ディーアンドエムホールディングスは8月24日、Bowers & Wilkins(以下B&W)の新フラッグシップスピーカー「800 D5」シリーズを10月に国内投入すると発表した。
ブランド60周年の節目を象徴するモデルで、ハイエンドの「801 D5」からブックシェルフ型の「805 D5」まで合計5機種をラインアップする。
さらにシアター向けにセンタースピーカー2機種とサブウーファー3機種も用意されている。801 D5は引き続き、イギリスの名門アビー・ロード・スタジオへの納入が決まっているそうだ。
10年の研究成果を反映した自社開発ドライバーを搭載
新製品のポイントは「キャビネット構造の見直し」と、ウーファーの「モーターシステムの改良」だ。
キャビネットの強化で音質を阻害する「不要な振動」を抑え、ドライバーの改良で再生の歪みにつながる「交流磁界による変調」への抜本的な対策を施す。こうした改善を通じて、見た目からは推し量れないほど、大きなグレードアップを果たした機種となった。
B&Wは「最新世代の800Series Diamondは、完璧なラウドスピーカーに対する私たちの飽くなき追求の究極の表現です」と語る。
800 D5は5年ぶりのフルモデルチェンジとなる。前機種の「800 D4」は2021年のリリース。途中2023年には、物理的な構造、ドライバー、クロスオーバー回路などの改良を施したSignatureモデルを経ている。
実は800 D5シリーズに採用された技術の一部は、800 D4の発表以前から10年越しで取り組んできた基礎的な研究成果が反映されたものだという。つまり、800 D5はSignatureモデルで一部見せた成果を完全な形で盛り込んだ、集大成的な位置づけの製品とも言える。
通常5年の製品開発サイクル(これも比較的長いレンジだが)よりも、さらにロングレンジでじっくりと取り組んだ技術開発の成果、そしてB&Wが1979年の「Matrix 801」以降積み上げてきた製品開発のノウハウがふんだんに盛り込まれた機種という側面も持っている。
すべてに理由があって存在するデザイン
800 D5シリーズを目にして最初に感じ取れるのはその仕上げの美しさだ。英国ワージングのチームにより手作業で作られる筐体は、圧倒的なラグジュアリー感と洗練された美しさを纏っている。
カラーは世界的なインテリアの傾向を踏まえ、Stealth Black、Warm White、Light Walnut、Dark Walnutの4色展開となった。全体に彩度を抑えた落ち着いた雰囲気になり、「800 D4」シリーズにあったローズナット系のカラーが消えた代わりに限定モデル「801 Abbey Road Limited Edition」で好評だった、Dark Walnutが採用されたのが象徴的だ。
新導入の塗装・磨きロボットによって「Stealth Black」などのグロス塗装の平滑性が増したほか、パーツ製造の公差基準が厳密化されたことで、パネル間の隙間やビス類が目立たない極めてシームレスな仕上げを実現した。
カラーバリエーションにおいても、ダークメタルのディテールやコノリー製レザーを組み合わせたDark WalnutやStealth Black、シャンパンカラーの金属パーツをアクセントにしたWarm WhiteやLight Walnutなど、インテリアへ自然に馴染むシックなトーンで統一されている。
なお、4つのカラーの中で、Stealth Blackのみ若干高い値付けになる。
最高峰の静寂をもたらすハイブリッド・エンクロージャー
キャビネットは、同社が「これまでの800シリーズで最も静か」と語るほど進化したつくりとなっている。Matrix構造と曲面積層合板技術をベースにしつつ、従来より強固な金属フレームでの補強をしている。
例えば、801 D5では重量が約6.5kg増しているが、これは全体の低重心化と徹底した制振が施された結果と言えるだろう。
800 Diamondシリーズは上から見ると馬蹄形となっている。この特徴的なフォルムは積層合板によって実現されている。ただ、この構造は背面の剛性が確保しにくいという弱点もある。そこで、アルミ押し出し材とダイキャストで構成された堅牢な「スパイン(背面フレーム)」を配置して補強されている。
ウッドキャビネットの奥にあるウーファー固定用のアルミダイキャストプレートの厚みは、804 D4の約2倍に増強され、不要振動を徹底的に受け止める。
こうしたアルミ補強は、フロア型の中では最もスリムな「804 D5」でも同様だ。804 D5は上位機のようなタービンヘッド(スピーカーの上部にある丸まったミッドレンジ用キャビネット)を持たないが、アルミ押し出し材で作ったミッドレンジ用インナーケースを新設し、キャビネット内部に搭載している。
いわば内部に疑似的なタービンヘッドを備えたような構造であり、開放的で澄んだ中域再生に貢献しているという。
アルミダイキャスト製の台座裏にはモデルごとに最適化されたほぼ純鉄の重りを追加し、キャビネットと台座を繋ぐ脚部も太軸化した。
タービンヘッドの部分のアップ。写真ではミッドレンジドライバーのショートリングの部分が取り外された状態になっているが、よく見ると色が違うのが分かる。802 D5の銅に対して、801 D5は銀が用いられている。
交流磁界による変調を抑える磁気回路
ドライバーや回路設計(モーター)にもSignatureモデルを進化させた新技術が注ぎ込まれている。
800 Dシリーズの特徴である「ダイヤモンド・トゥイーター」は、800 D4シリーズと同じものだというが、音響透過性と解像度を高める新しい縦目メッシュグリルを採用。3ウェイモデルのウーファーにおいては、プッシュプル構成の2つのネオジウムマグネットの間に高強度の絶縁体セラミック板を挟み込む新構造を導入した。
これはボイスコイルに流れる電流によって発生する交流磁界に起因した変調や渦電流の発生を遮断する効果を持つとのこと。さらに、マグネットとマグネットの間にセラミック板を挟んでも、ドライバーの駆動力が落ちないよう、従来よりも1.5倍強力なマグネットを使用し、極めて低歪みな再生を実現したという。
一方、2ウェイモデルの「805 D5」のミッドウーファーは、ボビンが長く、3ウェイモデルと同様の構造が採れない。これは、より広い周波数域をカバーし、振幅も大きく取る必要があるためだ。そこで、別の対策を施している。
具体的には、ボトムヨークの外側を歯車のような形に成型し、内側もカット。磁束密度の高い場所の周辺に磁力が入り込む余地をなくして、交流磁界の侵入を防いでいる。
このほか、クロスオーバー回路のフィルムコンデンサーのリード線には、高純度銅に銀と金を加えたムンドルフ製「Copper Angelique Wires」を採用。目に見える外観から細部の回路に至るまで、すべての改良が音響的必然性に基づいて集結した妥協なきフラッグシップとなっている。
左側が805 D5のドライバー。磁束密度を狙った場所に集中させ、かつその周辺にボイスコイルの交流磁界からの飛び込みが来ないように、底面のヨークの形状を最適化している。中央の穴が大きい点にも注目(Signatureは穴を大きくしただけだった)
800 D5の音を体験
発表会では旧機種と比較しながら、800 D5シリーズのサウンドの変化を確かめるデモも実施された。ダイアナ・クラールの「Like Someone In Love」が試聴曲に選ばれ、最初にブックシェルフの「805 D4」。続いて、新機種の「805 D5」から「801 D5」まで5機種、最後に「801 D4 Signature」を聴くという構成。上流にはマランツの「SACD 10」と2台の「MODEL 10」が用いられた。
まずはブックシェルフの比較だが、最初に感じたのはボーカルが近く、付帯音が減る印象がある。ウッドベースもタイトになり、ボーカルの雑味がないため、より空間の上に際立つ感じがある。低域もずんずんと響き、芯があって沈み込む。805 D4は音の空間に包み込まれる感じがあるが、比べると個々の音が少し曖昧である。広大な空間の再現はB&Wスピーカーの特徴でもあるのだが、個性的すぎると感じる面もある。その意味では805 D5は一般的なハイエンドスピーカーに多い豊富な直接音の情報量で聞かせるタイプで、ワイドレンジで解像感の高い再現となっており、より安心して聴ける音に仕上がった印象だ。
フロア型の804 D5になると、低域の量感がかなり上がる。低域が出る分、ボーカルなどの中域が少し目立ちにくくなる面もあるが、空間表現や全体のトーンバランスもだいぶ自然になる印象だ。ウッドベースの響きがよりリアルで、明瞭感が上がり、押し出し感も増す。硬さの表現もしっかりできてグレードが上がったことを実感できる。
803 D5はシリーズの中位となるが、個人的には800 D5シリーズの本領が発揮されるのはここからという印象。楽器や声の音色が圧倒的にリアルになるし、ボーカルの再現にも違和感がなくなる。ワイドレンジだがトーンバランスが調和していて、かつ解像感が格段に上がって、音全体を見渡せるようになる。例えば、低域の鳴りは下の機種ではオーディオから鳴っていると意識させるちょっとした不自然さもあるのだが、こういった感覚がなくなり、かつ800 D5シリーズが目指した音の方向性はこうなんだなと実感できる1台だ。
802 D5の方向性も803 D5に近いが、低域の深さと充実度が増し、ベースが地を這うように空間に広がっていく感覚が加味される。ここは音そのものを聴くというよりは、音の生まれる場所の雰囲気や気配みたいなものが再現されると言ってもいい。ここで気付いたのは、高域の質感がウォームというかウェットというか、ぬくもり感を帯びているという点だ。下のモデルにややあった、とげ立ちや刺さりのようなものがない。
ハイエンドの801 D5。こちらの機種は、最初の音の出方から、ほかの機種と違う。例えば、最初にベースが沈み込む音、またはボーカルが歌い始める前に息を飲み込むブレスの音など、無から有が生じる瞬間の再現にハッとさせられる。これはS/N感の高さが貢献しているのだろう。面白いのは106.4㎏もある、もっとも巨大なスピーカーであるにもかかわらず、広い音場の中に、ボーカルの音像自体がシリーズの中で最も小さくきゅっと収まる点だ。高性能なスピーカーの中には、情報量が多く低音も出るが、どこか疲れるというものがある。801 D5は今回聞いたものの中では、一番その感覚がなく、安心して音に耳と体をゆだねられるような感覚があった。
最後に801 D4 Signatureを聴くと、800 D5シリーズと800 D4シリーズの違いがより印象付けられる。D4 Signatureはスピーカーの背後に広大な音場が広がるスケール感のある再生が魅力であり、調和感に優れると思ったが、800 D5シリーズはより音が明瞭で直接的に響く点がポイントであると思った。どちらかと言えば、モニター的なニュートラルな方向で直接音がよりしっかりと響く仕上がりで、色付けがなく、純度の高い再現のクオリティが上がった印象だ。
キャビネット構造の見直しによってキャビネットの鳴りが抑えられた分、表面処理による音の差も感じにくくなっているという説明もあった。これまでは表面が硬いグロスブラック系の塗装が音の面でも人気が高かったというが、価格も少し高くなる面もある。音の差を意識せずに好きなデザインを得られるというのもメリットだろう。
新製品のサイズとスペック
新製品の価格、ドライバー構成、サイズなどは下記の通りだ。
801 D5
価格:462万円(Stealth Black)/473万円(そのほか)
25mm ダイヤモンド・ドーム・トゥイーター、150mm ContinuumコーンFSTミッドレンジ、250mm Aerofoilバス×2
447×597×1,221mm(幅×奥行き×高さ)、106.4kg
802 D5
価格:352万円/363万円
25mm ダイヤモンド・ドーム・トゥイーター、150mm ContinuumコーンFSTミッドレンジ、200mm Aerofoilバス×2
413×589×1,218mm、91.4kg
803 D5
価格:280.5万円/286万円
25mm ダイヤモンド・ドーム・トゥイーター、130mm ContinuumコーンFSTミッドレンジ、180mm Aerofoilバス×2
359×499×1,165mm、63.7kg
804 D5
価格:181.5万円/187万円
25mm ダイヤモンド・ドーム・トゥイーター、130mm ContinuumコーンFSTミッドレンジ、165mm Aerofoilバス×2
308×392×1,101mm、40.3kg
805 D5
価格:106.7万円/110万円
25mm ダイヤモンド・ドーム・トゥイーター、165mm ContinuumコーンFSTバス/ミッドレンジ
241×363×439mm、16.4kg
HTM81 D5
価格:198万円/209万円
25mm ダイヤモンド・ドーム・トゥイーター、150mm ContinuumコーンFSTミッドレンジ、200mm Aerofoilバス×2
846×363×334mm、33.4kg
HTM82 D5
価格:165万円/176万円
25mm ダイヤモンド・ドーム・トゥイーター、130mm ContinuumコーンFSTミッドレンジ、165mm Aerofoilバス×2
715×363×289mm、10.5kg
※センタースピーカー2機種は、ダーク・ウォールナットは2027年1月発売予定
FS-805 D5(805 D5専用スピーカー・スタンド)
価格:26.4万円(ペア)
ブラック/ウォーム・チタニウム
FS-HTM D5(HTM81 D5/HTM82 D5用スタンド)
価格:22万円
ブラック/ウォーム・チタニウム
また、アクティブサブウーファーの「DB1D」「DB2D」「DB3D」は既存モデルのカラーを変えたマイナーチェンジとなり、800 D5シリーズとマッチしたStealth Black、Warm Whiteのカラバリが選べる。Aerofoilバスを対向配置で備えた密閉型で、Bluetooth LEにも対応する。XLR×2、RCA×2、3.5mm 12Vトリガー×2、RS-232 – D-Sub 9ピンを搭載。周波数帯域は8.5~500Hzで共通。
DB1D
価格:99万円
300mm Aerofoilバス×2
429×410×460mm、43kg
DB2D
価格:77万円
250mm Aerofoilバス×2
377×360×430mm、36kg
DB3D
価格:55万円
200mm Aerofoilバス×2
320×300×360mm、25kg
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