米国の国務省が、EUなど他国の政府が閲覧を禁止しているサイトを、閲覧できるようにするポータルサイトを準備している。
2026年2月18日のロイターによれば、他国からのアクセスであっても、米国からのアクセスであるように見せかける仮想プライベートネットワーク(VPN)の仕組みを使って、自分の国で閲覧が禁止されているサイトであっても、閲覧できるようになるという。国務省は2月13日〜15日にドイツで開かれたミュンヘン安全保障会議でこのポータルサイトを発表する計画だったが、延期したという。
freedom.govというサイトで、URLの末尾に.govが付いている以上、れっきとした米国の政府サイトのようだ。 2026年2月21日の時点で運用は開始されていないが、日本からアクセスすると、馬のアイコンが走っているアニメーションと「情報は力です。表現の自由という人権を取り戻しましょう。準備してください」というメッセージが表示される。
ロイターの報道によれば、このポータルサイトを経由すれば、欧州域内の国で閲覧できない、ヘイトスピーチを含むサイトや、テロリストの人材募集といったサイトにもアクセスできるようになるという。マルコ・ルビオ国務長官らは、巨大プラットフォームに偽情報への対策を義務づけるEUのデジタルサービス法などに対して、「検閲に当たる」と反発している。
米国と欧州諸国との関係がさらに悪化しそうな施策ではある。ロイターの記事は、「ポータルサイトによって、米国政府が、市民に対して現地の法律を無視するよう促しているように見えるという、慣れない立場に置かれる可能性がある」と指摘している。米国務省は、何を意図して、このポータルサイトを計画しているのだろうか。
EUのネット規制を「検閲」と反発する米議会
米政府が、EUなどの規制を回避するポータルサイトを立ち上げるという強い措置に踏み切る背景には、EUのデジタルサービス法などへの根強い不満がある。
デジタルサービス法は2024年2月に全面適用が始まった法律で、巨大オンラインプラットフォームを対象に、違法コンテンツや偽情報の監視や特定、削除などの措置を義務付ける内容だ。つまり、オンラインプラットフォームは、自社のSNSなどへの投稿を監視し、偽情報や違法コンテンツがあった場合、デジタルサービス法に基づき、削除などの対応が必要となる。
EUの動きに対して、米国の下院司法委員会は2026年2月3日、『外国検閲の脅威』というタイトルの報告書を公表した。この報告書は、以下のように、デジタルサービス法などによるEUの対応を強く批判している。
「欧州委員会は、10年にわたる包括的な取り組みを通じて、ソーシャルメディア・プラットフォームに対し、世界的なコンテンツモデレーション規則を変更するよう圧力をかけることに成功し、それによって米国におけるアメリカ人のオンライン上の言論を直接的に侵害している」
下院司法委員会の主張に同意できるかどうかは別として、米政府や議会がEUのデジタルサービス法に反発する理由は理解できる。デジタルサービス法は、法律でEU域内に4500万人以上のユーザーがいるSNSやネット通販サービスなどを巨大オンラインプラットフォームとして指定してるのだが、対象が、アマゾンやグーグル、メタ、マイクロソフトといった米国企業や、中国のプラットフォームばかりだからだ。
準備打開ですでに懸念の声

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