片付けの専門家・西﨑彩智さんに聞く「片付けの始め方・続け方」で広がる人生の選択肢

文●源詩帆  編集/山野井春絵

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 片付けをした方がいいとはわかっていても、「きっかけがない」「時間に余裕ができたら」と、なかなか一歩目が踏み出せない人は少なくありません。

 前回の記事(シリーズ1/2)では、片付け事業を行う株式会社Homeport代表取締役の西﨑彩智さんに、ミドル世代女性が片付けに悩む理由、そして「片付けの先にある大切なこと」についてお話いただきました。今回は、片付けの習慣化、そこから広がる人生の選択肢について考えていきます。(シリーズ2/2)

いつまでも元気に片付けができるわけではない

「片づけたいのに行動できない」と感じているミドル世代が、実際に動き出すためにはどのような視点を持つべきか西﨑さんに伺いました。

「多くの方が『いつかきっかけが来るはず』『時間に余裕ができたらやろう』と考えていますが、いつまでも元気に片付けができる保証はありません。そもそも一生暇になることはないんです。子育て、仕事と家事の両立、親の介護と、常に何かに追われています。『暇になったらやろう』は幻想。今日の自分が一番若く、元気に動けます。

 また、去年の年末も『片付けよう』と思ったのに終わらなかった方も多いのではないでしょうか。年末年始というタイミングがあってもできなかったのなら、今年も同じことを繰り返すかもしれないですよね。全ての条件が揃うことはありません。タイミングを待っている間に時間は過ぎていきます。

 そして、親の介護や実家の片付けは想像以上に大変です。『お金で解決すればいい』という方もいますが、それでも相当な時間がかかります。

 私の講座の受講生さんで、お母さんが亡くなった時にすごく悲しかったのに、片付けに時間を取られすぎて悲しみより怒りが湧いてきたという方がいました。『お母さん、なんで片付けてくれなかったの?』という怒りが湧いた時に、『ちょっと待って、今のままじゃ自分も子どもに同じことをさせるんだ』と気づいたそうです。

 元気なうちに自分がどう家族にバトンを渡すかを常に考えてください。そうすれば自然と動き出せるはずです」

片付けはキッチンから。クローゼットは最後に!

 片づけを始める際、どこから取り組むべきか、逆にどこを避けるべきなのでしょうか。

 「片付けはキッチンからがおすすめです。賞味期限など数字で判断できるところから始めると、『こんなに溜め込んでたんだ』とわかりやすい。キッチンは進みが早いし、家族が気づいて褒めてくれます。成果が出ることで自信にもつながります。

 絶対にやめた方がいいのは、クローゼットから始めることです。クローゼットは自分の思いがたくさん乗っかっていて、エゴとの戦いになります。『高かったから』『これ昔よく着たな』『痩せたら着よう』と考えてしまう。痩せた時にちょっと時代遅れの服を着て嬉しいか、痩せたら痩せたご褒美で新しい服を買った方がよくないか、髪も肌の質もトレンドも変わっているのにそれでも着たいか、改めて考えてみてください。

 また服の場合、『好き』と『着る』は違います。好きだけど着ないなら、なぜ着ないのか。首が突っ張る、チクチクするなど、それが着ない理由、手放す理由なんです。

 そういったことを考えているとあっという間に時間が過ぎてしまい、『片付いている』ということを実感しにくくモチベーションが下がります。ですので、まずはキッチンから始めてくださいね」

「モチベーション」ではなく「習慣」でリバウンド回避

 片づけをすると決めた後、リバウンドしないためには、どのような行動や考え方が必要なのでしょうか。

 「リバウンドしないためには、毎日コツコツ片付けることが大事です。モチベーションは上げたり下げたりせず、淡々と習慣化する。仕組みの中に入れることが重要です。朝と夜だけ、数分でもいいから必ずやる。完璧主義ではなく完了主義(終わらせることに重点を置く考え)で取り組んでください。

 朝晩に片付けをすることには意味があります。朝、リビングから出る前に必ず振り向いて部屋を見てください。『ただいま』って帰ってきた時に快適そうか、気分はどうか、数時間先の自分と家族がどう思うかを考える。朝にはベッドメイクもおすすめです。疲れた体でベッドに入る時、整っているだけで気分がいいはずです。

 夜寝る時も同じです。朝『おはよう』って言う時の部屋の状況で、ご飯を作るテンションが全然違うはず。洗い物が残っていたり、物が散らばっていたりすると、ため息から1日が始まってしまう。今見えているものを片付けるだけでも心への影響は計り知れません。

 また、自分がどれぐらい家事に時間がかかるかを知っておくことも大切。見積もりを立てて組み合わせればいいだけなんです。朝の片付けにどれぐらい時間がかかったか測っておけば、逆算して何時に起きればいいかがわかります。

 そして、片付けをしながら『これから自分はどうしていきたいのだろう』と習慣的に考えることも重要です。例えば、もう子どもは独立したのに、いつまでも子どものものが捨てられず置きっぱなしということはありませんか。子どもが出て行った後の部屋をどうするか、家族で話し合ってみてください。私は『暮らしていない人のものは置かない』というのが基本ルールだとお伝えしています。

 持ち物はどんどん少なくしていくことを考え、人生の最後をどう締め括りたいかを考えることも重要です。これは、ミドル世代だから考えられること。70代になると友達がどんどんいなくなり、死がリアルすぎて怖くて考えられなくなります。まさにミドル世代のうちに日々こういう考えをまとめ、行動しておいた方がいいんです。そういったことを考えるクセをつけることもリバウンド回避につながります」

人生で一番若いのは今日。やりたいことはやればいい

 最後に、これから片付けやライフシフトを検討しているミドル世代の女性に伝えたいことを聞きました。

 「片付けたいと思うなら、まずはやってみてほしい。ライフシフトも同じです。やってみてうまくいかなければ、それは失敗ではなく学び。元の生活に戻ればそのありがたみもわかるし、うまくいけばそれはそれでいい、どっちもうまくいくんです。失うものは何もありません。

 私が48歳で起業しようと母に話した時、母は『さっちゃん、まだ若いじゃん。ママは78よ』って言ったんです。その時に、78歳から見れば48歳は若いんだと気づきました。今の私から見れば、48歳の私は若かった。でも48歳の時は30代の人が羨ましいと思ったし、30代の人は20代が良かったという。みんなこれをずっと言い続けてるんですよね。

 前回の記事でも言いましたが、今日が一番若いんです。そして、やらなかった後悔が後々一番ダメージが大きい。やった人にしか見えない景色は絶対にあるから、一番若い今、やりたいことをやってみて、と伝えたいです」

 日々何気なく行っている片付けも、意を決して取り組み始めた片付けも、すべて理想の自分に近づくための一歩。シリーズを通して、西﨑さんの話には、「片付け」の域を超え、「これからの生き方」を考える問いが散りばめられていました。

著書『人生が変わる片づけの習慣 片づけられなかった36人のビフォーアフター』(朝日新聞出版)。片付けで人生を変えた実例が詰まった一冊。

 

Profile:西﨑彩智

にしざき・さち/株式会社Homeport代表取締役。

自らの経験や片づけ代行の仕事から培った独自の片づけメソッドをもとに、2015年9月「お片づけ習慣化コンサルタント」として福岡で起業。家を丸ごと45日間で片づける「家庭力アッププロジェクト®」を2018年1月からスタート。2019年2月に法人化し、2021年11月に東京・港区に東京オフィスを開所する。2021年9月には一般社団法人 日本お片づけ教育推進協議会を設立し、代表取締役に就任。2023年5月にはアメリカでも講座を開催するなど国内外の受講生は2026年1月現在3,600人を超え、企業や学校での講演も多数開催。著書に『部屋がゴチャゴチャで、毎日ヘトヘトなんですが、二度と散らからない片づけのコツ、教えてください!』(すばる舎)や『人生が変わる片づけの習慣』(朝日新聞出版)などがある。


西﨑さんのHPはこちら。
西﨑さんのInstagramはこちら。

 

この記事の編集者は以下の記事もオススメしています

過去記事アーカイブ

2026年
01月
02月
2025年
01月
02月
03月
04月
05月
06月
07月
08月
09月
10月
11月
12月
2024年
07月
08月
09月
10月
11月
12月
2023年
07月
09月
10月
11月
12月