第23回 チームワークマネジメント実践者に聞く

メンバーを無言にさせた3つの不安は仕組みで解消する

無言の会議が怖すぎる——心理的安全性を「仕組み」でつくり、お互いに指摘し高め合えるチームへ

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

提供: ヌーラボ

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 チームワークマネジメントとは? 多様なメンバーが共通の目的達成のために助け合い、自律的に動けるチームを設計・運営する概念。チームの構造を見える化し、コミュニケーションを設計することで、チームメンバーが個々の能力を発揮しやすくし、全体の生産性向上と目標達成を目指す。

 今回は、インフラ企業の顧客サービス構築プロジェクトを追う。社内の異なる部門、外部のパートナーなど、今までと違うメンバーとプロジェクトを成功に導くために必要な「心理的安全性」について学んでいきたい。まずは“私”の気持ちになって、次の事例を読んでほしい。

【事例】会議はマネージャーたちの独演会 メンバーは無言

私が所属しているインフラ企業の顧客サービス改善プロジェクトでは、顧客向けのアプリ開発を手がけている。従来、われわれのようなインフラ企業はインフラの維持・管理や利用料の算出・集金などがメイン業務で、顧客管理やマーケティングという概念は存在しなかった。しかし、電力やガスの自由化により、競争が激化した結果、部門を横断した顧客管理サービスプロジェクトが急遽立ち上げられ、外部のパートナーと連携したサービス構築が必要になったわけだ。

しかし、いざスタートしてみると、今までやったことのない部門間連携のプロジェクトは想像以上に大変だった。自己紹介もなく始まったキックオフのミーティングは、各部のマネージャーが話したいことを話している感じで、参加メンバーは蚊帳の外。正直言って具体性に乏しい内容。定例ミーティングもマネージャーだけで決定した事項が指示として落ちてくる感じで、目的もわからない。

ミーティングでは一応、質疑応答の時間があるものの、参加者はいつも無言だ。なぜ無言なのか? チームメンバーに個別に話を聞いてみると、「なぜその決定に至ったのかわかりにくい」「発言をしてもリアクションがもらえないので不安になる」「無知だと思われたくない」などのコメントが相次いだ。こうした部門横断プロジェクトではメンバー間でのディスカッションが重要なのに、気兼ねなく発言できる雰囲気ではなく、積極的に指摘し合ったり褒め合える状態とは程遠い。

それでもプロジェクトが円滑に進んでいればよいが、案の定プロジェクトは遅れに遅れ、カットオーバー期日に間に合わず、予算も超過してしまった。プロジェクトを総括する反省会もマネージャーが現場の担当者を突き上げるような内容だったが、そこで挙げられたのは、メンバー全員が前々から懸念していたことばかりだった。「どうすればよかったのか」「もっといいやり方はなかったのか」を考えてみたら、そもそも自由に意見が言える環境がなかった。よく言われる「心理的安全性」がなかったのではないだろうか?

【課題】部門横断の重要プロジェクトはなぜ失敗したのか

 みなさんの会社やチームでは、会議で闊達な発言や意見交換が行なわれているだろうか? メンバーに言いづらい雰囲気はないだろうか? 今回の事例は、異なる部門や外部パートナーが連携するプロジェクトでの「心理的安全性」がテーマだ。

 心理的安全性は対人関係上のリスクを負っても、自分の考えや気持ちを安心して発言できる状態を指している。つまり、率直なもの言いや間違いの指摘、アイデアの提案などが許される風通しの良い組織を表す。1990年代後半にハーバード大学の教授が提唱した心理的安全性だが、この概念を一躍有名にしたのが、グーグルの社内研究「プロジェクト・アリストテレス」だ。

 グーグルはチームごとの生産性の違いに着目し、生産性の高いチームには「心理的安全性」があることを割り出した。しかも、心理的安全性はチームで成果を出すための他の要素(相互信頼、構造と明確さ、仕事の意味、インパクト)よりも重大な「土台」に位置づけられたことが挙げられる。つまり、そもそも組織に心理的安全性がなければ、成果を出すための他の特徴が活きないというわけだ。チームに心理的安全性がないと、メンバーは安心して意見を言えないため、アイデアや解決法が生まれず、問題解決までに時間がかかる。

 心理的安全性はチームで仕事をするにあたって必要不可欠な概念として、ビジネスパーソンにとってはすでに馴染み深い概念だ。ヌーラボが提唱するチームワークマネジメントでも、目的の共有、役割の明確化、コミュニケーション設計、リーダーシップの発揮を可能にする前提がこの心理的安全性になる。

心理的安全性を高める

心理的安全性が高いチームでは、メンバーが自由に意見を発言できるため、アイデアの質が向上し、問題解決のスピードも速くなります。多様な価値観を受け入れ尊重し合う文化が、チームの持続的な成長と成果につながります。(チームワークマネジメントの定義より引用)

【分析】犯人は「心理的安全性」の欠如。メンバーを無言にさせた3つの不安

 心理的安全性はそれ1冊で本ができるほどの大きなテーマである。また、心理的安全性のような概念は以前から存在しており、今でも課題になっているということは、そもそも実現が難しいということを意味する。ここでは今回の事例における課題を抽出しつつ、心理的安全性を確保するための手法の一例を披露していきたい。

・とにかくマネージャー同士で決定した事項が指示として落ちてくる感じ

マネージャーだけでやることを決めてしまい、チームメンバーには意思決定のプロセスが透明化されていない。経営陣やマネージャーが決定したことを各部門や従業員に指示していくのは会社組織として必要だが、これまでやったことのない今回のような部門・組織横断プロジェクトではマネージャーだけではなく、各メンバー同士が積極的に意見交換する環境が重要だったのではないか。

・異なる部門・組織のメンバーで問題点を指摘し合ったり、褒めあう文化がない

もともと日本の会社組織は対立を避ける傾向があり、議論を戦わせること自体が少ない。同じ部門や組織内でもそうなりがちなので、外部のパートナーと率直に意見交換する環境作りは難しい。組織が異なると、雰囲気や言葉の定義も違うので、相手と話していてもコンセンサスが取れているのか自信が持てない。普段、気軽に話し合う環境が整っていないと、お互いに問題点を指摘したり、メンバーを褒め合ったりするような環境も整っておらず、やりとりに壁を感じてしまう。

・会議は質疑応答もなく、参加者はいつも無言だ。

会議で発言がない理由はさまざまである。事例では、会議がマネージャーの独演会になっており、メンバーから意見を聞く「場」になっていない様子がうかがえる。その他、「なぜその決定になったか分からないのでコメントしにくい」は会議の運営に問題がありそうだし、「リアクションがもらえない」はメンバー同士の認識不足、「無知だと思われたくない」はチームメンバーがメンバー側も何も発言しないのが一番安全という意識が生まれてしまう。心理的安全性の欠如により、コミュニケーションの不全が起こっており、質疑応答や意見交換のない「さみしい組織」に陥ってしまうわけだ。

【解決提案】心理的安全性を「根性論」ではなく「仕組み」で構築する

心理的安全性の高い環境を構築すべく、リーダーシップや組織、メンタルなどさまざまな分野の研究や実践が行なわれているが、ここでは「仕組み作り」にフォーカスしたい。重要なのは、個人が勇気を振り絞らなくても、気軽に意見が言える仕組みを整えることだ。その土台となるのが、プロジェクト管理ツール「Backlog」のようなツールの活用と、運用を支える「バックログスイーパー」の存在である。具体的には、次の3つのアプローチが考えられる。

1.意思決定プロセスをオープン化し、意見を言いやすい雰囲気を構築する

 Backlogで意思決定のプロセスを透明化することだ。Backlogでは登録した課題に対して、コメントやリンクを付けられるので、メンバーは「なぜそうなったのか」の経緯を把握できる。また、Backlogの「ドキュメント」機能ではテキストと図を駆使して、決定事項やルールをまとめることができる。意思決定プロセスが明らかになれば、「無知だと思われたくない」という不安を抱くことなく、要点を押さえた質問や意見を言うことができる。

2.質問や報告が気軽に行なえるコミュニケーション環境を整える

心理的安全性の醸成には、普段からのコミュニケーションが重要だ。メンバーの人となりがわかり、お互いに意思疎通がとれていれば、信頼関係も生まれやすい。Backlogであれば、課題に対してコメントでリアクションを得ることができるほか、「スター」機能を利用すれば、相手のコメントに対して「読んだよ」というサインだけでなく、肯定されている安心感を与えることができる。各メンバーがこうした意思疎通をとることで、“発言しやすい空気”ができるはずだ。

3.バックログスイーパーを設置し、タスクの裏にある「詰まり」を解消する

本来バックログスイーパーは、タスクの登録や進捗チェックを通じてプロジェクトを円滑に運営する役割だが、心理的安全性の醸成においても大きな役割を果たす。運用の過程において、タスクの裏側にあるメンバーの困りごとや悩みを拾いあげることも多いからだ。「困ったらバックログスイーパーに相談できる」といった信頼関係が築ければ、チーム内の意見や不満を吸い上げ、チームの血流を良くすることが可能になる。

【まとめ】必要なのは「プロセスの透明化」と「ポジティブなフィードバック」

 Backlogによる意思決定のプロセスや決定事項が見える化され、発言しやすい空気が生まれ、気軽に相談できるバックログスイーパーがいれば、チームメンバーに信頼関係が醸成される。チーム内での情報が透明化され、ポジティブなフィードバックが行き交うようになれば、お互いに助け合う文化が醸成される。

 本来、心理的安全性が高い状態は、対人関係上のリスクを負ってまで意見を言い合える状態を指す。しかし、対立を避けたがる日本の組織においては、あえて「対人関係上のリスクを負ってまで」反論を言う人は少ない。しかし、「単に仲が良いだけの組織」と「心理的安全性が高い組織」の違いは、「目的のために厳しいことも言えるかどうか」にある。馴れ合いではなく、成果のための率直さを仕組みで担保すれば、十分に競争力を持つ組織になるわけだ。まずはBacklogで仕組み作りからスタートし、運用しながら、改善を進めていくのが重要だ。

チームワークマネジメントとは?

多様なメンバーが共通の目的達成のために助け合い、自律的に動けるチームを設計・運営する概念。チームの構造を見える化し、コミュニケーションを設計することで、チームメンバーが個々の能力を発揮しやすくし、全体の生産性向上と目標達成を目指す。

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