年収の壁が103万円から「160万円」に拡大、学生アルバイト向けの新制度も
2025年の年末調整改正、40~50代社員と企業は要注意 “駆け込み訂正”の懸念も
2025年10月06日 09時00分更新
大切なのは「控除」を考えるきっかけを提供すること
セミナーでは、参加した労務担当者から個別の質問も投げかけられた。
まずは「『大学生の子どもや扶養範囲で働くパートは、何万円まで働くのがベストか』と従業員に聞かれた場合、どう答えたらよいか」という質問だ。
辻氏は「社会保険次第で大きく変わる」と答えた。社会保険がかかってもよければ、大学世代の子は「150万円まで」、パートで働く家族は「160万円まで」が、控除を満額で受けられる金額となる。自身で社会保険を払いたくない場合は、両者ともに「130万円まで」が壁になる。
続いて「特定親族特別控除について、どう情報提供や注意喚起を行うべきか」という質問だ。
これに対しては、特定親族特別控除における以下4つの注意点が共有された。
1.年の途中の給与計算では原則として控除が反映されず、年末調整で一括控除される
2.給与収入だけではなく、給与以外の所得(事業、雑所得など)がある場合、「合計所得金額」で判定する
3.「特定親族特別控除申告書」の提出が必須であり、「合計所得金額の見積額」を正確に記入して、対応する控除額を記入する
4.その年の12月31日時点で19歳以上23歳未満の親族のみが対象
なお、freee人事労務では、これらの判定はシステム側で自動判定・対応するため、従業員が意識することなく入力できるという。
最後に「年末調整の訂正作業が発生した場合、いつまでであれば間に合うのか」という質問だ。
国税庁は、従業員に源泉徴収票を交付する翌年1月31日までは、やり直しが可能と示している。「ただ実際は、1月31日に源泉徴収票を交付することはなく、その前に法定調書の提出が終わっているのが普通。各市区町村への源泉徴収票の提出も1月上旬から中旬にする企業が多く、その段階での訂正は難しい」と辻氏。
そのため「会社側で、“ここまであれば訂正できる”という期限を決め、従業員に周知して、それを越えた場合には確定申告で対応してもらうのが一番良い」と回答した。
辻氏は、2025年の年末調整において何より大切な点は、「従業員に家族の収入で控除額が変わるということを認識してもらい、対象になるのでは、と立ち止まって考えるきっかけを提供すること。何度も年末調整をやり直すのはとても大変なので、最初の段階で正確な申告がもらえるよう、アナウンスして欲しい」と呼びかけた。


