業務を変えるkintoneユーザー事例 第298回
中断したDXプロジェクトを“小さな業務改善アプリ”で再始動
PCに行列ができる、旧態依然な業務にサヨナラを kintoneで年2546時間の残業を削った日本海ガス
2025年11月13日 09時00分更新
店舗に1台のPCに日々並ぶことが「当たり前」になっていた子会社のDX化プロジェクト。通常業務に追われて一度は中断するものの、“小さな業務改善アプリ群”を作ることで再始動する。
サイボウズの年次イベント「Cybozu Days 2025」において、この1年で最も優れたkintone事例を決める「kintone AWARD 2025」が開催された。
2番手に登壇した日本海ガス絆ホールディングスグループの松井義行氏は、子会社の旧態依然な業務の変革からグループ全体へと広がった、kintone活用の歩みについて語った。
1台の販売管理システムに順番待ちするのが“当たり前”の日々
日本海ガス絆ホールディングスグループは、富山県と石川県に事業を展開する、総合エネルギーグループである。グループ15社で、都市ガス・LPガスの供給・販売といったエネルギー事業からインフラ整備事業、トータルライフ事業まで、多角的にサービスを展開している。
同グループのIT整備や業務改善を担うのが、松井氏が所属する「DX推進部」だ。2023年に発足しているが、「同部への社内の期待は想定を遥かに超えていた」(松井氏)という。
上層部からは「ペーパーレスにしろ」「全部AIに任せろ」「クラウドに移行しろ」と矢継ぎ早にミッションが課せられ、社員たちからは、「ログインできない」「LANケーブルはどこ」とあらゆるお願いが飛んでくる。「極めつけは『延長コード持ってきて』と言われる始末です」(松井氏)
こうしたミッションのひとつに、グループ内で器具販売や修理、点検サービスを手掛ける「モット日本海ガス」の変革があった。同社は、旧態依然とした業務の「当たり前」を変えられずにいた。
販売管理システムは各店舗に1台ずつ設置されているのみで、ネットワーク接続すらされていない。その結果、システム利用のための「順番待ちの行列」が日常的に発生。さらに、販売単価などの登録も店舗ごとにバラバラで、データを集約する際には膨大な手作業を必要とする。
DX推進部はこの深刻な状況に対して、システムのリプレイスを提案。しかし、上層部はコストが高すぎると一蹴する。かといえば、その翌日には「松井、ダッシュボードをモニタリングしてデータドリブンするぞ」と、コストの話を忘れたかのような高度な要求が来る。
延長コードの購入といった雑務とデータドリブンという高度な要求に日々頭を悩ませながら、モット日本海ガスの改善は停滞した。
説得の決め手は、「“1日3分”残業を削減できればペイできる」
そんなある日、松井氏の目に留まったのが、2年前にノベルティでもらったkintoneの“お昼寝まくら”だった。松井氏が、「kintoneならできるかも」とひらめいたことで、止まっていた時計の針が動き始めた。
ここから、上層部への説得が始まる。第一の矢として「ライバルたちもみんなkintoneを使ってますよ」、第二の矢として「全部自動で、データドリブンできますよ」をはなつ。しかし、上層部の心のゴールネットを揺らしたのは、「kintoneのCM、ご存知ですよね。言われちゃいますよ。うちの店長って豊川悦司みたいって」だったという。
残る壁はコストだ。月額1800円の使用料を説明するために、松井氏はロジックを組み立てる。1800円は1日あたりに換算すればわずか90円。これを残業時間に換算すれば3分程度。「1日3分の残業を削減できれば、ライセンス料はペイできる。楽勝でしょう」(松井氏)と経営層を説き伏せた。
こうして遂に、プロジェクトはスタート。ゴールは販売管理システムを変え、営業状況をリアルタイムで把握できるようにし、PCに行列する日常を変えることだ。

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