業務を変えるkintoneユーザー事例 第272回
kintoneの可能性は“プラグイン”で無限に広がる
「おもちゃのように楽しくて仕方がない」 kintoneに魅せられた社員が3か月2000時間の業務削減
2025年07月25日 10時00分更新
「kintoneは会社から与えられた“おもちゃ”のようなもの」―― システムの一元化のためにkintoneを導入したスモリ工業。ある社員がkintoneの面白さに魅了され、急速に知識を習得してアプリを展開した結果、3か月で2000時間もの業務削減につながった。
2025年5月13日に開催された、kintoneユーザーの事例共有イベント「kintone hive sendai」。3番手となるスモリ工業の傳農貴仁氏は、“楽しい”から生まれたkintoneアプリを社内浸透させるまでの道のりを披露した。
コミュニケーションでカバーしていたシステムのサイロ化
スモリ工業、通称「スモリの家」は、新築やリフォームを手掛ける総合住宅建設会社だ。代表取締役の須森明氏は、「宮城の発明王」として50件の特許を取得している。
kintone導入前のスモリ工業は、“システムの乱立”という課題を抱えていたが、それを大きな問題と捉えていなかったという。部門ごとに異なるシステムを利用しており、個人管理のExcelや紙の情報をこの「社内サーバー3兄弟」に入力。もちろんデータを確認するにはそれぞれのシステムにアクセスする必要があった。
このような状況でも業務が回っていたのは、「とにかくコミュニケーションが円滑だったから」と傳農氏。全社員は毎朝、本社に出社してから1日の業務を始め、全社員同じフロアなためよく顔を合わせる。口頭での情報共有や社内承認で事足りていた。
それでも訪れるのがシステムの入替えだ。不具合発生を良い機会だと捉え、システムの一元化を検討することに。しかし、馴染みのシステム会社から見積りをとると、入替え費用は「約1000万円」と予想を超える金額となった。他の会社にも相談するも、納得のいく提案には出会わない。
そうした折に、取引先であるDX支援企業の高山から、kintoneを紹介される。話を聞くと、今度はkintoneの「1ユーザー月額1500円(当時の価格)」という安さに驚いたという。自由度の高さも同社に合っていたことから、システム一元化はkintoneで挑戦することが決まった。
ある社員がkintoneを“おもちゃ”のように遊びだす
その後、高山の伴走支援のもとでkintoneアプリの開発が始まる。それを「面白そうだ」と眺めていたのは傳農氏だ。アプリ開発のためのヒヤリングの場でも詳しい話を聞き、次第にkintoneに魅力されていく。傳農氏は、自身でもkintoneを学び始め、アプリアクションやルックアップ、プロセス管理など、みるみると知識を吸収していく。傳農氏は、「当時はまるで“おもちゃ”で遊ぶ子供のようだった」と振り返る。
そして傳農氏は、kintoneアプリの開発に着手。初めて作成したのは、定番の「日報アプリ」だ。しかし、社員からは「面倒」と言われ、ほとんど使ってもらえなかった。そこで、YouTubeで再度学び、理解を深めたのがkintoneをより便利にする「プラグイン」である。高山とも相談を重ねながら日報アプリをブラッシュアップ。「カレンダーPlus」のプラグインを導入して、手帳のように直感的に入力できるアプリへと進化させた。ただそれでも社員の定着には至らなかった。
転機となったのは、2つのアプリの開発だ。ひとつが「抽選会」アプリ。スモリ工業では毎年、限定1棟を98万円で購入できる「大抽選会」を開催しており、抽選システムに30万の外注費が発生していた。この毎年必要な仕組みをkintone化したのが同アプリである。
アプリでは、顧客用ページをつくり、埋め込んだテーブルに「条件分岐処理プラグイン」で採番(一意の識別番号を割り当てること)。一覧画面は「テーブルデータ一括表示プラグイン」によって一目で抽選番号が分かるようにするなど、工夫を凝らした。
さらに大きな成果を生んだのが、「電子契約アプリ」だ。「レポトン」のプラグインで電子契約サービスのクラウドサインと連携させ、「KAIZEN SIGN」のプラグインで手書き署名にも対応。業務削減効果は絶大で、年間200万円の印紙代が不要になり、契約書の手書きなどの作業も約3か月で2000時間も削減できている。
こうした抽選会アプリと電子契約アプリを通じて、kintoneは社内に浸透していく。成功に気を良くした傳農氏は、「宿泊管理アプリ」「図面検索アプリ」「カレンダー配布アプリ」など、次々とアプリを開発していった。

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