『トップ5%』シリーズの越川氏が語る、チーム・イノベーションのつくり方
できるチームで7.5倍使われる“声掛け”とは? 17万人のAI分析からわかったリーダーの勘所
成果を出し続けているチームリーダーの仕草を分析した結果、「声」「拍手」「態度」「うなずき」の中で大きかったものは何か――。
答えは「うなずき」であり、“4.5cm~6.0cm”深かったという。このようなできるチームやリーダーの習慣を『トップ5%』シリーズで明らかにしているのが、クロスリバーの代表取締役社長である越川慎司氏だ。
ヌーラボが開催した「Nulab Conference 2025」における、同氏のセッションでは、17万人の働き方データの分析やアンケート調査の結果を交えながら、すぐに実践できるチームリーダーの勘所について語られた。
成果を出し続けるチームで多い“声掛け”とは?
冒頭、越川氏は、「チームは何のためにあるか」と問いかける。答えは、「目標を達成するためだけに存在する」だ。仲良くしたり、助け合ったり、切磋琢磨したりするのは、すべて目標を達成するための手段に過ぎないという。
それでは、どのようなチームが目標を達成しているのか。データにみるトップ5%のチームは、業種や業態、企業規模は関係なく、例えエースが抜けても、人手不足でも成果を出し続けている。
越川氏が立ち上げたクロスリバーは、17万人の働き方をAI分析することで、トップ5%のチームやリーダーの共通点を見出し、それを基にコンサルティングを手掛けてきた。冒頭のトップ5%のリーダーは、深くうなずくというのもそのひとつだ。では、なぜ深くうなずくのか。
その答えは、20代・30代の日本のビジネスパーソン2万3000人に対する調査結果にある。同調査にて、上司から掛けられてモチベーションが下がる言葉として断トツ1位だったのは、「最近どう?」だった。
越川氏は、この声掛けが駄目な理由を2つ挙げる。ひとつは、若手との関係性が築けていないと、何について聞かれているかさっぱり分からないこと。そして、若手に興味がなく、適当に声をかけていると感じさせてしまうことだ。
「モチベーションは、チームマネジメントを組成する上で重要なエネルギー源。自分に対して興味を持ってくれているかどうかがすべて」と越川氏。だからこそ、トップ5%のリーダーは、興味を持っていると知らせるために、深くうなずくのだ。
さらに、トップ5%のリーダーは、「僕は土日疲れていたから、DAZNでサッカー見ていたのだけれど、君はどう?」といった形で、まず自分から“腹を割って”話すことで、相手の心を開く。この「返報性の原理」が、日本社会では非常に効果的だという。
続いては、トップ5%のチームにおいて、最も使われている“声掛け”は何かという問いだ。会場には「困ってない?」「元気ですか?」「今ちょっといいですか?」「大丈夫ですか?」の4つが提示された。
答えは―― 「今ちょっといいですか?」だ。上手くいっていないチームの7.5倍、この声掛けが使われ、さらにどんなに忙しい中でも「もちろんです」と返答する。
「優秀なチームは、反応と決定を分ける。反応はいつも『もちろん』であり、反対意見が出てもうなずく。ただし、それを採用(決定)するかどうか別。『忙しいからちょっと無理』と言われたら、声がかからなくなる」(越川氏)
これは、トラブル対応においても重要だ。問題発生時には、2時間以内に正しい対応ができないと、全体の対応時間が3倍以上に膨れ上がってしまうという。「トラブルの煙が発生する時点で、キャッチできる(話しかけやすい)状態を保たなければならない」と越川氏。
実際に、トップ5%のリーダーは「今ちょっといいですか?」を1週間で「平均4.5回」言われているが、下位20%のリーダーは「平均0.25回」に留まる。「皆さんも、今ちょっといいですか?と言われるにはどうしたらよいかを考えて欲しい」(越川氏)





