2つの高リスクな脆弱性を攻撃する新型ボットネット「RondoDox」
提供: フォーティネットジャパン
本記事はフォーティネットジャパンが提供する「FORTINETブログ」に掲載された「RondoDoxの出現:新型ボットネット攻撃の分析」を再編集したものです。
影響を受けるプラットフォーム:TBK DVR-4104、TBK DVR-4216
Four-FaithルーターF3x24モデル
Four-FaithルーターF3x36モデル
影響を受けるユーザー :あらゆる組織
影響 :リモートの攻撃者による脆弱なシステムの乗っ取り
深刻度 :高
過去1ヵ月間、FortiGuard Labsはスキャン行為の急増を観測しており、これには2つの高リスクな脆弱性、CVE-2024-3721とCVE-2024-12856を悪用する新しいボットネットキャンペーンも含まれています。どちらの脆弱性も一般に公開され、積極的な攻撃の対象とされているため、デバイスのセキュリティやネットワーク全体の完全性に対して深刻なリスクをもたらします。
攻撃を行うボットネットは、RondoDoxと名付けられました。MiraiやGafgytなどの広く知られた亜種とは異なり、RondoDoxは比較的新しく目立たない脅威です。FortiGuard Labsがこれと同様のELFバイナリを初めて確認したのは2024年9月でした。注目すべきは、RondoDoxがカスタムライブラリを組み込んでおり、ゲームプラットフォームやVPNサーバーからのトラフィックを偽装して検知を回避する点です。
脆弱性の詳細
CVE-2024-3721は、2024年4月12日時点において、TBK製DVRのDVR-4104およびDVR-4216モデルなどに影響を与える重大な脆弱性です。この脆弱性は、/device.rsp?opt=sys&cmd=___S_O_S_T_R_E_A_MAX___パスの不適切な処理に起因しています。このパスでmdbおよびmdcパラメータを操作することで、OSコマンドの注入が可能になります。エクスプロイトに成功すると、リモートの攻撃者は被害を受けたデバイスで任意のコマンドを実行できます。
CVE-2024-12856は、Four-Faith製ルーターのF3x24およびF3x36モデルに影響を与えます。この脆弱性により、認証されたリモート攻撃者は、システム時刻を変更する際にapply.cgiインタフェースを悪用することで、任意のOSコマンドをHTTP経由で実行できます。
ダウンローダーの分析
RondoDoxは当初、ARMおよびMIPSアーキテクチャ上で動作するLinuxベースのオペレーティングシステムを標的にして配信されていました。しかし、最近の調査では新たなシェルスクリプトダウンローダーが確認されており、このマルウェアはIntel 80386、MC68000、MIPS R3000、PowerPC、SuperH、ARCompact、x86-64、AArch64など広範囲にわたるLinuxアーキテクチャを攻撃できるようになったと考えられます。
このシェルスクリプトは、まず、被害者側のホストに対し、SIGTTOU、SIGTTIN、SIGTSTP、SIGHUP、SIGPIPE、SIGINT、SIGQUIT、SIGTERMなど複数の信号を無視するよう指示します。
次に、/dev、/dev/shm、被害者のホームディレクトリ、/mnt、/run/user/0、/var/log、/var/run、
/var/tmp、/data/local/tmpなどの書き込み可能なパスを確認し、/proc/mountsのリストでnoexecフラグを設定せずにマウントされているものがないかを調べます。最後に、/tmp内にlibディレクトリを作成し、「RondoDox」マルウェアをダウンロードして実行し、検知を回避するためにコマンド実行履歴を消去します。
RondoDoxの分析
当分析では、rondo.x86_64というx86-64アーキテクチャのバイナリを取り上げます。
RondoDoxマルウェアは、単純なXOR難読化アルゴリズムを使って構成データをエンコードします。構成データには、ファイルパスやツールのファイル名といった要素が含まれます。エンコードされたすべての値は、16進キー0x21を使用して復号できます。
構成データをデコードした後、RondoDoxは永続化のメカニズムを使って被害者ホスト上に存在し続けます。
RondoDoxは、ファイルの権限とシンボリックリンクを変更することで永続性を確保します。図6のXORでエンコードされた値byte_51D670とbyte_51D6C0は、/etc/init.d/rondoと/etc/rc3.d/S99rondoにそれぞれデコードされます。さらにRondoDoxは、被害者システムで永続化ルーチンを実行するためのシェルスクリプトも埋め込みます。
RondoDoxはinitスクリプトを使用するだけでなく、/etc/rcS、/etc/init.d/rcS、/etc/inittabなどのシステム起動ファイル、さらにはユーザーとrootのcrontabエントリにも起動コマンドを追加します。このような多層型の永続化戦略により、1つのメソッドが削除または無効化されても他のメソッドが引き続き有効であるため、ボットネットはシステムの再起動時に自動的に復旧します。
RondoDoxは実行されると、自身のプロセスIDを取得し、システムをスキャンして特定のアプリケーションを探します。そして、ネットワークユーティリティ(wget、curlなど)、システム分析ツール(Wireshar、gdbなど)、または他のマルウェア(クリプトマイナー、Redtailの亜種など)に関連するキーワードを調べます。これらのプロセスを検知した場合は、直ちにそれを終了して分析を回避し、操作のステルス性を維持します。
| dhpcd | apcid | redtail |
| xmrig | miner | ps |
| top | htop | pstree |
| lsof | netstat | ss |
| wireshark | tshark | ngrep |
| dumpcap | tcpdump | passwd |
| chpasswd | iptables | nc |
| netcat | ufw | gdb |
| gdbserver | cgdb | strace |
| valgrind | stap | dtrace |
| sysdig | bpftrace | scp |
| shutdown | poweroff | halt |
| reboot |
RondoDoxを分析するなかで、このマルウェアがtmp/contact.txtファイルにEメールアドレス「vanillabotnet@protonmail[.]com」を書き込んでいることに気づきました。ただし、RondoDoxの実行フローやコマンドのロジックでは、このアドレスの使用は確認されていません。
次に、RondoDoxは以下のようないくつかの一般的なLinux実行可能ディレクトリをスキャンします。
・/usr/sbin
・/usr/bin
・/usr/local/bin
・/usr/local/sbin
そして、選択した実行ファイルの名前を、ハードコードされたランダムな文字列に変更します。この動作の目的は、ファイアウォールの構成、ユーザーアカウントの管理、シャットダウン処理といった重要なシステム機能を妨害することです。これらのバイナリを破壊することでシステムの安定性を阻害し、復旧作業を困難にします。
| 元のファイル名 | 変更されたファイル名 |
| Iptables | jsuJpf |
| ufw | nqqbsc |
| passwd | ahwdze |
| chpasswd | ereghx |
| shutdown | hhrqwk |
| poweroff | dcwkkb |
| halt | cjtzgw |
| reboot | gaajct |
セットアップルーチンを完了すると、RondoDoxはキー「rondo」を使用してコマンド&コントロール(C2)サーバーのアドレス83[.]150[.]218[.]93をデコードし、サーバーとの接続を開始します。
RondoDoxは、後続のDDoS(分散型サービス拒否)攻撃に使用するコマンドをC2サーバーから受信します。
RondoDoxは3つの主要プロトコル、すなわちHTTP、UDP、TCPを使用してDDoS攻撃を開始できます。検知を回避するために、Valve、Minecraft、Dark and Darker、Roblox、DayZ、Fortnite、GTAといった人気のあるゲームやプラットフォームのほか、Discord、OpenVPN、WireGuard、RakNetなどのツールをエミュレートし、悪意のあるトラフィックを隠蔽します。
例えば、OpenVPNトラフィックに偽装しながら特定の標的を攻撃するためのコマンドをC2サーバーから受信すると、OpenVPNの\x38で始まる「マジックバイト」が含まれたパケットペイロードを作成します(図17)。
RondoDoxはゲームやチャットプロトコル以外に、WireGuard、OpenVPNのバリアント(openvpnauth、openvpncrypt、openvpntcpなど)、STUN、DTLS、RTCなど、トンネリングやリアルタイム通信サービスからのカスタムトラフィックを模倣することもできます。このような正規のサービスを偽装することで、防御側がそのトラフィックを効果的に識別しブロックするのは著しく困難になります。
結論
RondoDoxは、新たに出現した巧妙なマルウェアで、分析回避、構成データのXORエンコード、カスタムライブラリ、強固な永続化メカニズムなど、高度な回避手法を使用しています。これらの機能によって検知を免れ、侵害されたシステム上で長期にわたるアクセスを維持することができます。
このマルウェアは主として2つの既知の脆弱性、CVE-2024-3721とCVE-2024-12856を悪用していることから、影響を受けるシステムには遅滞なくパッチを適用することが求められます。難読化、サービスの偽装、多層的永続化の手法は、RondoDoxの潜在的脅威が増大していることを裏付けています。
RondoDoxの全容を把握し、実効性のある検知および減災戦略を立てるには、継続的な監視、脅威インテリジェンスの共有、緻密な振る舞い分析が極めて重要です。
フォーティネットのソリューション
本レポートで説明されているマルウェアは、FortiGuardアンチウイルスで次の名称で検知されブロックされます。
BASH/RondoDox.A!tr.dldr
ELF/RondoDox.CTO!tr
FortiGate、FortiMail、FortiClient、FortiEDRは、FortiGuardアンチウイルスサービスをサポートしています。これらの各ソリューションには、FortiGuardアンチウイルスエンジンが含まれています。したがって、最新の保護機能を備えたこれらの製品をお使いのお客様は、脅威から保護されています。
FortiGuard Webフィルタリングサービスは、C2サーバーをブロックします。
FortiGuard Labsは、次の脆弱性を悪用した攻撃に対応するIPSシグネチャを提供しています。
CVE-2024-3721: TBK.DVR.SOSTREAMAX.Command.Injection
CVE-2024-12856: Four-Faith.Routers.adj_time_year.Command.Injection
また、各組織は、フォーティネットが無償で提供するトレーニングモジュール「FCF Fortinet Certified Fundamentals」を受講することをお勧めします。このモジュールは、エンドユーザーが各種のフィッシング攻撃を識別して自らを保護する方法を学習できるよう設計されています。
FortiGuard IP ReputationおよびAnti-Botnet Security Serviceは、フォーティネット分散ネットワークから得られた悪意ある送信元のIPデータを一元的に収集することで、これらの攻撃をプロアクティブにブロックします。この分散ネットワークは、脅威センサー、CERT、MITRE、協力関係にある競合他社、その他のグローバルソースなどが連携して、悪意ある送信元に関する最新の脅威インテリジェンスを提供します。
お客様の組織がRondoDoxやその他のサイバーセキュリティ脅威の影響を受けていると思われる場合、当社のグローバルFortiGuardインシデントレスポンスチームまでご連絡ください。
IOC(Indicators of Compromise:侵害指標)
ホスト
45[.]135[.]194[.]34
83[.]150[.]218[.]93
14[.]103[.]145[.]202
14[.]103[.]145[.]211
154[.]91[.]254[.]95
78[.]153[.]149[.]90
ファイル
ダウンローダー
c88f60dbae08519f2f81bb8efa7e6016c6770e66e58d77ab6384069a515e451c
eb3e2a6a50f029fc646e2c3483157ab112f4f017406c3aabedaae0c94e0969f6
f4cd7ab04b1744babef19d147124bfc0e9e90d557408cc2d652d7192df61bda9
RondoDox
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