IDOM CaaS Technology×TTS×ソフトバンクの協業で、社会課題に新たな解決策を作る
“車が必要なのに乗れない”人を救う「ノレル」 IoT×AIが実現した新たな自動車サービス
2026年02月18日 11時00分更新
車載IoTの位置情報データ分析で「リスクを可能性に変える」
上述したノレルのスコアリングでは、職業や収入、経済状況、家族構成といった静的な属性情報(デモグラフィックデータ)だけでなく、サービスの継続利用状況、問い合わせ時のやり取り、さらに車両IoTデータといった多様なデータを細かく分析している。こうしたビッグデータ分析によって、従来の一般的なローン/リース審査よりも詳細にリスクを分析し、審査通過のハードルを引き下げているのだ。
「たとえば、これまでの審査では『業種』という大きな枠でひとくくりにされてきた方も、お仕事内容をより細かに見ていくと性質が異なるケースがあります。このように、お客さまデータのより正確な分析を行って“解像度”を高め、お支払いが完了できる、つまり相互に信頼し合えるお客さまであることをデータやAIで裏付けることで、より多くのお客さまの“車に乗れる”が実現できます」(ICT 中津川氏)
ノレルを通じて提供する車には、利用者の同意を得たうえで、位置情報を継続的に収集するIoTデバイスが搭載されている。ここから得られる行動データも、スコアリングの重要な要素になっているという。
「位置情報から車の利用状況を分析することで、スコアリングに活用しています。たとえば、毎日同じ時間帯に自宅と職場を往復する運転がメインの方は、支払能力が高く(貸倒れリスクが低く)、きちんとお支払いいただける確率が高い。一方で、深夜にランダムな場所へ出かけることが多い方は、リスクが高い。車の位置情報だけでも、そうした行動データとリスク傾向が読み取れます」(ICT 中津川氏)
ノレルが採用する車載IoTデバイスは、これまでも車載IoTデバイスの受託開発を多く手がけてきたTTS製だ。TTSのCEOを務める小海氏は、ノレル向けに開発した今回のデバイスは、「位置情報の取得/送信」機能に特化したことでコストを大幅に抑えられ、なおかつどんな車種にも簡単に取り付けることができると説明する。
「これまでは、カーリース会社様向けに、支払いが滞った場合に遠隔制御でエンジンがかからないようにする車載デバイスを開発していました。しかし、エンジン回路と接続しなければならないので取り付けに時間がかかり、デバイスのコストも高くなります。一方、今回のノレルの場合は、位置情報の取得だけができればよいので、電源につなぐだけで稼働するシンプルなデバイスになりました。どんな車種でも取り付けられますし、デバイスそのもののコストも従来の6分の1程度と、大幅に抑えられました」(TTS 小海氏)
“最長10年間/一括2000円/プリペイド”の1NCE SIMが実現を後押し
TTSがノレル向けに開発したデバイスは、車の電源が入ると自動的に起動し、位置情報を10秒に1回のペースで取得したうえで、クラウドに送信する。この送信で使うのが、ソフトバンクが取り扱う1NCE(ワンス)の低容量IoT向けモバイル回線だ。
1NCEを採用した理由について、小海氏はまず「コストが安く、将来の見通しも効くこと」を挙げた。プリペイド方式の1NCE SIMは、基本料一括2000円(税抜)とSIMカード代を支払って購入すると、最長10年間、累積通信容量500MB/SMS 250通に達するまで、追加コストなしで利用できる。
「車載デバイスはサブスクリプション契約でご提供しており、回線コストもTTS側で負担する形です。1NCEならば、そもそも回線コストが安いですし、毎月のコストが変動することがありませんから、ご提供する料金を抑えることができます」(TTS 小海氏)
そしてもうひとつ、小海氏が「当社のオペレーションにおいて、とても有効」だと語るのが、月額基本料が発生しないプリペイド型のSIM(モバイル回線)である点だ。
TTSでは、出荷するデバイスが正しく通信できる状態であることを確認するために、出荷前の全品検査を行っている。ここで月額方式のSIMを使うと、検査実施のタイミングから基本料が発生してしまうので、事前に検査してストックしておくことができない。大量の発注を受けてすぐに発送するために、出荷担当のチームが深夜まで検品とキッティングの作業に追われることもあった。
「プリペイド型で月額基本料がない1NCEならば、事前に検査を済ませておいても無駄なコストがかかりません。実際、一度に500台レベルの大量発注をいただくこともありますが、あらかじめ計画的に検査を済ませておけるので、無理なく翌日には発送できています。このことは、社内の出荷担当者からとても喜ばれていますね」(TTS 小海氏)
サービス提供拡大にはソフトバンクも協力、共に「社会課題の解決」を図る
ICTでは2025年10月、全国で自動車販売チェーンを展開するカーベルとの業務提携を発表した。カーベル加盟店で車両購入を希望する顧客のうち、一般的なローン審査では通過が難しい場合に、ノレルを通じて車の利用機会を提供する狙いだ。すでに200店舗ほどの加盟店で連携を開始しており、今後も段階的に拡大を進める。
この業務提携については、1NCEを取り扱うソフトバンクも「営業協力」という形で一役買ったという。単に1NCEのSIM/回線を提供するだけでなく、IoTパートナーによるソリューションの展開を支援することで、まさに「社会課題に、アンサーを。」という同社のスローガンを体現するかのような動きだ。
ICTでは今後も、ノレルのスコアリングをより精緻なものに磨き上げることで、利用者にベネフィットをもたらすサービスを目指していく。ICTの中津川氏は、ドライブレコーダーのような映像デバイスを搭載して細かな運転状況をスコアに反映させたり、スコアが十分に高い利用者の利用料を引き下げたり、といったアイデアを検討していきたいと話した。
「これまでの一般的な審査では見てもらえなかったような、たとえば『真面目な性格』や『人柄の良さ』といった人となりをどう判断していくのか。そこでは、これまであまり扱われてこなかった行動データが非常に重要だと考えています。データとAIをフル活用することで、われわれとお客さまの『信頼』をお互いに築いていけるような、そんな取り組みを進めていきたいですね」(ICT 中津川氏)









