福岡大学・縄田氏が語る「成果を生むチームの本質」とは
“リモートチーム=低パフォーマンス”ではない 社会心理学から知るチームワークの高め方
「集団がうまくいかないのは“デフォルト”。負の側面を乗り越え、優れたチームへとマネジメントしていく必要がある」―― と語るのは、福岡大学の縄田健悟氏だ。現在、集団が性質として抱える難しさに加え、リモートワークの普及や雇用の多様化によって、「チームワークのあり方」が問われている。
ヌーラボが開催した「Nulab Conference 2025」における、縄田氏のセッションでは、チームワーク研究の視点から、成果を生むチームの本質について語られた。
集団の“負の側面”と“時代変化”を前に、問われるチームワークのカタチ
まず改めて、現代においてチームワークが求められる背景について説明された。
社会心理学の集団研究によれば、集団がうまくいかないことは、むしろ“デフォルト”だという。賢い人が集まっても愚かな判断をしてしまう「集団浅慮」、ひとつの課題を複数人で取り組むと本来の力を発揮できない「社会的手抜き」、集団よりも一人ずつアイデアを出した方がましな「ブレスト」と、集団には様々な負の側面がある。これを乗り越えるために、チームワークという“工夫”が必要になる。
加えて、組織環境も大きく変化している。ひとつは、「リモート化とDX化」であり、いかにテレワーク下で円滑なチームをつくるかが課題となっている。もうひとつは、多様性の時代を迎えたことであり、これまで“同質”だからこそうまくいっていたことも通じにくくなっている。「時代変化に適用したチームワークのカタチが求められるようになってきた」(縄田氏)
チームを“チームたらしめる”4要素と行動原則
では、そもそもチームとは何なのか。
縄田氏は、チームが機能するのに最低限必要な4つの要素を挙げる。まず、チームはある課題を達成するための集団であるため、「目標共有」が根幹をなす。加えて、互いが依存関係にあり協力し合う「相互協力」、各メンバーに果たすべき役割が割り振られている「役割分担」、そして構成員とそれ以外との境界が明瞭である「成員性」の4つが、“チームをチームたらしめる”要素だという。
「逆にいうと、共通の目的を持たず、メンバー同士が協力し合わず、各自が適切な役割を意識せず、誰がメンバーか分からないというチームは、うまくいかない」(縄田氏)
続いて、チームワークとはどんな行動を指すのか。
研究によって様々な分類方法があるが、縄田氏が紹介したのがルソーらによるモデルだ。同モデルにおいてチームワークの行動は、「課題遂行的な側面」と「対人関係的な側面」の2つに分かれる。「つまり、チームワークは、仕事をこなすためにパフォーマンスを上げようとする側面と、円満な対人関係を維持していこうという側面がある」と縄田氏。
ひとつ目の課題遂行的な側面は、いわゆる「PDCA」が当てはまる。チームで成果を上げるためには、ミッションの分析や目標の明確化、計画策定などで業務遂行の「準備(Plan)」をした後に、コラボレーションや情報交換をしながら業務を「協働(Do)」する。そして業務が上手くいっているか「査定(Check)」して、バックアップやコーチングなどで「適応・調整(Action)」するというサイクルを回す。
もうひとつの対人関係的な側面では、メンバーの精神的なサポートおよび、対立が生じた場合に調整・処理することで、人間関係を構築する。




