業務を変えるkintoneユーザー事例 第298回
中断したDXプロジェクトを“小さな業務改善アプリ”で再始動
PCに行列ができる、旧態依然な業務にサヨナラを kintoneで年2546時間の残業を削った日本海ガス
2025年11月13日 09時00分更新
通常業務の逼迫で中断するプロジェクト、“小さな業務改善アプリ”で再始動
しかし、プロジェクトは、すぐに壁にぶつかる。通常業務の多忙さゆえに、シンプルにプロジェクトが進まなかったのだ。徐々に、メンバーである後輩たちの心も折れていく。頓挫の危機に瀕するが、松井氏は諦めなかった。
とはいえプロジェクトの進め方に、工夫が足りなかったと反省する松井氏。まずは、本格的な変革のための時間を生み出す必要があった。そこで、日々の業務に潜む「ムダ」を見直し、“小さな業務改善アプリ群”を作成した。
例えば、「訪問前の準備時間」の削減だ。以前は基幹システムや商談管理、地図と、複数システムの情報を取得する必要があった。今では、スマートフォンでアプリに顧客名を入力するだけで、必要な情報が集まり、道案内まで始まる。
何度も発生していた「多重入力」も、kintoneに一度入力するだけでデータが自動転記される仕組みで撲滅。不透明だった作業負荷の偏りは、作業負荷係数を考慮した「作業負荷ひっ迫ウォッチダッシュボード」によって平準化を促した。
小さなアプリたちで生まれた時間と余裕が、一度は離れたメンバーたちを呼び戻した。
こうしてプロジェクトは再び動き出し、本丸である販売管理のkintone化に着手。社員だけで高額なパッケージシステムに匹敵する販売管理アプリを作り上げた。
各自のパソコンから、商談管理から見積、受発注、仕入れ、売上、入金消込まで一気通貫で行えるようになり、当たり前だったPCへの行列はなくなった。顧客情報や単価マスターを自動連係することで、店舗間の情報の整合性も確保した。
駄目押しは、会議資料作成の自動化だ。これまで同業務は、日報からExcelへの転記を繰り返し、長くて1週間も要していたという。それが今や、商談結果をkintoneに入力するだけで、あとは自動で分析・集計され、作業時間は実質ゼロになっている。
さらに、ダッシュボードを見れば、売れ筋の動向などをリアルタイムで把握でき、販売戦略の変更を即時に決断できる。ミッションのひとつだったデータドリブンまで実現した。
こうして、業務改善アプリ群や販売管理のkintone化、会議資料作成の自動化によって、1日3分の残業削減の目標を達成。最終的には、1日11分となる年間「2546時間の残業削減」にまで到達した。こうして大きな成果を生み出したことで、グループ全体にkintoneの評判が広がり、2023年には10名だったkintoneのユーザー数も、今や250名を超えている。
松井氏は、「プロジェクトは何度も何度も壁にぶち当たりました。しかし、kintoneの柔軟な可能性は、プロジェクトのいかなる変更にも対応する革新そのもの。仲間たちが地方の片隅で、仕事の常識を、会社の常識を大きく変えるに至ったのです」と締めくくった。

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