる生物です。強さはともかく、スパコンの速さや、遠く離れた宇宙空間など、到達できないところにいち早く到達したがります。二番じゃダメなんです。
けれど、そんな人間自身は残念ながら、生物としてこの世界でいちばんの強さは持っていません。知能や器用さでは確かに最強かもしれませんが、〝耐久性〟は意外と弱いのです。では、人間の耐久性を上回る動物とは一体なんなのか。
そいつの名は〝クマムシ〟です。至る所で〝地球最強生物〟、場合によっては〝宇宙最強〟とうたわれている通り、あらゆる過酷な環境でも〝死にません〟。しかも、たくさんの種類がいて、生きるためのいろいろな処世術を持っています。
え? じゃあクマムシって不死身なの? と思いたいところですが、動物なので、〝死んじゃいます〟。しかも「お前そこで?」みたいなところで。とにかくクマムシは耐久性がハンパないのです。このクマムシの耐久性を上回らない限り人間は地球最強の生物にはなれないのです……。
クマムシと言いますが、実際はトンボやカブトムシなどに代表される虫の仲間ではありません。『緩歩(かんぽ)動物』門に属する動物の総称です。水の中をゆるゆる〝歩く〟姿から緩歩動物って付けられたのですが、その姿が「クマみたい!」なのと、その動く様子が「虫っぽい!」から、クマムシと呼ばれています。その種類なんと1000以上! また、虫という単語から、大きさは指先から手のひらサイズくらい? と想像しがちですが、大きくても1ミリ強くらいです。
そんな小さなクマムシがなぜ地球最強生物と言われるのか? それは環境への驚くべき〝耐久性〟を持っているからです。まず、〝真空〟に耐えます。いわゆる私たちが生きるのに不可欠な〝空気〟が無い状態に耐えられます。つまり宇宙空間でも生存可能です。
逆に7万5000気圧の高圧にも耐えます。そして、ほぼ絶対零度(マイナス273℃)から100℃を超える温度にも耐えます。加えて乾燥にも耐えます。体内の水分量がクマムシ自身の体重の3%以下になっても死にません。そして高線量の放射線にも耐えます。
では、われわれ人間はどれだけこれらに耐えられるのか? クマムシと比べてみましょう。
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