家の選び方で老後が変わる。50代から考えたい住まいのこと③

修繕やリフォームなど〝これからの住まい〟のためのコスト削減とは

文●杉山幸恵

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 家を購入したからには、その後の修繕やリフォームは避けては通れない課題。住宅取得時のローンに加え、さらに大きな出費となるのだから、頭を抱える人も少なくないだろう。しかし考えようによっては、このメンテナンスこそが〝定期的に訪れるコスト削減のチャンス〟なのだという。そう教えてくれるのは、YouTubeチャンネル「職人社長の家づくり工務店」を配信している平松明展さん。不具合が出た箇所をその都度直すだけの〝延命処置〟では、トータルコストは膨らむばかりだが、やり方次第では光熱費を削減したり、家の資産価値を上げたりすることも。50代からの住環境を最適化するだけでなく、老後の暮らしに安心もプラスする、そんな〝これからの住まい〟について話を聞いてみた。

早め早めの修繕や性能・機能のアップデートが、将来的なコストダウンにつながる

 高性能住宅ではない新築物件を購入した場合、一般的に築10~15年で1回目の外壁と屋根の修繕、20~25年で2回目の外壁と屋根に加えて水回りの修繕、30~35年で大規模な修繕というのが目安。しかしながら早い段階で大掛かりな修繕をしたり、素材をアップグレードさせたりすることで、2回目の修繕を回避できる場合もあるという。

 「定期的にメンテナンスが必要な外壁ですが、新築時や中古購入時に耐久性の低い資材を使用している場合は、性能を高める好機といえます。例えば、サイディング(壁に使用する仕上げ板)を安価な窯業系から金属系に変えるというもの。メンテナンス周期は窯業系が10〜15年に対し、金属系は15〜30年。さらに金属サイディングは防水性が高く、断熱性や軽量性にも優れ、耐震性も向上します」

 また、軒を出すことで外壁を風雨から守り、劣化の原因そのものを抑えたり、壁内部に縦胴縁を設けて通気層を確保し、湿気を排出しやすい構造にしたりするのも、外壁のメンテナンスコストを抑えるために有効だという。

続いて、最前線で建物を守っている屋根はどうだろうか。

 「例えば、合成スレートという安価な屋根材は、10〜15年ごとに塗装が必要で、30年経てば張り替えも避けられません。もし、この先30年以上その家に住むつもりなら、15年目のタイミングで単なる塗装ではなく、思い切って金属系のガルバリウム鋼板などへ葺き替えることもおすすめします。

 ガルバリウム鋼板は耐久性が高く、修繕頻度は20年ごとの塗装なのでトータルコストを低く抑えられます。葺き替えのコストはかかりますが、その後のメンテナンスが不要になれば、トータルでは確実に安くなる。インフレで建材費が上がる未来を考えれば、先に手を打っておくことが最大のコストダウンにつながるのではないでしょうか。

 また、屋根のメンテナンスは不具合が出る前に行うのもポイントです。劣化が進行すると全面改修が必要になり、外壁や内壁、天井にまで影響が及ぶ可能性も。定期的な点検は、建物の劣化防止だけでなく、将来的な家計負担の軽減にもつながります」

 加えて、複数の修繕を合わせて行うことで、コスト削減につながる場合があるという。例えば、外壁と屋根の塗装を同時にすれば、一般的に約20万〜30万円かかる足場代を1回分節約でき、工期を短縮する効果も生まれる。

 さらに、コストカットの方法として、修繕タイミングであえて性能や機能をアップデートさせていくことを平松さんは提案する。新築時と同じ考え方で、耐久性と省エネ性を高めるよう意識することで光熱費の削減につながるだけでなく、結果的に家の資産価値を上げ、トータルコストを下げることになるのだ。

 「光熱費は家計の支出の中でも大きな割合を占めています。そして、電気代やガス代は上昇傾向にあり、今後さらに負担が増す可能性も。住宅の構造変更は工事が大掛かりになりますが、断熱リフォームは比較的導入しやすい対策です。屋根や外壁の断熱強化のほか、断熱性の高い窓にするという手もあります。

 コストを抑えたい場合は内窓を設置するというのも有効。採光と通気透湿性能を保ったまま断熱性が向上し、特に暖房効果を発揮します。設置コストは窓1枚で8万円ほどなので、比較的短期間で投資回収できるでしょう」

老後のためのバリアフリー化やリフォームはライフプランに合わせて検討を

 ミドルエイジともなると老後のことを見据えて、修繕以外のリフォームを検討する人も出てくるかもしれない。その場合、トータルコストの観点からすると、住宅取得時にあらかじめバリアフリー化しておいたほうが、コストダウンできるのではないだろうか?

 「家族構成にもよりますが、将来に必要になるかどうかわからない設備への初期投資は、損失を生み出す可能性が高いです。最終的に介護が不要なケースや、施設利用を選択する場合もあるためです。だから、足腰が弱くなってから手すりを取り付けるなど、状況に応じて行えばいいと考えています。

 一方で、床の段差をなくす、手すりを設置できる下地を用意する、廊下幅を確保するなど、将来のバリアフリー化を見越した家づくりは正解です。後からの設置は難しい、あるいは高額になることが少なくありません。

 特に段差をなくす工事は後出しだと床全体を剥がすような大掛かりなものになり、コストが跳ね上がります。掃除のしやすさも含め、床のフラット化は最初からしておいたほうがいいでしょう」

 浴室やトイレなどの水回りの修繕時に、手すりを付ける、床材の滑り止め加工をするといったバリアフリー化を行うのも有効だそう。

 「必要なタイミングで対策することで、合理的かつ無駄のない設備投資が可能に。要支援・要介護認定が必要ですが、介護保険による住宅改修費の補助制度などもあります。新築の際は申請条件外だった制度を利用できるようになるなど、ライフプランに合わせた資金計画こそが、無駄のない住まいづくりにつながるというわけです」

 また、子どもが独立するなど家族構成が変化し、不要な部屋が発生するということもあるだろう。その場合、住まいそのものをコンパクトにすることは可能なのだろうか?

 「一般的な2階建てを例にとった場合、2つのパターンが考えられます。一つは、2階部分を撤去して平屋にする〝減築〟という方法。単純に面積が減るので光熱費やメンテナンスコストも削減できますし、耐震性も向上します。ただし、費用は2000万円ほどかかるので、いっそのこと建て替えを検討したほうがいいかもしれません。

 もう一つは、生活空間を限定して部分的に断熱改修を行う方法。リビングや寝室、水まわりなど必要な空間のみ快適性を高め、それ以外の部屋は物置などにしてしまう。耐震性の根本的な解決にはなりませんが、光熱費を抑えられるほか、冬のヒートショック対策としても有効です」

 もちろん、老後の住まいについて最適な選択は、人それぞれで異なるだろう。築古住宅で光熱費や将来の修繕費が大きい場合、いっそ住み替えや建て替えをした方が、結果的にライフプランが好転することもあるという。実際に築40年の2階建てから小さな平屋へ建て替えた夫婦の事例を、平松さんが挙げてくれた。

 「夫婦二人暮らしで光熱費が月4万円かかり、数年後には1,000万円単位の修繕が見えていました。年収も高くなく、そのままでは老後の家計が破綻するリスクがありました。そこでライフプランを逆算し、あえて今、メンテナンスフリーで省エネ性能の高い平屋に建て替える決断をされたんです。

 目先の出費は増えましたが、その後のランニングコストが激減したことで、将来の不安が解消されたとのことでした。また、2人でちょうどいいサイズの物件はニーズが高く、将来貸したり売ったりする〝出口戦略〟としても有利に働く可能性が高いです」

修繕・リフォームは信頼できる業者に。依頼する前に関係値を築いておけるとベスト

 修繕やリフォームを、どんな業者に依頼するべきかも気になるところ。ハウスメーカーで新築を購入した場合は、同系列のリフォーム会社という選択肢が一般的だ。また、ほかの業者が建てた住宅の修繕を異なる工務店に依頼する場合、同じ資材を用意できないというケースもあるという。

 「地域型でリフォームに特化した工務店もあります。その場合、リフォーム工事の実績やアフターサービスの内容をしっかり確認するのが賢明。明確で透明性の高い見積もりの提示があるかも重要なポイントです。

 業者選定において、最も注意すべき点があります。それは、訪問販売の業者には相談しないということ。部屋の中に入れてはいけませんし、勝手に屋根に上らせたり、床下に入れさせたりしてもいけません。

 なんともない場所をわざと壊して、写真を撮影し、『壊れていましたよ、直しますか?』という詐欺のような手口も実際に起きています。なかには事務所など実体のない業者もあります。

 そんな不誠実な業者の手口に引っかからないためにも、Googleマップなどを活用して、地元に根付いた工務店などを見つけ、あらかじめ相談できる関係を築いておくことが大切です。現状を把握したうえで、『今は問題ないが、いざという時に依頼できる先』を持っておくと安心かと思います。

 準備がないまま不具合が起きると、訪問営業などに焦って対応してしまう可能性もあります。トラブルが起きる前に相談先を確保しておくことが、冷静な判断と適切な対応につながることでしょう」

 家づくり、そして快適な住まいを維持するということは、自分の人生をどう設計するかというライフプランにも大きく関わってくるもの。だからこそ、自ら知識を得て、納得のいく選択を積み重ねていくことが重要といえるのではないだろうか。

YouTubeチャンネル「職人社長の家づくり工務店」も好評の平松明展さん。工務店の社長として、自身の経験とお客さまからの生の声をもとに〝失敗しない・後悔しない〟家づくりの情報を、わかりやすく発信している

2026年1月に発行された最新著書「お金の不安が消える 住まいのコスト大全 快適に暮らせて資産が残る家の選び方」(KADOKAWA)。住宅購入・リフォームで削れる費用について、図表などを交えてわかりやすく説明している

Profile:平松明展

ひらまつあきのぶ/「平松建築株式会社」代表取締役社長。1980年静岡県磐田市生まれ。19歳から大工として10年間で100軒以上の住宅を解体、修繕し、住宅の性能や特徴を現場で体得。2009年に平松建築を創業。会社経営を行いながらも、ドイツやスイス、アメリカに赴き世界中の家づくりを学ぶほか、地震後の現地取材を行うなど、地域の気候風土にあった家づくりを研究し続けている。著書に『住まい大全 ずっと快適な家の選び方、つくり方、暮らし方』『住んでよかった家 理想の暮らしがずっと続く15の空間』『お金の不安が消える 住まいのコスト大全 快適に暮らせて資産が残る家の選び方』(KADOKAWA)がある。リアルな家づくり情報を発信するYouTubeチャンネル「職人社長の家づくり工務店」のチャンネル登録者数は23万人を超える。

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