業務を変えるkintoneユーザー事例 第306回
「正しさより、使いたくなること」を追求したポータル作成で見えたもの
訪問看護を支えるスタッフの心を1つに kintoneアプリの改良で行き着いたそれってバイブコーディングでは?
2026年05月01日 09時00分更新
外出が多く、一人になりがちな訪問看護の看護師とうまく連携したい。離れた拠点のスタッフ同士でもっと密接にコミュニケーションしたい。そんなニーズに応えるべく、kintoneを触り始めたのは、IT歴のない元絵本編集者だった。
kintoneのユーザー事例を共有する「kintone hive 2026 osaka」の2番手は、大阪を中心に訪問介護事業を手がけるテキックスの横山瞳さん。「正しさより、使いたくなること」を追求していたら、バイブコーディングにまで手を伸ばしていた。
バラバラに働くスタッフの心を1つに kintoneに白羽の矢
テキックスは「心身が不調な人も安心して暮らせる街を創る」をパーパスに「ななーる」というブランドの訪問介護事業を手がけている。訪問看護は、病棟を看護師が回ってケアするのと同じく、自動車や自転車で自宅を回って看護を届けるサービス。テキックスでは、現在大阪に8拠点、兵庫に1拠点、三重に1拠点の訪問看護ステーションをかまえており、63名の約8割は看護師。今回登壇した横山瞳さんは、もともと絵本の編集者で、テキックス入社後は広報や採用を担当した後、大阪の本部で経営企画室の室長を担当している。
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続いてkintone導入の背景となった業務課題の説明。まず訪問介護事業において、看護師は業務時間の大半を1人で行動し、外出時間は全体の8割に達するという。また、導入当初は大阪拠点を倍に増やし、兵庫や三重にも訪問看護ステーションを立ち上げる事業の拡大期でもあった。しかも同社は各拠点の事務は大阪の本部からすべて遠隔で行なうというチャレンジを進めていた。そこで横山さんに課されたのが「バラバラに働くスタッフの心を1つにする」というミッションだった。
そこで構築を目論んだのが、ITツールや情報を集めたポータルサイトの構築だ。これまである程度のDX化は進んでおり、社内ではいくつものITツールを使っていた。しかし、チャットや勤怠、介護記録などツールがすべてバラバラで、「どこでやりとりしたのか、どこに情報があるのかわからなかった」という。
しかし、ポータルサイトを作ろうと考えた横山さんも絶賛情報の海に溺れてしまった。これにより「整理して外注していたら、果たして何年後にできるのか?」という不安が沸き起こったが、「IT人材は自信を持ってゼロ」という状態。そこで、白羽の矢が立ったのがサイボウズのkintoneだ。「ノーコードで簡単、始めやすい価格」ということで、とりあえずポータルサイトで使い始めることにした。
「正しさより、使いたくなること」の大切さに気づき、UI/UXに全振り
横山さんが目指したポータルサイトは、「遠隔でやり取りする看護師と事務が連携した事務業務の集約」「遠隔でも気軽に相談・交流できるつながりを醸成すること」そして「時間や場所に縛られず学びあえる環境を構築すること」の3つを役割として設定した。
まず最初にチャレンジしたのは、「事務業務の集約」。しかし、横山さんは「ITの知識が皆無」「地道の作業が不得意」という自覚があり、「他の業務が山積み」という状態。そのため、「面倒くさすぎる!」というのが正直な感想だった。「サイボウズの方がいっぱいいる前で申し訳ないのですが、ノーコードとはいえ難しかったです」という横山さん。kintoneを勉強して、社内の情報を収集して、アプリを作って、どうにかこうにか作り上げた。
でも、公開してもユーザーから届くのは「使い方がわからないから、1回も使っていない」「なにがどこにあるのかわからない」といった声だったという。「それを解決するために作ったんだけど……。泣きそうになりました。実際、家で1回ビール飲みながら泣きました」と横山さんは振り返る。
ただ、スタッフへの操作の説明やヒアリングでわかったことがあった。「大切なのは正しさより、使いたくなることではないかと思った。忙しい看護師が使いたくなるのは、すき間時間にスマホでささっと使えること、ちょっと心おどることではないか」と横山さん。絵本の編集者だった経験から、どうやったら心に届くか、どうやったら楽しく仕事ができるかを考えてきた経験から、この心境に至ったという。
そこで横山さんは難しい設定や機能を捨て、UI/UXに全振りしたという。ホームから職種別の導線を作ったり、わかりやすい名前にしたり、アイコンを統一したり、ワクワクするUIを設計した。利用したのはCanvaで、Webサイト用のテンプレートをカスタマイズしたというのがなんとも今風だ。
これにより、ユーザーからは「わかりやすくなった!」や「こんなことできる?」という声が出るようになった。「みんな、わかればやる気になってくれます。声が明らかに変わりました」と横山さん。現在も高度な設定は排除し、なるべくわかりやすくをモットーにkintoneアプリを構築しているという。
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