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ゼンハイザー、HD 650の思想を引き継いだHi-Fiチューニングのワイヤレスヘッドホン「HDB 630」を発表

2025年10月08日 08時10分更新

文● HK 編集●ASCII

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SENHEISER HDB 630

HDB 630

 Sonova Consumer Hearing Japanは10月8日、ゼンハイザーブランドのワイヤレスヘッドホンの新製品「HDB 630」を発表した。「HD 800」シリーズに象徴される、同社のハイエンド有線モデルの系譜に連なる製品。MOMENTUMシリーズの上位に位置づけられ、オーディオ愛好家に向けた高音質を追求したモデルとなる。

SENHEISER HDB 630

おむすび型のケースを同梱

 音質責任者Johann Evanno氏は「どこへ行っても、どんな瞬間も、あなたが愛してやまないピュアなオーディオファイル・サウンドをワイヤレスの枠を超えて」提供する製品だ」と語り、ワイヤレスの限界を解き放ったサウンドの実現を目指したとする。象徴的な「600番台」を冠したワイヤレスヘッドホンは、ゼンハイザーにとっても大きな挑戦であるとしており、周波数特性も高域や低域を強調したV字型のカーブではなく、オーディオ愛好家に向けて開発した「HD 650」や「HD 600」に近いHi-Fi的なカーブにしている。

SENHEISER HDB 630

高域と低域を持ち上げたV字型カーブのMOMENTUM 4と比較すると低域と高域を抑えたよりフラットな特性になっていることがわかる。HD 650と比べると高域の特性が近く、密閉型ということもあってか、低域が持ち上がっていることがわかる。

SENHEISER HDB 630

MOMENTUM 4とHDB 630、レザー調のヘッドバンドを用いるなど、ファブリック系の素材をあしらったMOMENTUM 4と比べるとストイックな印象を与える外観だ。

SENHEISER HDB 630

こちらはHDシリーズの「HD 650」と「HD 600」

 42mmトランスデューサーと新開発アコースティックシステムを採用。高域の空気感、立体的な中域、力強い低域が特徴。高域の広がりについては、空気の流れを阻害しない新しいダストカバーデザイン、ボーカルの艶かしさ、芳醇さ、立体感のある音の再現に重要な中域はマグネットホールによってチューンナップ。DSP処理と合わせてリッチな中域の再現に寄与する。ドライバーの裏側に来るバックボリュームを最適化して、力強くキレのある低域を再現するとともに、同じパワーで効率よく振動板を鳴らすことでバッテリー消費の低減。また、形状と素材を検討して改良したイヤーカップなども備えている。

SENHEISER HDB 630

分解図、大きく4つのポイントを改良している。

SENHEISER HDB 630

内側のダストカバーはわかりやすくL/Rがわかるようになっている。

 帯域はMOMENTUM 4よりも81%広く、40kHzまでの有線再生に対応する。Bluetooth伝送では96kHz/24bitをサ ポートし、USB-C接続でもハイレゾ再生が可能だ。

SENHEISER HDB 630

Bluetooth、USB-C、アナログ(A/D変換あり)の3種類の接続に対応している。

 付属のUSB-Cドングル「BTD 700」により、多くのユーザーがワイヤレスでのハイレゾ再生(aptX Adaptiveの96kHz/24bit)を体験可能。さらにANC(ノイズキャンセリング)と音質用に別DSPを搭載し、ノイズ低減用の処理が音質に影響を与えないようにしている。細かな音質調整ができるパラメトリックEQを備えるほか、定位感を改善するクロスフィード機能によって、スピーカー再生用にミックスした古い音源も自然な響きで再生できる。

 周波数特性は6Hz〜40kHz(USB-C接続時)で、感度は105dB SPL(1kHz)、重量は約311g。Bluetooth 5.2準拠でSBC、AAC、aptX、aptX Adaptive、aptX HDに対応。

SENHEISER HDB 630

ハイレゾのワイヤレス伝送ができるBTD 700が付属する。

 バッテリーの連続再生時間は最大60時間(ハイレゾ+ANCオンで45時間)。500回の充放電後も80%の容量を維持するなど、長期使用を前提とした設計も特徴だ。ヘッドバンドには日本製の素材を採用し、耐久性と快適性も確保している。価格は9万5700円。発売は10月21日だ。

有線接続で聴いた印象はかなりHD 650に近い

 簡単だが試聴する機会もあった。DAC内蔵のヘッドホンアンプ「HDV 820」を通じてCDの音を聴いた印象は、音色の表現、ディティールの分離などが非常に「HD 650」に近い。華やかでワイドレンジ。解像感が高くディティールや息づかいを感じ取りやすい点が好印象だった。密閉型とセミオープン型という違いはあるが、開放的な空間表現でこもり感もない。「HD 650」に迫ることを目標にしたというのもなるほどと納得できる。

 本機は630という型番だが、「HD 600」「HDB 630」「HD 650」と比較して聞くと、解像感や抜け感(分離の良さ)といった部分で、型番の大小に呼応して音質が良くなっていく感じがあって面白かった。ゼンハイザーの音質がトータルでしっかり管理されていると実感できた部分でもある。

 なお、説明によると、アナログ接続で再生した場合も再生時にはA/D変換→D/A変換の処理が入るとのこと。オーディオ再生時に使用するアンプなどについては不明(SoC内蔵のものをそのまま使っている可能性もある)だが、パラメトリックEQの設定などはBluetooth SoCのフラッシュメモリーに記録する形のため、スマホと接続しない場合でも反映されるとのことだ。

 印象としては有線接続の音のほうが、Bluetooth再生よりもかなりいい。伝送時の圧縮とデコード処理が影響を与えているのだろう。とはいえ、逆の見方をすればこうしたちょっとした違いにも鋭敏に反応できるのがこのヘッドホンの優れた点であるとも言える。BTD 700の同梱によって、aptX Adaptiveの伝送に対応していないスマホやPCを使っている人でも手軽にハイレゾワイヤレスの伝送ができる点はいいポイントだろう。

 市場のワイヤレスヘッドホンはオーディオメーカーの高級機でも、コンシューマーの音の好みを反映して低域や高域の強調感があるものが多い。その中であえてオーディオ愛好家向けのHi-Fiチューニングをうたってきたのは興味深いところだ。

 Bluetoothヘッドホンでバッテリーを長持ちさせるためにはドライバーの感度を上げることも必要になるが、音質面での悪影響も出やすくなる面もある。その点、ゼンハイザーのドライバーは軽く動きピッタリ止まるため、感度を上げても悪影響が出にくいのだという。こういったオーディオ機器としての基礎体力の高さも、本機のポイントだ。

 少し高価で手が出しにくいと感じる面もあるが、「ゼンハイザーのサウンドが好き」で、「その音をワイヤレス環境でも楽しみたい」という人は注目してほしい製品だ。

SENHEISER HDB 630

MOMENTUM 4とHD 650のいいところどりをしたと説明

SENHEISER HDB 630

アプリ画面。マイサウンドからEQをカスタマイズしたり、クロスフィードのON/OFFの切り替えができる。

SENHEISER HDB 630

パラメトリックEQで細かな音質調整ができる。使い勝手も考えられていて、面白いのは、EQの適用前と適用後で音がどう変わるか、A/Bテストができる点だ。

SENHEISER HDB 630

ハウジングはタッチコントロールにも対応する。

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