熱が出て、喉が痛い。なんとなくだるい──こんなとき、あなたなら、まずどうするだろうか。
体温計を手に取って熱を測る? それとも、近くの病院を探す? もしかすると、今どきは「まずスマートフォンを手にして、AIに聞く」人も、少なくないかもしれない。
塩野義製薬が実施した調査では、風邪の症状を感じたとき、最初の行動として「AIに相談する」と答えた人が31.5%に上り、「熱を測る」の22.3%を上回ったのだ。
AI、もはや体調不良の主要な相談相手に
夏季に流行する感染症への意識や対策の実態に関して、塩野義製薬が調査を実施した。
調査からは、日常生活に浸透しつつある生成AIが、体調不良時の相談先としても利用されつつある実態が明らかになっている。その一方で、医師らからは「AIへの相談だけで感染症を正確に判断するのは難しい」との指摘も寄せられているという。
まず、20~60代の男女1万人を対象にAIの利用頻度を調べたところ、42.7%が「月1回以上」AIを利用していることが明らかになった。
うち46.7%は、過去1年以内に「体調不良時の自身の症状や対応策」についてAIに相談した経験があると回答。さらに、発熱、のどの痛み、咳、鼻水、倦怠感などの風邪症状を感じた際に、症状や対応策についてAIに相談した人は38.0%にも上った。
特に、若い世代ではAIへの相談が目立つ。風邪症状を感じたときに最初に取る行動として、「AIに相談する」と回答した人は31.5%で、「熱を測る」の22.3%を上回る結果となった。若年層の年代別では、20代では39.0%、30代では41.5%が、最初の行動として「AIに相談する」と回答している。
またAIへの相談内容として、「自宅での対処法を知りたい」が37.2%、「どんな疾患の可能性があるか知りたい」が34.5%だったほか、「医療機関を受診すべきか判断したい」と回答した人も28.9%、「医療機関を受診しなくてすむ方法をみつけたい」も21.1%と、比較的高い割合となった。
AIを使ったセルフ診断、問題点は?
では、AIによる“セルフ診断”は、相談者の受診に、どのように結びついているのだろうか?
今回の調査では、風邪症状についてAIに相談した人のうち、62.1%が「風邪」、30.6%が「インフルエンザ」、21.5%が「新型コロナ」の可能性を提示された経験があると回答。AIから「風邪」の可能性を提示された人では「安心した」と感じた人が25.6%で最も多かった。
ところが、実際に医療機関を受診した割合を見ると、「風邪」と提示された人では20.6%、「インフルエンザ」では38.2%、「新型コロナ」では37.2%にとどまっている。「風邪」と提示された人のおよそ8割は、医療機関を受診していなかったことになる。
こうしたAI利用による受診行動への影響について、医師らは懸念を述べる。
一般病院や医院、診療所、クリニックで治療にあたる医師100人を対象としてアンケートをとると、68.0%は「患者の受診行動にAIが影響を及ぼしている」と回答。具体的には、58.8%が「自分の状態をAIの情報をもとに自己判断する人がいる」と答えていたのだ。
さらに84.0%の医師は「感染症は似ている症状が多く、AIへの相談だけで正確に判断するのは難しい」と回答。
また66.0%の医師は「いろいろな感染症の可能性が考えられるので、すぐに医療機関を受診してほしい」と答え、58.0%は受診前のAI相談が「医療機関への受診遅れにつながる」とも回答した。
医師の74.0%は「生活者が体調管理でAIに相談することは有効」と回答しているが、88.0%は「AIの意見をうのみにせず参考程度にしてほしい」としている。AIの活用そのものを否定しているわけではないが、健康管理の補助的なツールにとどめることが望ましいと考えていることが読み取れる。
重要なのは早期診断、早期治療
この調査を監修した、いとう王子神谷内科外科クリニック院長・伊藤博道氏は「一般的な生成AIは、医療の専門家による診察や検査に代わるものではなく、提供される情報には限界があり、また、その責任をAIは負ってくれません」と指摘。
医師は「症状だけでなく、診察や検査で得られる多くの情報を総合して診断」しているとしたうえで、「気になる症状がある場合は、早めに医療機関への相談をご検討ください」と早期診断・早期治療の重要性を説いている。
気になる不調が続くときは、「AIが大丈夫だと言っているから、大丈夫だ」と安心せず、身体からの違和感を見逃さないことが肝要だろう。
AIは、あくまで参考情報として活用し、必要に応じて医療機関で検査・診断を受ける。こうした姿勢が、感染症の早期診断と、早期治療につながることになる。
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