Copilot+ PCの登場とともに注目を集める存在になっているクアルコムのSnapdragon Xシリーズ。その実力を検証し、搭載パソコンの特徴や導入するメリットについて考えていく。第2回となるこの記事では、Snapdragon Xシリーズ搭載パソコンのビジネスシーンにおける魅力について紹介していこう(第1回の記事)。
第1回ではSnapdragon X Eliteを競合するAI対応のプロセッサーと比較。負荷の比較的高いクリエイティブ作業においても十分に高い処理性能を持つ点について紹介した。しかし、Snapdragon Xシリーズの真価は「高性能かつ省電力」で、外出時やフリーアドレスのバッテリー駆動でも快適かつ長時間利用できる点にある。オフィス文書編集からビデオ会議、今後重要になるAI活用まで、テスト結果を交えてSnapdragon Xシリーズ搭載パソコンの実力を紹介していこう。
検証機やテスト環境はSnapdragon X Plusを搭載したレノボの機種を追加している。
※ACアダプター接続時はWindows 11「最適なパフォーマンス」、ASUS製品「フルスピードモード」、Lenovo製品「クリエイティブ」に設定。バッテリー動作時はWindows 11「バランス」、ASUS製品「スタンダードモード」、Lenovo製品「適応パワー・モード/共通」での動作に設定した。バッテリーテスト中の画面の明るさは輝度計で約150cd/m2(明るさの設定は各モデルとも60~70%の範囲)に統一している。ドライバーは9月中旬時点の最新のものを利用している。
省電力で高性能、軽量パソコンに圧倒的に向いた性能
Snapdragon Xシリーズを搭載したモバイルノートPCがより強みを発揮するのは、モバイル環境かつオフィスやブラウザーを利用するビジネスシーンだ。実際に、出張や外回りで1日中出かけるシーンを想定してSnapdragon X搭載モデルを持ち歩いてみたところ、文書作成やメール確認など合計5時間ほどの作業を行っても、バッテリー残量はまだ64%とかなりの余裕があった。
実際には充電可能な場所に立ち寄ることも多いので、バッテリー切れに困ることはまずないが、今も数年前のモバイルノートPCを利用しておりバッテリー切れに悩まされているなら、そろそろ買い換えを考えたほうがいいだろう。
PCMark 10での検証、バッテリー駆動でも性能が落ちない
まずはビジネスシーンを想定し、オフィス文書の編集やブラウジングに関する処理性能をベンチマークテスト「PCMark 10 Applications」で比較した。これは実際に最新のOffice 365アプリとEdgeブラウザーを動作させ、ビジネス環境での処理性能を比較するものだ。実際の使用感に近い性能を計測できる。
まずはオフィス内など電源に接続できる環境での利用を想定して、ACアダプターを電源に挿した状態でテストを実施した。結果はRyzen AI 7 350、Core Ultra 7 258V、Snapdragon X Elite搭載モデルでそれぞれ高い処理性能を持っており、使用されるアプリによって若干の性能差はあるものの、大きな違いはないものだった。
面白いのはバッテリー駆動に変えた状態でのテスト結果だ。Snapdragon X Eliteでは全体に高いスコアを保持しているが、これはSnapdragon Xシリーズを搭載したパソコンだけが電源のある環境と比較してもスコアが落ちていないためだ。その一方でCore Ultra 7 258V、Ryzen AI 7 350搭載モデルは今回のテスト条件では3~4割も性能が低下している。
Snapdragon X Elite、X Pro、Xを搭載したモデルはいずれもALLのスコアが1万点を超える性能で、電源のある環境に近い快適さを維持できている。一方で、他のCPUを搭載したモデルはいずれもスコアが1万点未満と大きく下がってしまった。
「バッテリーが長持ち」に加えて、軽量化もできる
加えて、オフィス作業を続けた場合を想定してバッテリー駆動時間を計測する「PCMark 10 Battery Profile Applications」も実施した。すべてのモデルが13時間以上動作しており、Copilot+ PCのバッテリー持ちが非常にいいことに驚かされる。かつてのモバイルノートPCのイメージとは異なり、最新のノートパソコンはスマートフォンやタブレット並みにバッテリーが持つと考えても良さそうだ。
ただ、この比較は各モデルが搭載するバッテリー容量の違いを考慮していない。そこで、各モデルのバッテリー容量の数値から1Whあたりの動作時間を算出したのが下のグラフだ。この結果を見ると、Snapdragon X Elite、Snapdragon X Pro、Snapdragon X搭載モデルは、高性能ながらも消費電力が少ないことがわかる。Snapdragon X搭載モデルはACアダプター接続時には最大性能ではないが、そのぶん省電力性能はほかを圧倒しており、驚かされる。
先ほどの「PCMark 10 Applications」でバッテリー駆動時でも処理性能が高い(落ちない)という点を確認できたが、そのうえでバッテリーベンチマークテストの結果を分析すると、Snapdragon X Elite搭載パソコンは総合的なバッテリー駆動時間も長いことがわかる。システムとしてのバッテリー駆動時間はCore Ultra搭載パソコンもほぼ同等という結果が出ているが、Snapdragon Xシリーズ搭載パソコンは重量が約899gと3モデルの中で最も軽く、搭載バッテリーの容量も少ないことを考えると、より軽くバッテリー駆動時間の長いパソコンを作りやすいCPUであることがわかる。
これらの内容を総合すると、Snapdragon Xシリーズ搭載パソコンは、Copilot+ PCの中でも軽量で、処理性能や省電力性能に優れた製品になりやすいと言っていいだろう。

















