重要なのは「IT部門」と「業務部門」が責任内で協働すること
市民開発を“シャドーIT”に堕とさないために ZOZOと三菱重工から学ぶ「ガバナンス」と「自律」の両立
2026年02月16日 07時00分更新
IT人材が不足する中、「市民開発」への注目が高まっている。内製開発の一種だが、IT部門ではなく、現場の部門が自ら業務アプリを開発する点が特徴だ。
しかし、現場が自由に開発を進めると、IT部門が把握できない「シャドーIT」が発生する懸念がある。先行企業はこのガバナンスの課題をどう解決しているのか。
サイボウズは、2025年10月末、年次イベント「Cybozu Days 2025」を開催。ZOZOと三菱重工業(三菱重工)が登壇したセッションでは、kintone活用における「ガバナンス」と「自律」の両立について“実践例”が共有された。
ZOZO:3パターンの市民開発でガバナンスと自律をコントロール
まずは、ファッションEC「ZOZOTOWN」を運営するZOZOの事例だ。ZOZOのkintone活用はワークフローとしての利用がメインで、各種マスターや台帳系のアプリも運用している。IT統括本部の新井健太氏は、かつてはこれらのアプリをIT部門で集中管理していたと語る。
ZOZOの市民開発の出発点は、kintoneのシュシュッと作れる“ノーコードの強み”を広げて、「誰でも使える環境にしたい」という想いからだ。現場主導の業務改善でビジネスのスピードを上げるべく、頻繁にアップデートが必要なアプリを中心に、市民開発へ切り出していった。
現状、ZOZOでは20名前後の社員が市民開発に携わる。そして市民開発は、全社に影響ある仕組みやプロセス刷新を対象とするIT部門完全伴走の「新規PJ型」、既存アプリの保守を対象とするIT部門一部伴走の「メンテナンス型」、特定部門の業務改善を対象とする現場主導の「自由型」の3パターンに分かれる。
この中で、市民開発に挑戦しやすいのはメンテナンス型だ。「ゼロからのアプリ作成はさまざまなハードルがある。IT部門が作ったアプリを直すだけならば、インプットもリスクも最小限にでき、スモールスタートで市民開発を始められる」と新井氏。
ガバナンスのポイントは、3つのタイプによってルールの粒度を変えて、さらに明文化していることだ。一番ルールが厳しいのが新規PJ型であり、「スクラム開発に近い」(新井氏)という。同タイプで現在進行中なのが「営業の業務改善」のプロジェクトであり、過去には「情報資産管理」や「業務委託管理」なども対象になっている。
加えて新井氏は、「ルール策定をゴールにせず、“どうして設けられたのか”まで浸透させるのが、市民開発の重要要素」だと語る。例えば、「レコードのアクセス権でeveryoneに閲覧のチェックを入れない」というルールは、申請レコードが全員に見られてしまうからであり、守らないとどうなるかまでを共有する。
また、もうひとつのポイントとして、「責任範囲」をIT部門は“システム”、市民開発者は“業務”と明確に分けている。IT部門は伴走する際に、機密性・完全性・可用性を意識して、目的に則った挙動になっているかを保証する。一方の市民開発者は、業務に対してアプリが使いやすいか、運用が適切かを保証する。
業務を一番知っている市民開発者側に責任を持たせることで、「リリース後の効果的なアップデートにも期待できる」と新井氏。実際に、ISMS審査にて市民開発したアプリの利便性が評価され、現場に任せることの重要性を感じたという。










