どうしてこんな違いが生まれたのか?
明確に違いが見て取れる日英のBTO PC市場ですが、なぜこのような違いが生まれたのでしょうか? それは食文化からも察せられる文化的背景にあります。
こちらはLian Liの「A3-mATX Wood Edition」を採用したBTO PC「OcUK Gaming Hydrogen - Ryzen 9800X3D RTX 5080 Compact Gaming PC」。リビングに置いてあっても違和感のないデザインです。お値段は2499.95ポンド(約50万円)
まず、PCをどこに置くかという感覚の違いがあります。日本では自分の部屋や机にPCを置いて“個人の作業ツール”として扱う場合が一般的だと思いますが、イギリスでは家具のようにリビングや共有スペースにPCを設置するケースが多いのです。
そうなると、「部屋になじむ」「誰に見られても恥ずかしくない」デザインが必須条件です。つまり、「自室のツール」か「リビングの家具」かという違いがあります。
Ryzen Threadripper PRO 9995WXと、7台のGeForce RTX 5090搭載ビデオカードを採用したウルトラハイエンドモデル「8Pack Supernova MK3 - AMD Ryzen Threadripper Pro Extreme PC」。お値段はなんと50888.88ポンド(約1017万円!)
次に、ユーザーの価値観の差が挙げられます。先述の通り、イギリスのBTO PCは「性能に妥協している」わけではありません。むしろ「性能は当然クリアーしていて、そのうえで見た目も大事」という価値観です。
日本のBTO PC市場は逆方向で発展しました。昔は「コスパ」を突き詰める競争が激しく、デザインは二の次になりがちでした。それは広告にも表れており、日本ではベンチマーク性能をアピールし、イギリスでは優れたデザイン性をアピールしていることが多いのです。
「bit-tech」というWebメディアでは、本格的なMod PCの作成ガイドのほかに、Mini Modsという「ちょっとした工夫でお洒落なデザインにする」技法を紹介しています
日本では価格比較サイトやショップの価格表で値段を比べることが一般的で、先述の価値観の差もあいまってコストパフォーマンスに重きを置いたプロモーションを多く見かけます。売れ筋ランキングなども耳目を集めやすく、自然と価格で比較するという文化が根づいたのでしょう。
個性的な本格水冷システムを採用したモデル「Infin8 Obelisk - Intel Core i9 14900KF Pro-Tuned Watercooled Gaming PC」。お値段は8799.95ポンド(約176万円)
イギリスには「bit-tech」や「Custom PC(現在はPCGamesNに統合)」をはじめとしたメディアが、デザイン重視のPCを大きく取り上げ、そういった文化を形成してきました。単純な価格比較だけではなく、「いかに美しく個性的に仕上げるか」という価値観が市場を形成し、その価値観はBTO PCにまで影響していると考えられます。
80年代のマイアミビーチをイメージしたデザインを採用したモデル「TechForge Miami - AMD Ryzen 9800X3D, RTX 5080 80s Inspired Modded Gaming PC」。こちらはもはやPCを超えた「インテリア」に近い存在です。お値段は3499.99ポンド(約70万円)
日本人にとってPCは「道具」的な側面が強く、仕事やゲーム、動画編集などをこなす「ツール」として捉える感覚が主流です。当然、ツールだと利便性こそが最も重要で、趣味性は薄く成る都合上、コストに対する考え方も厳しくなります。そうなると、自然とデザイン面が軽視されてしまうのも無理はありません。
「壁にかけて、アートのように楽しむ」というコンセプトのPC「8Pack Frame R8 - AMD Ryzen 9 9950X Extreme Overclocked Wall Mount PC」。紹介文では「ピカソやゴッホのような芸術作品」と謳われている。お値段は7688.88ポンド(約154万円)
しかし、イギリスでは「ツール」を超えた「インテリア」として捉えられ、「空間を彩る存在」としての役割を担っています。ゆえに、多少コストが高かったとしても、デザイン性と機能性の両立ができているPCが求められます。
まとめ:次のPCは「隣の文化」を取り入れてみませんか?
同じBTO PCでも、文化が違えば求められるPCも違います。どちらが良いという話ではなく、「BTO PCでもそういう文化の違いがある」ということを知っていただければ幸いです。
近年、日本国内でもデザインにこだわったBTO PCが増えてきました。イベントやSNSなどでたくさんのMod PCが披露されたり、今までとは違ったPCの需要が増えてきている気がします。PCを購入する際の選択肢が増えることはとてもいいことですよね。
サイコムのBTO PC「Premium Line Z890FD
」は、Fractal Design製の美しいPCケース「North」を採用。こちらはスペックとデザイン性を両立し、高品質な厳選PCパーツで手厚い保証がある優れたモデルになります。お値段は40万9310円~
この記事をきっかけに、「今まで性能のことしか考えてこなかったけど、次のPCはちょっとデザインにもこだわってみようかな」と思ってくれたり、あわよくば「好きなデザインのPCが欲しいから、PC自作にチャレンジしてみようかな」なんて思ってくれたりしたらうれしいです。












