“明日試せる実践知”が共有された「JBUG Creative」第4回をレポート
Web制作の現場で「新人AI」は戦力になるか? 開発者とベテランが語るBacklog AIの育て方
“レベル別”のBacklog×AI実践 正しく運用すればAIが“よしなに”動く時代に
2番目に登壇したサービシンク代表の名村晋治さんは、Backlog歴20年目を誇るベテランユーザーだ。3つの活用レベルに応じたBacklog×AI活用について語られた。
レベル1は、Backlog標準のBacklog AIアシスタントの活用である。対象プラン(プレミアム・プラチナ)であれば、管理者がスペースで有効化するだけで導入完了。名村さんは、「Backlogを開いて、分からないことがあればとりあえず聞く」という状態に持っていくまでのハードルの低さが魅力的だという。
AIに情報を渡す工程も、プロンプトを練る必要もなく、その場ですぐに答え合わせできる。何より「この情報をAIに入力してよいのか」という懸念が、前述のとおり仕組みとして解消されている点が大きい。「余計な周り道をせず、素直にBacklogのAIを使うのが一番の近道」だと名村さん。
そして、名村さんが「本命」とする活用法が、AIによる課題の一括登録だ。プロジェクト計画の概要をまとめておくことで、AIにタスクの分解から課題の登録までを任せられる。WBSなどのたたき台をゼロから書く手間が省けるだけではなく、計画の品質が「担当者の経験値」に依存しなくてもよい点もメリットだ。「これのPM視点での本当の価値は時短ではなくて“標準化”。抜け漏れやミスがなくなり、品質が作業者に依存しなくなる」(名村さん)
レベル1.5は、自作による小さな自動化であり、GAS(Google Apps Script)とBacklog APIの組み合わせが披露された。
名村さんがGASをピックアップした理由は、自前の「実行環境」を必要としないからだ。Googleのサービスを契約していれば、cron処理のような定期的に動くプログラムを自動運用できる。GASのコード自体は、生成AIに相談しながら作成できるため、「期限切れの課題をSlackに通知する」といった仕組みをプログラミング未経験者でも十分に構築可能だ。
そして、エンジニア向けの高度な活用であるレベル2は、「MCP×AIエージェント」だ。ヌーラボは、2025年5月にBacklogの公式MCPサーバーを実装しており、普段利用するAIツールをBacklogへ直接接続できる。
対応する操作は幅広く、課題の取得・作成・更新・削除まで一通りの操作が行える他、ドキュメントも処理可能で、gitも扱える。さらに、ターミナルからBacklogを操作するCLIツール「bee」(非公式サポート)も用意されている。
このように、開発者を含めさまざまなアプローチが可能なBacklog×AIだが、いくつか注意点がある。まず、技術的な制約として、Backlog APIにはレート制限が存在し、Backlogと連携するAIツール側にもトークンの制限がある。
また、AIに編集権限を渡したままMCPを運用すると、意図しないデータの消失といった大事故を引き起こすリスクがある。CLAUDE.mdなどに「起票・更新・削除は、明示的に依頼がない限り実行しない」と明記したり、削除系のツールを予め遮断するような設定をしたりと、安全策を講じておくことがポイントだ。
最後に名村さんが訴えたのは、AIの精度を上げるには「Backlogに情報を書き込むこと」が何より重要だということだ。Backlogは、課題・ドキュメント・Git・ガントチャートなどが一か所に集約され、AIに渡せるコンテキストが極めて「濃い」ツールである。しかし、裏を返せば、Backlog内にある情報以上の回答は得られない。名村さんの会社では、仕様の決定や調査結果などをチャットに流さずに、すべてBacklogに書くことを徹底しているという。
「そもそもBacklogなどのプロジェクト管理ツールは、“課題を忘れるため”のツール。 人間が記憶に頼っている限り、プロジェクトは破綻する。生成AIが進化した今だからこそ、なおさらBacklogに情報を集約すべきといえる。きちんと運用さえしていれば、生成AIが後はよしなにしてくれる時代になった」(名村さん)
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