「Zoom Experience Day」開催、NTTドコビジ・奈良市・アルバルク東京が登壇
Zoom年次イベントが示した新たな方向性 「“会話を行動に変える”AIプラットフォームに」
奈良市事例:「職員が4分の1」に減っても成り立つ“デジタル市役所”を目指す
今年2月にZoomとの連携協定締結を発表した奈良市からは、市長の仲川げん氏が登壇した(関連記事:奈良市、ZVC JAPANと連携 AI×Zoomで電話業務をフルクラウド化)。
日本は人口減少、特に働き手人口(生産年齢)の減少という大きな課題を抱えている。これは奈良市も例外ではなく、同市の生産年齢人口は2000年ごろをピークに減少が続いており、今後30年間(2025~2055年)では「およそ4割」もの減少が予想されている。さらに20歳人口だけを見ると、30年後には「約6割の減少」だという。
こうした変化を受けて、仲川氏は「現在2100人ほどの市職員を、採用調整などを通じて、30年間で500人まで減少させていく」目標を立てていると説明した。奈良市の職員数は過去30年間ですでに3分の2(36%減)となっているが、生産年齢人口の減少スピードの加速に合わせて、よりコンパクトな体制にしていく構想だ。
もちろん、そのためには1人あたりの生産性向上は必須であり、これまでの業務を大きく変革していく必要がある。仲川氏は「いま2100人でやっている仕事を、どうすれば500人でも回せるようになるのか。(働き手不足という)状況に追い込まれるのではなく、われわれが新しい状況を作っていこうという発想で取り組んでいる」と説明する。
ここで重要な鍵を握るのが、市役所業務におけるデジタルやAIのフル活用だ。仲川氏は“デジタルツールを駆使したデジタル市役所へ”という言葉を掲げ、「デジタル技術を活用して、もっと便利で、もっとお金も時間もかからないコンパクトな行政を目指している」と説明する。すでに、市の裁量で変更できる手続き1025件については、すべてデジタル化を完了したという。
そして、Zoomとの連携を通じて現在取り組みを進めているのが、市役所における「電話対応業務」の効率化である。
仲川氏によると、奈良市役所には年間でおよそ131万件もの入電があるという。コールセンターだけで対応が完了するのはそのうちの5%程度にすぎず、残りの95%は市役所の担当課が対応してきた。入電1件あたり10分程度、年間ではのべ2万5000時間ほどの時間を要しており、人件費に換算すると「10億円程度を電話対応業務に取られている」と仲川氏は指摘する。
計画では、ここにZoom Phone、Zoom Contact Center、Zoom Virtual Agentを導入し、まずは市民がAIとの音声通話やポータルサイトを通じてセルフサービス解決(自動応答)できる仕組みを構築していく。
すでに3月からは新コールセンターが稼働しており、通話内容の文字起こしやAI要約機能の利用をスタートしている。ここで蓄積したナレッジをデータベース化し、AIが自動応答できる範囲を拡大して、市職員による対応時間を削減しつつ、問い合わせ対応の24時間365日化も目指す方針だ。ちなみに、新コールセンターへの移行に伴い、コールセンター経費は年間で5000万円ほど削減できたという。
仲川氏は、将来的なビジョンとして「これまで行政との距離が遠かった市民にも寄り添い、その声を速やかに政策へと転換していく、そんな市役所を目指したい」と述べた。これまではその情報収集と分析、政策へのフィードバックに膨大な時間と手間がかかっていたが、AI活用によって実現できるのではないかと期待を語る。
「わたしの生まれたころはちょうど石油ショックだった。“資源のない日本の未来は暗い”と言われていたが、資源がないからこそ省エネ技術を発展させて、世界でのし上がっていった。こう考えると、現在のいわば“人材ショック(働き手の不足)”を乗り越える知恵と力を生み出せれば、日本は世界で大きな存在感を発揮していけるのではないか」(仲川氏)
トヨタアルバルク東京:インバウンド客も楽しませるAIコミュニケーションを
B.LEAGUEプロバスケットチームのトヨタアルバルク東京からは、代表取締役社長の林邦彦氏が登壇し、Zoomが特別協賛して3月11日に開催されたゲームにおいて、来場者にZoomのテクノロジーが披露された様子を紹介した(関連記事:Zoomがバスケ会場をAI化 アルバルク東京で新コミュニケーション体験を提供)。
同チームは昨年10月、新拠点である「TOYOTA ARENA TOKYO(トヨタアリーナ東京)」を完成させたばかりだ。ゲームを観戦しやすいアリーナ設計だけでなく、ゲームを盛り上げる大型LEDビジョン、さらにスポーツバーや屋外テラス、選手と間近に接することができるラウンジなど、あらゆる人にスポーツの楽しさを体感してもらえる工夫がなされた施設と言える。
3月のゲームで披露されたのは、Zoom下垣社長のスピーチを、日本語とその英訳文でリアルタイムに字幕表示する技術、そしてトヨタアルバルク東京の選手たちの「AIアバター」が、流暢にファンヘのメッセージを話すという技術だ。
「(AIアバターとして登場した)日本人選手は英語がまったくしゃべれないが、画面上はものすごく流暢に、それも彼の声でしゃべっている。同じように、外国人選手も日本語がしゃべれないが、日本語をしゃべる動画を流すことができた」(林氏)
林氏は、スポーツエンターテインメントのビジネスにおいて、AIが支援するこうしたファンコミュニケーション、新たな観戦体験の可能性を強調した。
「TOYOTA ARENA TOKYOは臨海地区にあるため、インバウンドの方が来ていただくケースもある。そうした方が、母語で聞いて理解できることもサービスの一環だと考えている。アルバルク東京としては、インバウンドの来場者も取り込みながら、アジア、そして世界に進出するグローバルのクラブになることを目標としている」(林氏)
ちなみに、アルバルク東京のチーム内には日本、米国、スペイン、中国、ウガンダの選手がおり、ヘッドコーチはリトアニア国籍と「ものすごく多言語の人たちがメンバーにいる」という。チームミーティングなどの場面でも同時通訳の技術が使えれば、「時間が有効活用でき、理解も深まるのではないか」と話した。
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Zoom Experience Dayではこのほかにも、AIエージェントも含む最新のZoom AI機能の紹介、「Zoom Revenue Accelerator」を通じたRevOps導入や営業組織の変革、そしてAI研究の最前線から見る今後の社会など、多様なセッションが催された。
これらのセッション内容については、あらためて後日の記事でお伝えする予定だ。
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