「パソコンが買えない」2026年、何が起きてる? これからどうなっちゃうの? 第2回
【パソコンが買えない】本当は起きていないメモリー不足!? それでもPC向けメモリーの高騰が今年末頃まで続くと予想する理由
2026年01月24日 08時30分更新
メモリー価格の上昇に始まり、各PCメーカーが受注停止を公表するなど、一般メディアなどでも「PCが買えなくなるのでは?」「今買わないとヤバいかも」といった報道がなされている昨今。その背景に何が生じているのか、PC業界の識者にそれぞれの視点から分析いただいた。
値上がりが進むPCとPC用メモリー
OpenAIとSamsung/SK Hynixの協業発表が発端とされるが……?
昨年11月頃に端を発したメモリー不足(「PC値上がり始まる メモリ、SSD高騰で」)。DDR5 DIMMのみならずGDDR7やLPDDR5、ついにはSSDにまでその影響は及んでおり、2025年中はちょっとした騒ぎになっていたわけだが(「PCメーカー公式アカウント「なるべくお早目の購入をオススメします」 パーツ高騰時代本格化か」)、2026年になっても収束する兆しは見えない。
実際のところ、「何がキッカケでこのメモリー不足が生じたのか」の根本原因は、まだ因果関係が完全に証明されてはいない。ただ、非常に怪しいとされているのが2025年10月3日に発表された、OpenAIとSamsung/SK Hynixとの協業の発表である(https://openai.com/index/samsung-and-sk-join-stargate/)。
この協業では、SamsungとSK Hynixが生産するDRAMについて、両社合計で毎月ウェハ90万枚分を独占的にOpenAIに供給することが決まったとしている。ちなみにいきなり11月から90万枚をOpenAIに納入する訳ではなく、「targeting 900,000 DRAM wafer starts per month」とあるように最初は少量の納入であり、次第に枚数を増やして最終的に毎月90万枚のウェハ相当分を納入するという話である。
では、これがどの程度の枚数か? という話だが、先端プロセスについて言えばSamsungの1c nm DRAMは2026年末で20万枚/月、SK Hynixの1c nm DRAMも月産60万枚強の生産量を予定している。つまり両社の先端プロセスのDRAMウェハをほぼ全量をOpenAIが持っていく計算だ。
両社ともに更に生産能力を増強する予定なので、おそらく2027年中には両社あわせて90万枚/月を実現可能になるだろう。端的に言えばこの報道を受けて、さまざまなメーカーが少しでも自社利用分を確保すべく、先行して大量の契約をMicronなどと行ない、結果としてPCマーケットに流れる分がほぼなくなってしまったというのが、おそらくは現状のメモリー不足の実情だろう。
PC用/グラボ用/GPU用でDRAMの作り分けをしている
製造能力の大半がGPU用に回されると、誰かが「予測した」
もう少しかみ砕いて説明しよう。たとえばSK Hynixだと、2021年7月に1a nm、2023年5月に1b nm、2025年5月に1c nmを利用したDRAM製品をそれぞれ発表している。
「1a」→「1b」→「1c」の順に少しずつ微細化が進み、これにともなって記憶密度の向上や動作速度の向上、省電力化などが実現されている。
といっても、DDR5-4800であれば1a/1b/1c nmのどの世代のDRAMでも実装できる。ただ1b/1cの方が1aを使ったものよりも原価が低く、かつ消費電力も少なくできるし、Overclock時のヘッドルームも大きい。逆に最先端の、たとえばDDR5-6400やHBM3e、GDDR7などは1a nmだと性能的に間に合わないので、最低でも1b nm、できれば1c nmが望ましいし、今後登場するDDR5-8000やHBM4、LPDDR6Xなどは1c nmでの製造が前提になっていると考えられる。
このDRAM技術そのものは、DDR/LPDDR/GDDR/HBMですべて共通であるが、仕様(動作周波数・動作電圧・アクセス粒度・I/F)は異なっている。SK Hynixであれば、現在同社の利川キャンパスにあるM14 FabとM16 Fabで1c nmの製造が行なわれており(まずM16 Fabで1c nmの製造がスタートし、次いでM14 Fabが1b nmから1c nmに転換した)、これに加え清州キャンパスのM15 Fab(ここは本来NANDの製造を担っている)に追加されたM15X FabでHBMの製造をスタートすべく準備中。ここもおそらく1c nmでの製造拠点になる。さらに2027年3月には龍仁キャンパスで新たなFabが製造を開始される予定とされる。
ただ現状で言えばM14 FabとM16 Fabで、すべての1c nm向けの需要を担う必要がある。“通常であれば”なので「HBM3eとHBM4を10%、GDDRを10%、DDR5を60%、LPDDR6を20%」などと比率を決めて、それぞれのウェハをM14 FabとM16 Fabにおいて1c nmで製造することになる訳だが、今回のOpenAIとの契約で、HBM3eやHBM4をかなり多めの比率で製造する必要が生じたと『考えられた』わけだ。
これはつまり、DDR5やそのほかの生産が今後大幅に滞るであろうと『予測される』ことになる。
そこで、本当に注文を受けつけてくれなくなる前に、大量の発注を先行してすることで、少しでも自社利用分を確保したいというベンダーが続出することになった。そしてSamsungとSK HynixはそもそもOpenAIとの契約で生産量のかなりの部分を持ってかれるから、そうそう注文を受ける余力はない。となると残るDRAMベンダーはMicronであり、この結果MicronがCrucial事業をたたまざるを得なくなる事態に追い込まれたというわけだ。













