重要なのは「IT部門」と「業務部門」が責任内で協働すること
市民開発を“シャドーIT”に堕とさないために ZOZOと三菱重工から学ぶ「ガバナンス」と「自律」の両立
2026年02月16日 07時00分更新
三菱重工:市民開発の起点となる「お試し環境」を独自構築
続いては、日本を代表する総合重工業メーカーである三菱重工の市民開発だ。同社で部門横断的にビジネスITの技術を届ける「DPI部」の中で、内省開発と市民開発の推進を担当する三宅英樹氏と岸田健氏が登壇した。
三菱重工では、各事業部門による「セルフ開発」を市民開発と呼び、「自分たちで作って、自分たちで使う」を活動のスローガンに掲げている。DPI部門が、市民開発を推進する中で大事にしているのは、「3つのステップ」である。それは、最初に「試用」してもらい、市民開発の価値を実感できたら「本番ドメイン」を立ち上げ、最終的に問題がなければ「本番運用」を開始するという流れだ。「この各段階でそれぞれの部隊と“合意”をとることが重要」だと岸田氏。
この取り組みのユニークな点は、試用のステップ向けにDPI部が独自の「お試し環境」を構築・運用していることだ。この環境でできることは、kintoneの学習スペースで「知る・学ぶ」こと、DPI部で作成した標準アプリを「使う」こと、開発スペースでアプリを「作る」こと、そして、コミュニティスペースで「話す」ことだ。
この市民開発の基点ともいえる場に、約2000人が参加してきたという。「すぐに本番運用を開始したいという人が一定数いるが、“一度作ってもらうこと”が大事」(岸田氏)
そして、お試し環境でkintoneアプリが作れるのは「作る」ためのスペースだけであり、市民開発に価値を感じてもらうことを主眼に、使える機能も制限している。その後の市民開発で使える機能も標準機能に絞っており、それで解決できない場合にはDPI部門が高度なアプリを開発する。市民開発はシンプルなアプリを中心とすることで、アプリの安定化やリスクと自律のバランスをとっている。
また、学習に関しては、Webで公開されているkintoneのTipsを集約するほか、手を動かしながら学べる動画教材もDPI部で展開している。市民開発者からの評判も良く、ある部門ではこの動画を基に自主的な勉強会が開かれるほど浸透しているという。
市民開発は、プロ開発から業務部門の開発に橋をかけること
最後に、サイボウズの倉林一範氏は、「市民開発はIT部門と業務部門がそれぞれの責任範囲で協働することが重要」だとまとめる。IT部門は、安全性を担保して、生産性を高められる市民開発の環境を整備する。一方で、業務部門はその環境のもとで、自らの業務を自らの手で改善していく。「プロ開発とは異なり、こと市民開発においては、IT部門は市民開発を促す立場。そして、現場の市民開発者は、ガバナンスの傘の下でルールに則り開発をする」と倉林氏。
なお、サイボウズでは、大企業向けユーザー会「kintone Enterprise Circle」で蓄積したノウハウや共通項をまとめた「市民開発ガイドライン」を公開中だ。ガイドラインでは、「ガバナンス」「環境」「実践コミュニティ」の3つの柱を軸に、市民開発を推進するための指針を示している。
・市民開発ガイドライン
https://pg.cybozu.co.jp/kintone-citizen_development_guideline-dl-application.html
最後に、ZOZOの新井氏は、「私もこのガイドラインの作成に協力する中で、先行企業でもまだまだ課題を抱えていると実感した。各社、よりガバナンスが効かせた自走型での市民開発を目指しているので、皆さんも自社流のガイドラインやルールを作って市民開発を進めて欲しい」とコメント。
三菱重工の岸田氏は、「効果的な市民開発には色々な障害が立ちはだかるが、諦めないことで新しい景色が見える。ぜひ、一緒に市民開発に取り組みましょう」と締めくくった。









