年収の壁が103万円から「160万円」に拡大、学生アルバイト向けの新制度も
2025年の年末調整改正、40~50代社員と企業は要注意 “駆け込み訂正”の懸念も
2025年10月06日 09時00分更新
所得の見込みズレで“駆け込み訂正”が多発する恐れ
このような改正によって、年末調整の実務はどう変わるのか。
まず、年末調整を紙で運用する企業は、「申告書類の様式変更」を確認する必要がある。新設された「特定親族特別控除」を含めて、1枚で「基礎控除」「配偶者控除等」「所得金額調整控除」の4つを申告する様式に変わった。「書面が複雑化したため、誤記のリスクが高まる。記入例を交えて社員に説明するなど、細かな配慮が必要になる」と辻氏。
加えて、改正後の控除額に基づいて、還付追徴額を正しく計算する必要もある。
そして、「今年の年末調整で最も大変」だと辻氏が語るのが、社員に対する「扶養控除と特定親族特別控除の周知」である。年収の壁の変更や特定親族特別控除の新設に伴い、これまで扶養の対象とすることを諦めていた親族でも、申告できるようになる可能性があるからだ。
特に、大学生の親世代にあたる40~50代の社員がいる企業は、段階的に控除額が変わる特定親族特別控除の“見込みズレ”で、年末調整の締め切り直前での訂正作業が多発する恐れがある。「大学生の子どもがスキマバイトなどで年末ギリギリまで働いて、給与収入が増えてしまうことが想定される。その場合、正しい所得を労務担当者に再申告し、還付追微額の計算をやり直さなければならない」(辻氏)
そのため、申告する従業員による「子どもの給与収入の見積り」が重要になる。会社の決めた申告書の徴収日にあわせて、12月までの勤務予定表も参考にしながら判定しなければならない。また、特定親族扶養控除は、居住者に限定されていない点も注意が必要だ。
「結果として、少なく源泉を納付してしまった場合に“ペナルティ”があるかという質問もよく受けるが、従業員の申告書により控除が過大だった場合は、不納付加算税の対象にはならないと明確化されている」(辻氏)
なお、労務管理や年末調整に特化したシステムで電子化をしていれば、申告書類の様式変更や還付追徴額の計算などを気にする必要がなくなる。一方で、「小さな企業や労務担当者が抵抗する企業など、電子化できていない企業はまだまだ多い」(辻氏)という。
イベントを主催したフリーが提供する「freee人事労務」では、2025年版の年末調整機能(10月中に提供予定)にて、2025年度の税制改正にすべて対応。労務担当者の従業員への周知を支援するような施策も展開予定だ。加えて、「年末調整を、もっと『ラク』で『安心』に。」をコンセプトに新機能を提供する。
目玉となる新機能が「AI年末調整」だ。従業員が生命保険料控除や住宅ローン控除、源泉徴収票などの書類を撮影・アップロードすると、AI-OCRが書類を読み取り、情報を自動入力する。AIが誤りも指摘してくれて、従業員の手間だけではなく、労務担当者の確認作業も減らせる機能である。
XMLファイル(電子的控除証明書)への対応も拡充している。2024年の生命保険料控除に続き、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除にも対応。その他にも、「団体保険」を管理者が一括でインポートできる機能や従業員ポータルに入力依頼やリマインドを知らせる機能なども追加している。




