人材不足解消を目指し、フォーティネットが“未来のホワイトハッカーたち”に特別授業

技術系学生がいま「OTセキュリティの考え方」を学ぶ意義とは?

文●大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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ITセキュリティとは大きく異なる「OTセキュリティの考え方」とは

 この授業は、期間を空けながら数回(数日間)に分けて実施される。授業の内容は、フォーティネットがパートナーや顧客企業のIT/セキュリティ担当者に行う「OTセキュリティ研修」がベースとなっており、説明の表現こそ学生向けにやさしくしてあるものの、教える内容は“社会人向け”と変わらないという。

 第2回の授業となったこの日は、第1回(オンライン、座学)で学んだOTセキュリティの基礎知識をふまえ、数人ずつのグループワーク形式で、架空の化学薬品メーカーを題材に「OT現場のリスクシナリオ検討」「サイバー脅威の侵入口の発見」「ビジネスリスクとのひも付け検討」に取り組んだ。

この日行われたグループワークの概要

架空の化学薬品メーカーを題材に、OTセキュリティを考えていく。かなり“リアルな”設定がなされている

 いくつかのグループワークを通じて、小泉氏が特に強調したのが、検討の最初にあたる部分、OTセキュリティにおける「リスク」の考え方だ。一般にITセキュリティにおいては、たとえば「システムの乗っ取り」「データ漏洩」「データ改竄」「ランサムウェア」……といったサイバー脅威がリスクと捉えられるが、OTセキュリティではそこから考え始めるべきではないという。

 「まずは、いったんサイバー(脅威)のことは忘れて、『現場で起きて欲しくないことは何か』から考えてみてください。たとえば工場などであれば、働く人に危害が及んだり、大きな事故が起きたりして操業が停止してしまう。あるいは環境被害をもたらしたり、製品の品質が維持できずに出荷できなくなったり、といったことです。そうした現場リスク、そしてビジネスリスクを検討したうえで、それにどうサイバー要因が関わるのかを考えます」(小泉氏)

小泉氏は、物理的な影響/被害が発生するOTセキュリティでは、まず「現場で本当に起きて欲しくないこと(=ビジネスリスク)」から考えることを強調した

 ふだん、物事を“ITセキュリティ視点”で見慣れている学生たちにとって、OTセキュリティ視点から考える体験は新鮮だったようだ。グループワークでは、各チームとも積極的な議論が交わされていた。

 この日の授業では複数のグループワークが行われ、学生たちは“OTセキュリティならでは”の検討ポイントなどを体感した。その後、各チームには9月の最終発表会に向けた課題が出された。現実に発生したサイバーインシデントを題材に、その「リスク要因分析」「対策方針策定」「セキュリティ対策の提案書作成」などを、チームで行うという計画になっている。