AIネイティブな働き方に向けた“通話データの活用”も見据える

NEC、グループ11万人の電話をまるっと「Zoom Phone」に 電話関連コストを“7割削減”

文●福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 NECは、2025年春、グループ全社の国内従業員約11万人を対象に、ZoomのクラウドPBX「Zoom Phone」を導入し、電話関連コストを約7割削減した。Zoomの日本法人ZVC JAPANが2025年9月18日に発表した。

固定電話でしかできなかった業務がPCやスマホからできるようになる(事例紹介サイトより)

Zoom Phoneの大規模導入で実現したコスト削減と利便性向上

 NECは現在、段階的にコミュニケーション改革を推進している。第一歩として着手したのが、場所を問わず円滑なやりとりができる「ロケーションフリー環境」の整備であり、そのための仕組みとして「Zoom Meetings」を導入した。

 続いて取り組んだのが、“PBXのクラウド化”である。出社が前提となる固定電話が柔軟な働き方を阻害していたことや、AI時代に向けたコミュニケーションデータの蓄積・分析ニーズの高まりも、このクラウド化を後押ししたという。

 NECがZoom Phoneを選んだ理由のひとつが「音質」だ。複数サービスで検証したところ、安定したネットワーク環境下では差がなかったが、外出先や自宅などの不安定なネットワーク環境下ではZoom Phoneの音質の良さが際立ったという。直感的なUIによるわかりやすい操作性やオンプレミスPBXと比べて初期費用と運用コストを抑えられる点も決め手となっている。

 Zoom Phoneの導入にあたっては、 全国の拠点に点在していたPBX環境の利用実態を調査し、機器や回線数も全面的に見直した。加えて、部門ごとに担当者を配置して詳細なニーズを確認しながら進めることで、11万人規模の移行を約10カ月という短期間で完遂した。

 現在、固定電話でしか受けられなかった電話にもスマートフォンから応対できるようになり、管理部門では通話の利用状況をリアルタイムで把握できるようになっている。オンプレミスPBXの撤廃と通信回線の最適化によって社内設備は大幅にスリム化しており、通話料を含む電話関連コストの7割削減を達成している。

Zoomのコミュニケーション基盤が支える「データドリブン×生成 AI」

 Zoom Phoneの導入は、今後の生成AI活用にもつながっている。Zoom Phoneは、通話データの保管や分析に追加費用がかからず、生成AIによるコミュニケーションデータ活用も推進しやすいサービスだ。

 現在、NECのコミュニケーション改革は、「データドリブン×生成AI」という次の段階へと移行している。コミュニケーションデータや社内の既存ストックデータをNEC独自のLLM「cotomi(コトミ)」と組み合わせ、ナレッジを再構築していく予定だ。こうしたナレッジ基盤構築と活用を、Zoomをはじめとするコミュニケーション基盤が支えることになる。

NECのコミュニケーション領域でのAI活用の姿