DTVビザでタイにプチ移住! 海外ノマドフリーランスのリアルとは?
タイ渡航直前に大地震。予想外の事態に見舞われるも、無事プチ移住生活をスタート
りのさんがバリ島からタイに渡航したのは2025年の3月末。ちょうどその直前にバンコクで大地震が発生。正式な住まいとして最有力候補だった高層コンドミニアムも大きな被害を受けてしまう。被害が少なかった低層タイプにしたほうがいいのではないか…そう悩んだ彼女は、新たな不動産へ問い合わせたり、内見をしたりと奔走する。
「でも、結局は迷いに迷って最初に決めていた物件にしました。最低でも1年間は生活する住居なので、〝最も自分が幸せに暮らせる〟と実感したところにしたかったんです」
タイでの物件探しについては、語学に自身がない場合は日系の不動産を通すのが一番だという。事実、りのさんが現地のエージェントに問い合わせた際は、そもそもで返事がなかったり、途中で連絡が途絶えたりと、一筋縄ではいかぬことばかりだった。
「無事入居が決まっても、何かトラブルがあった時にやり取りできる語学力がないと、こちらに不利に物事が進み、想像以上に出費がかさむ可能性もあります。
一方で、タイのコンドミニアムは直接足を運んで空室を見せてもらい、その場で入居を決められる物件も。契約に必要なのは予約金とデポジット、それとパスポートくらい。だから外国人でも簡単に借りられます。ただし基本的に最低1年契約で、途中で解約してもデポジットは返ってきません」
同じ建物でも部屋ごとにオーナーが違うので内装や、備え付けの家具・家電がまったく別物がほとんど。そのためいくつか内見をし、自分の好みに合う部屋を探すことをおすすめするそう。
「あと驚いたのは、日当たりの悪い部屋が人気なこと。タイは年間通して暑いので日当たりがいい部屋はエアコン代がすごいことになるんです。
それと…これは声を大にして言いたいのですが、どんなに新築でも高層階でも、ゴキブリは出ます(笑)。日本よりはるかに出現率が高いので、内見の段階で死骸がないか絶対チェックしたほうがいいです。入居後は定期的なペストコントロールの実施や、排水口カバーの設置が必須ですね」
タイに入国後、1か月で正式な住居へと入居。その後の1か月は生活の快適さをあげるため、休みのたびにIKEAやニトリに行くなど、多少慌ただしい日々を送ったそだが、現在はすっかり通常モードに。
海外ノマドのころと変わらず、フリーランスWebライターとして企業からの執筆依頼や単発の仕事などを受けているそう。日本の企業と仕事はしているが会議などがあるわけではないので、時差の影響もない。
「これまでは1〜2ヶ月ごとに拠点を変えていたので、せっかく体が慣れたころにまた違う国のリズムに合わせないといけなくて…。朝起きられない、夜眠れない、なんて日常茶飯事でした。
でも、タイに拠点を移してからは生活リズムが整い、毎朝6時に起きて、7時から仕事をスタート。早いと11時、遅くても12時半にはその日の仕事を終わらせて、午後は完全フリー。月の稼働はだいたい10日くらいなので、フリーランスとしてはかなり恵まれた環境でお仕事ができていると思います」
フリーの時間は読書をしたり、ジムに行ったりと、自分の心と体を整える時間に。タイはマッサージが安いので、ふらっと近所の店でリフレッシュすることも多いとか。そんなのびのびとした毎日を送るりのさんに、タイでの生活費についても聞いてみた。
「出費は毎月30万円ちょっとくらいです。日本やヨーロッパにいた時と大きく変わらないですね。タイ=安いというイメージがあるかもしれませんが、バンコクは大都会なので決して物価は安くありません。おしゃれなカフェでコーヒーを頼めば600〜700円くらいするところもありますし、屋台もバーツ高の影響で〝激安!〟ってほどではなくなっています。
一番大きいのは住居費ですね。私が借りているコンドミニアムは立地もよく、築浅なので1LDKで16万円以上します。ただ、日本で同額の物件と比べたら、共有スペースも充実しているので圧倒的に贅沢ができます。
食費はだいたい5〜60000円くらい。自炊はそんなに節約にならないので、結局外食が多めですね。そこに光熱費や通信費で10000円弱、海外旅行保険が10000円、交通費や交際費、娯楽などで3〜40000円。加えて仕事で使うソフトや、日本で借りている倉庫代も含んでいます」
毎月拠点を変えていたころは渡航費で数万円がかかったり、短期で借りる宿は安くなかったりしたので、今のほうが出費を抑えられているという。
「ただ、私の場合はあまり節約的なことしていないので、参考にならないかもしれません(笑)。一般的にタイで安く生活したいなら、もちろん出費は抑えられます。バンコク中心部から少し離れれば、7〜80000円で十分きれいな一人暮らし用の高層コンドミニアムが借りられますし、エリアや物件にこだわらなければ50000円以下の部屋もたくさん。
節約も贅沢もできる国なので、安く生活しようと思えば、日本よりはるかにいい条件で暮らしながら出費を抑えられるはずです」
タイの日常に溶け込み、〝小さなストレス〟ですら楽しめる毎日に
タイにプチ移住をして5か月ほど(2025年9月時点)。1日の終わりにベッドで感じる満たされた気持ちが、日本にいた時ともこれまでともけた違いだという。心の底から「あぁ、今日もいい一日だったな」と思えるのだとか。
「昔は、刺激を求めて旅をするスタイルでしたが、最近は好きな国に何度も行ったり、無理に観光せず自分が居心地のいいと思う過ごし方をしたりと、ゆっくりするスタイルに落ち着きました。
とはいえ、何の発見もない同じことを繰り返す毎日も、ちょっぴり寂しくもあって。先ほどもお伝えしましたが、タイは私にとってそんなわがままな気持ちを満たしてくれる〝ハイブリッドな国〟なんです。
食べ物がおいしいし、コンビニもあるし、きれいな部屋に住めて、治安も安定してる。日本みたいな快適さがある一方で、文化に触れたり、現地の人の優しさに出会えたり、新しい発見もまだまだ尽きません」
最近では行きつけのカフェやコンビニのスタッフ、マンションで毎朝挨拶をする清掃員など、顔見知りがどんどん増えてきたというりのさん。「友達はまだ少ないのですが、異国で自分を知っていてくれる人がいるということが、こんなにうれしいことだとは知りませんでした」と語る。
「でも、実は私、英語もタイ語もほとんど話せないんです。飲食店で注文する際の基本フレーズやちょっとしたひと言は覚えましたが、会話はほぼできません。自信満々に言うことではないですが…(笑)。
一時期、英会話教室に通ったこともあるのですが、こんな状態でも海外で生活できてしまうので長続きせず。何かトラブルがあったり、必要に迫られたりした時はGoogle翻訳で画面を見せて伝えています。
住むエリアにもよりますが、バンコク都心なら語学力がなくても不自由なく暮らせるはずです。日本語表記があるお店や日本語が話せる店員さんもバンコクには多く、薬局や病院によっては日本語サポートがあるところも。そして、なによりバンコクの人は外国人にも慣れています」
〝日本語だけでOK〟とまでは言えないものの、困った時に頼れそうな日本人や日本語の通じるタイ人が多いのがバンコクのいいところだそう。そう教えてくれるりのさんに、逆にタイでの暮らしで苦労している点も聞いてみた。
「やはり日本では考えられないことは、当たり前に起こることですかね。例えば約束した時間に業者が来ない、届くはずのものが届かない、不正請求されているなど、小さなストレスは日常茶飯事です。
これはタイに限ったことではなく、外国で暮らしているといろいろなことが〝1+1=2〟じゃないんですよね。プラスになることもあれば、予想をはるかに下回ってマイナスになることもある。
日本の感覚で定義した計算式は、外国で通用しないことは過去の経験で痛いほどわかっていたつもりですが、短期の観光では見えなかった現実が、住んでみると一気に目の前に現れてくる感じですね。
ただ、最近では『まぁ、この国ではこれが当たり前だしなぁ』とか『日本ではこういうこと絶対にないからおもしろいなぁ』と思えるようになってきて。ストレスを感じていた出来事すら、徐々にタイの魅力へと変換されていく感覚を楽しんでいます」
いいことも、そうでないこともひっくるめてタイでの暮らしを満喫しているりのさんだが、今、タイDTVビザの取得を検討している人に向けて「もし条件を満たしているなら、早めに申請して」と声を大にする。
「こういう制度って、ある日突然、廃止になったり、条件変更になったりしがちで…。特にタイは制度の切り替えが早い国なんですよね。移住って聞くと、すごくハードル高く感じるかもしれませんが、DTVビザでのタイ移住は想像よりシンプル。ビザが取れたからといって、必ず5年間住まなきゃいけないわけでもないので、気楽に〝ちょっと長めの旅行〟というつもりで試してみてほしいです。
タイでの生活は快適で、日本のものも手に入りやすいし、日本食も本格的なものが安く食べられるんですよ。本当に日本で暮らしているような、むしろ日本よりも快適な暮らしを叶えながら、異国の空気を味わえる国だと思っています。
ただ、気をつけてほしいのは食中毒。屋台は特に注意ですね。私もタイで3〜4回やられてます(笑)。
あと最近は、外国人がタイで銀行口座を作るのがすごく難しくなっています。QRコード決済が一般的なのですが、口座がないとそれが利用できません。クレジットカードを利用できる場所は多いですが、手数料がかかったり、屋台では断られたりするので、現金も意外と必要です。なので、移住前にクレジットカードの利用枠を確認したり、Wiseのような海外送金サービスを使えるようにするなど、事前の準備をお忘れなく」
DTVビザは180日に一度、タイからの出国が必要なため、3か月に一度くらいのペースで〝海外を拠点にしながら海外旅行をする〟という贅沢な時間も満喫する予定だとか。さらには年に一度は、家族や友人に会うために日本に帰国もするという。そんなりのさんに、今後プチ移住を通してチャレンジしたいことを聞いてみた。
「もっとタイを深く知るための行動をしてみたいですね。例えば、タイ語をもう少し話せるようになるとか、好きなタイ料理を〝食べに行く〟だけじゃなくて〝自分で作ってみる〟とか。
あとはこれから海外にプチ移住してみたい人や、行動範囲を広げて海外へ飛び出してみたい人のサポートをしたいと考えています。私自身、思い切った決断の連続で、今こうして自分が描いた未来を迎え、好きなことをしながら好きな場所で暮らせています。
すでにたくさんの幸せをもらったので、今度は同じような思いを抱く、一人では不安な人たちのサポートをしたい。そして、その人の人生が変わるきっかけを作ったり、ターニングポイントとなる瞬間に立ち会ったりしたいな、と。
物質的な満足には限界があるので、今度は〝人を幸せにする・喜ばせること〟を人生のテーマとしてタイで過ごしていきたいです」
すべての画像を見る場合はこちらProfile:りの
りの/1985年青森県弘前市生まれ。北海道の短大を卒業後、水泳やダイビングなどのインストラクターとして多忙な日々を送る中、初めての海外旅行に出かけたことで、〝一人旅〟〝海外旅行〟の素晴らしさに開眼。仕事を辞め、約60か国世界2周の旅へ出発。その様子を発信していたブログが好評を得る。2019年には自身が旅の中で経験したトラブルをまとめた書籍「拝啓、世界であわてふためく女子たちへ」(雷鳥社)を出版。2021年からは海外ノマドフリーランスとして、各国を飛び回る生活に。現在もWebライターとして活動すると共に、海外旅行やノマドワークに役立つ情報を発信中。
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