“明日試せる実践知”が共有された「JBUG Creative」第4回をレポート
Web制作の現場で「新人AI」は戦力になるか? 開発者とベテランが語るBacklog AIの育て方
プロジェクト・タスク管理ツール「Backlog」に日々蓄積される“プロジェクトや業務の記録”を、ナレッジとして引き出せる「Backlog AIアシスタント」。このエージェントは、Web制作の現場でどのような力を発揮するのか。
Backlogユーザーが運営するコミュニティ「JBUG(Japan Backlog User Group)」では、エリア別の開催に加えて、職種やテーマ別の分科会も開かれている。今回レポートするのは、2026年8月に開催されたWeb制作やクリエイティブ職種が集う「JBUG Creative」の第4回である。
当日は、ヌーラボの開発者およびユーザー企業であるアイスリーデザインとサービシンクの2社から、「Backlog×AI」のリアルな実践知が共有された。
AIアシスタントは“今日入社したばかりの新メンバー”
まずは、ヌーラボの開発者・渡邉祐一さんが、Backlog AIアシスタントの仕組みと運用のヒントを解説してくれた。
Backlog AIアシスタントは、2026年3月にリリースされたBacklogに組み込まれたAIエージェントだ。Backlog内の課題やコメント、ドキュメントなどを読み取り、チャットベースでプロジェクト進行やタスク管理を支援してくれる。
ユーザーが質問すると、AIがその意図を汲んでBacklog内のデータに対する「ツール(課題の読み取りやドキュメント作成などの操作)」を選択。データを学習しているわけではなく、実行する都度、Backlogを「見に行っている」のがポイントだ。渡邉さんは、これを、「フットワークが軽いが、こちらが教えていないことは知らない、“今日入社したばかりの新メンバー”」だと表現する。
また、Backlog AIアシスタントの振る舞いは、予め与えられた指示書(システムプロンプト)で制御されている。例えば、「先週完了した課題と進行中の課題の進捗をまとめて」と頼まれた場合、“完了・進行中の課題を検索し、期限は取得済みの日付で判定して、テーブル形式で出力せよ”という指示が動く。他にも、“推測で答えず、ヘルプセンターへ案内せよ”といった指示を組み込むことで、ハルシネーションを抑える工夫も施されている。
「このように、ブレやすい判断基準をあらかじめ人で決めておく。これはまさに、新メンバーを受け入れる“オンボーディング”に近い」(渡邉さん)
権限周りの設計もシンプルだ。AI専用の権限は設けず、あくまで依頼したユーザーの権限の範囲内でデータを取得する。また、課題やドキュメントの作成・更新・削除といった「書き込み」系のツールでは必ず人間の承認を挟み、ボタンが押されるまでサーバー側で実行を止める仕組みになっている。これも、新メンバーにいきなり強い権限を与えないのと同じ感覚だと言えるだろう。
開発者が語る「今日から使える」4つのヒント
では、そんな“新メンバー”Backlog AIアシスタントと、我々はどう付き合っていけばよいのか。渡邉さん視点での4つのヒントが披露された。
1つ目は「依頼は具体的に」だ。Backlog AIアシスタントは、ユーザーの言葉をBacklogの「検索条件」に翻訳して動く。例えば「“やばい”課題ある?」と聞いても、そんな条件は存在しない。そのためAIは、“期限切れ”“停滞”といった条件を推測して補うことになる。だからこそ、Backlogにある言葉(プロジェクトや状態、期限など)を条件にすることで、振る舞いが安定する。
ただ、すべての条件を言葉にする必要はないという。AIは「今開いている画面」を認識しているため、そこが検索対象であれば指示に含めなくても大丈夫だ。加えて重要なのは、条件にプラスして「期限が近い順に表で」「決まったことと残っていることを分けて」といった“欲しい出力形式”を伝えることである。
2つ目は「報告は根拠つきで受け取る」だ。回答に添えられた課題キー(実物へのリンク)を1つ開き、依頼の言葉が適切だったか確かめてみる。他にも「どういう条件で探しましたか?」と問いかけると、AIが使用した検索条件を教えてくれるため、推測のズレを確認できる。
3つ目は「学習しない設計だからこそ文章で渡す」だ。過去に教えた内容を記憶しない設計になっているため、コンテキストの受け渡しに「ドキュメント」を活用するのが効果的である。例えば、課題起票のルールをドキュメントに書き、保存しておけば、繰り返しの作業でも「このドキュメントに従って起票して」と頼むことができる。
「様式だけなら課題テンプレートを見て整えてくれるが、ドキュメントを渡す価値は、優先度や担当の割り当てといった判断基準まで反映されること。いわば、普段書いているBacklogのドキュメントが、そのままAIの“スキル”になる」(渡邉さん)
4つ目は「大きな仕事は、分けて頼む」だ。Backlog AIアシスタントは、ユーザーの暴走やコストの高騰を防ぐため、一度のやりとりでの入出力の量や動ける手数に上限が設けられている。そのため、月・週ごと、あるいはプロジェクトやマイルストーン単位に分けて依頼をすることが、途中で処理を止めないためのコツとなる。
渡邉さんは最後に、「AIアシスタントは、これまでチームのために積み重ねてきた“Backlogの整備活動”にそのまま従う。つまり、皆さんの育ててきたBacklogそのものが、AIの品質を高める一番の土台となる」と締めくくった。
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