3月12日、オーディオブランドのJBLは、東京・表参道にあるミルギャラリー神宮前にて、新製品発表および体験イベントを開催した。発表されたのは、同社の主力ワイヤレスヘッドホン「LIVE」シリーズの最新モデルとなる「JBL LIVE 780NC」(オーバーイヤー型)と「JBL LIVE 680NC」(オンイヤー型)の2機種だ。
自然光が差し込む開放的なギャラリーには、従来までの無機質なオーディオ機器の展示とは一線を画す、まるでファッションアイテムやコスメブランドの展示会のような洗練された空間が広がっていた。本稿では、会場での担当者への取材をもとに、7年ぶりのフルモデルチェンジを果たしたLIVEシリーズの開発コンセプトや、大幅な進化を遂げたハードウェアとアプリ機能の全貌についてレポートする。
洗練と引き算の美学がテーマ、7年ぶりのフルモデルチェンジ
新モデルは、LIVEシリーズとして実に7年ぶりとなるデザインのフルモデルチェンジを果たした。この大がかりなリニューアルを主導したのは、アムステルダムを拠点とするJBLのグローバルデザインチームである。彼らが新たなキーワードとして掲げたのが「洗練」だ。
JBLのヘッドホンラインナップには、最上位に位置するフラッグシップモデル「JBL TOUR」シリーズが存在する。メインストリームであるLIVEシリーズは、価格帯や企画上の制約がある中で、いかにして「洗練されたデザイン」を実現するかが大きな課題であったという。
そこでデザインチームが採ったアプローチが、要素を徹底的に減らす「ミニマルデザイン」である。装飾のためだけの無駄なパーツを削ぎ落とし、それぞれの素材感や仕上げ、カラーリングの組み合わせを極めることで洗練さを表現した。例えば、ヘッドバンドやスライダーの構造を見直し、従来は別々の部品を組み合わせていた部分を一体化させるなどして部品点数を削減。コストを抑えながらも、スマートで現代的なルックスを手に入れた。
機能面においては妥協せず「必要十分なものを満載にする」という方針が貫かれており、結果として、見た目は非常にすっきりとしていながらも、高度なテクノロジーが凝縮された機能美あふれるプロダクトに仕上がっている。
日本市場の変化と「スタイル」で選ぶ新たなラインナップ戦略
日本市場に向けたラインナップ展開の転換も注目したいポイントだ。これまで日本のヘッドホン市場においては、耳をすっぽりと覆う「オーバーイヤー型」が圧倒的な主流とされてきた。JBLも日本国内では長らくオーバーイヤー型をメインに展開してきたが、昨今は様相が変化しているという。
音楽を聴くためのツールとしてだけでなく、ファッションの一部として「顔周りの見た目」や「スタイリング」を重視する若年層を中心に、耳の上に乗せるコンパクトな「オンイヤー型」の需要が急速に高まっているのだ。
こうしたトレンドを受け、JBLは今回、オーバーイヤー型の「LIVE 780NC」に加え、日本市場では初本格導入となるLIVEシリーズのオンイヤー型ノイズキャンセリングモデル「LIVE 680NC」を強力にプッシュしている。
JBLが提案するのは、まず「自分の頭のサイズやファッションに合うスタイル(オーバーイヤーか、オンイヤーか)」を選択し、その次に「ノイズキャンセリングが必要か」などのグレードを選ぶという、ユーザーのライフスタイルに寄り添った新しい選び方だ。
エントリー層向けの「TUNE」シリーズとターゲットとの住み分けも明確。スタイルから入って機能を選ぶことも可能だ。上質な音楽体験とファッション性を求めるユーザーに向けた確固たるラインナップが完成したと言える。
カラーバリエーションも多彩だ。日本国内向けの基本カラーに加え、ヨドバシカメラ限定カラーやJBLオンラインストア限定カラー(パープルなど)が展開される。さらにグローバル市場では、トレンド感のあるグリーンや鮮やかなオレンジ(国内ではオーバーイヤー型のみの展開)などもラインナップされており、今後の日本市場への追加投入にも期待が膨らむところだ。
装着感と携帯性を劇的に高めたハードウェアの進化
デザインの刷新に伴い、直接肌に触れる部分の素材や物理的な構造も大きく手が加えられている。
最も目を引く変更点はヘッドバンド部だ。前モデルではファブリック(布)素材が採用されていたが、今回は外側にマットなプラスチック素材、頭頂部に触れる内側にはシリコン素材が採用された。
このシリコン素材が非常に「モチモチ」とした柔らかい質感に仕上がっており、長時間のリスニングでも頭部への圧迫感を和らげ、快適な装着感を提供してくれる。また、イヤーパッドの形状や高さも見直され、とくにオンイヤー型の「LIVE 680NC」においては、物理的な遮音性(パッシブノイズアイソレーション)が極めて高くなっている点も見逃せない。
そして、持ち運びの利便性を大きく向上させているのが、改良されたヒンジ(折りたたみ)構造である。耐久性が前モデルから大幅に向上しているだけでなく、イヤーカップをより深く、限界までフラットに折りたためるようになった。これにより、付属の専用ポーチにすっきりと収まり、小さなバッグでもかさばることなく持ち運ぶことが可能になった。
妥協なき音質と「リアルタイム補正」対応のノイズキャンセリング
オーディオ機器としての基本性能も、もちろん一級品である。両モデルともに40mm径のダイナミックドライバーを搭載。会場では、Bluetooth送信機能を備えたアナログレコードプレーヤーやカセットテーププレーヤーを用いたユニークな試聴デモが行われていたが、アナログ特有の温かみのある音源と、低音がしっかりと響き渡る生き生きとした「JBLシグネチャーサウンド」の相性は抜群であった。もちろん、最新の空間オーディオ機能にも対応しており、高い没入感を味わうことができる。
ノイズキャンセリング機能も上位モデルに迫る進化を遂げた。物理的なマイクを用いた従来のノイズカットに加え、AIアルゴリズムを組み合わせたハイブリッド方式を採用。特筆すべきは「リアルタイム補正機能」の搭載だ。ユーザーがヘッドホンを装着した際、髪の毛が挟まったり、メガネのツルによってイヤーパッドにわずかな隙間が生じたりすることがあるが、本機はそうした装着時の隙間や音漏れをリアルタイムに検知し、自動的にノイズキャンセリングの効果を最適化(補填)してくれる。これにより、どんな装着状態でも常に静寂なリスニング環境が保たれる。
専用アプリ「JBL Headphones」と次世代規格「Auracast」の連携
新モデルではハードウェアの進化に加えて、ユーザー体験を向上させているのが専用アプリ「JBL Headphones」を通じた豊富なカスタマイズ機能だ。本機は次世代Bluetoothオーディオ規格「LE Audio」と「Auracast(オーラキャスト)」にも対応。聴こえに合った音にするパーソナライズ機能も備える。
これまでLIVEシリーズのユーザーから多く寄せられていた「本体の物理ボタンやタッチセンサーの操作割り当て(アサイン)を変更したい」という要望がついに実現した。アプリを通じて、自分の使いやすいように再生・停止、ノイズキャンセリングの切り替え、音量調整などの操作を自由にカスタマイズできるようになった。日常的に使用するツールだからこそ、こうした細かな操作感のパーソナライズが可能になった意義は大きい。
さらに会場のデモ体験コーナーで強いインパクトを残したのが「Auracast」の実機デモだ。Auracastとは、1つの送信機(スマートフォンや専用トランスミッター)から、対応する複数のヘッドホンやイヤホンへ同時に同じ音源をブロードキャスト配信できる次世代機能である。
この機能の恩恵を最大限に引き出すのが、JBL Headphonesアプリである。アプリ内にはAuracast専用のメニューが用意されており、周囲に存在するAuracast送信機をWi-Fiネットワークを探すような感覚でスキャンすることができる。
接続台数も実質無制限。例えば、大規模な国際カンファレンスやイベント会場を想像してほしい。会場内に「日本語放送」「英語放送」「中国語放送」といった複数のAuracast送信機が設置されている場合、ユーザーはアプリの画面を開き、リストアップされた送信機の中から「日本語放送」をタップして選択するだけで、手元のヘッドホンから目的の音声だけをクリアに聴くことができる。
また、空港やスポーツジムのモニターなど、パブリックな場に設置されたテレビの音声を個人のヘッドホンで受信するといった使い方も想定されている。
JBLはこの分野で他社に先行して対応を進めており、今後Auracast対応の送信機やスポットが世の中に普及していくにつれ、この「LIVE 780NC / 680NC」と専用アプリの組み合わせは、単なる音楽再生用ヘッドホンの枠を超えた「情報のパーソナルレシーバー」として強力な威力を発揮するはずだ。
発売日や価格は後日発表
7年ぶりの刷新となった「JBL LIVE 780NC / 680NC」は、機能過多で煩雑になりがちな現代のガジェットにおいて、「洗練」と「引き算の美学」によってスマートな美しさを体現した意欲作である。
ファッションアイテムとして街へ持ち出したくなるミニマルなデザイン、多様化するニーズに応えるスタイルの提示、そしてアプリ連携による高いカスタマイズ性とAuracastといった次世代の拡張性。表参道のギャラリーというファッショナブルな空間での発表にふさわしい、デザインとテクノロジーが見事に融合した最新ヘッドホンである。日常の音楽体験を、より美しく、より快適にアップデートしてくれる大本命モデルの登場を待とう。


























