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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第381回

インスタで狙われる子どもたち メタに厳しい判決相次ぐ

2026年03月31日 07時00分更新

文● 小島寛明

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 子どもの安全を巡って、米国でSNSプラットフォームに厳しい判決が相次いだ。

 米ニューメキシコ州の司法省がメタ(Meta)を相手取った訴訟で、同州の裁判所は2026年3月24日、同社のSNSは子どもにとって安全なサービスと偽るなどしたとして、メタに対して総額3億7500万米ドル(約590億円)の賠償を命じた。

 25日には、20歳の女性がYouTubeとInstagramを使い続けたことでうつ病などを発症したとして、ユーチューブとメタを相手取った訴訟で、米カリフォルニア州ロサンゼルス郡の裁判所が、プラットフォームの設計や運用に過失があったとして、両社の責任を認めた。

 いずれも重要な判決だが、とくにニューメキシコ州の裁判には注目したい。州司法省は2024年、12歳の少女を装うアカウントをInstagram上に作成したところ、短期間で大勢の成人男性たちが「友だち」になった。そのうち3人の男たちが、性行為を教唆したなどとして、州司法省に逮捕されている。州司法省は、男たちと12歳の少女を装うアカウントがどのようなやり取りを交わしたかについて、あからさまな情報を公開している。その内容は、SNSにおける子どもの安全という問題の深刻さを示している。

目をおおいたくなる捜査資料

 州司法省が裁判の過程などで公開したおとり捜査の内容は、目をおおいたくなるような内容だ。

 州司法省は2023年から2024年上半期にかけて、数カ月にわたるおとり捜査を展開した。たとえば、同州の主要都市に住む12歳の少女という設定で、InstagramやFacebookに偽装アカウントを作成する。すると、数日の間に600人ほどの「友だち」が集まったが、そのほとんどが、成人の男たちだった。

 おとり捜査のため、年齢を偽ってアカウントを作成し、年齢確認の仕組みを回避しようとしたところ、簡単に年齢確認を回避することができたという。つまり、より高い年齢になるように虚偽の生年月日を入力したうえで、アカウントができてからは12歳の設定で、日常に関する内容を投稿したようだ。

 男たちは、12歳の少女と個別のメッセージで会話をはじめる。しばらくすると、会話の内容が性的な内容となり、性的な画像や動画を送るなどエスカレートしていく。WhatsAppに誘導したり、別の性的な話題を扱うFacebookのグループへの参加を促したり、ポルノへの出演を依頼したりするケースもあったようだ。

 この捜査の結果、3人の男が州司法省に逮捕されている。いずれも、電子コミュニケーションデバイス(スマホ)で、13歳未満の子どもに対して、性行為を教唆した(そそのかした)などが逮捕容疑だ。州司法省の公開資料によると、3人は逮捕当時、52歳、47歳、29歳だった。

 州司法省は偽アカウントを使って、InstagramやFacebookのチャットで男たちと会話を重ね、モーテルなどで実際に会う約束をし、現れたところを逮捕したという。

メタが「消費者に虚偽の説明」と認定

 3人の逮捕に先立つ2023年12月には、州司法省は、メタが、自社のSNSプラットフォームは「子どもにとって安全」だと消費者に虚偽の説明をしたとして、メタや子会社のフェイスブック、インスタグラムを相手に訴訟を起こした。

 州側は、メタのSNSプラットフォームで、子どもたちが年齢を偽ると、簡単に年齢確認を回避でき、成人が13歳未満の子どもたちを相手として、チャットで性的な会話をすることや、性的な動画などを送信することを防止していないと主張した。

 この結果、裁判所はメタが消費者に虚偽の説明をしたと認定し、日本円で約590億円もの巨額の賠償を命じている。メタ側は、判決を不服として控訴する方針だ。

人と人をつなぐSNSの負の効果

 そもそも、メタのプラットフォームは、共通する興味や関心を持つ人をつなぐのが得意だ。ユーザーたちの興味の対象が、ポケモンカードや釣り、特定のファッションブランドであれば問題はない。人々の共通の関心をつなぐことが、大きなビジネスを生む事もある。たとえばファッションブランドにとって、InstagramやTikTokといったSNSはビジネスの生命線とも言えるだろう。

 しかし、SNSに集う人々の興味が、性の対象としての子どもたちだった場合、どうだろうか。ニューメキシコ州の事件と裁判は、こうした問いを投げかけている。おそらく、プラットフォーム側にとっても対策は極めて難しい。人と人をつなぐことで、大きな広告効果と収益を生み出す以上、簡単にアルゴリズムは変更できない。チャットに、性的な内容が含まれるとしても、大人どうしの会話であれば、プラットフォームがそこに介入するべきではない。

 人と人をつなぐSNSの正の効果を享受しつつ、負の効果からは子どもたちを遠ざける。そんなことができるのか分からないのだが、何らかの対策が必要であるのは間違いないはずだ。

 

筆者──小島寛明

1975年生まれ、上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒。2000年に朝日新聞社に入社、社会部記者を経て、2012年より開発コンサルティング会社に勤務し、モザンビークやラテンアメリカ、東北の被災地などで国際協力分野の技術協力プロジェクトや調査に従事した。2017年6月よりフリーランスの記者として活動している。取材のテーマは「テクノロジーと社会」「アフリカと日本」「東北」など。著書に『仮想通貨の新ルール』(ビジネスインサイダージャパン取材班との共著)。

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