中国土産で購入するジョークグッズ 最近はTemuでも購入可能
多くは3Dプリンターで作られている
中国に行くたび、お土産としてクスッと笑えるジョークグッズを買うようにしている。たとえば、といっても言葉では説明しずらいのだが、「味わいのある動物フィギュア」「『苦』が『草』に変形する文字マグネット」「共産主義ボタン」「はじくと睾丸が高速回転する猫のキーホルダー」などといったもので、円安の今でも数十円~数百円程度とお手軽値段で購入ができる。
その商品名を見ると3Dプリンター製だと記載されていることがある。中国土産と書いたが、日本にいてもTemuやAliExpressでも売ってるので普通に購入できる。
ネタグッズ的なモノ以外では、普通に偽物だったり、人の写真をベースに作った大小さまざまなフィギュアなども売られるようになった。偽物のフィギュアについては今年4月に上海で警察が工場の関係者を逮捕するなど対応はしているが、無数に登場している。ECだけではない。各々好きな商品を売るマルシェ的な店舗が中国で増えているが、ここでも3Dプリンターで作った製品が増えている。
本来は量産に向いていないはずの3Dプリンターだが
中国製の安価な本体や材料による力技で多数の製品を生み出す
よく言われているように、3Dプリンターによるモノ作りのデメリットは、樹脂や金属を1層ずつ積み重ねて造形するので、量産には適さず、頑丈さを求めた製品にも向かない。また溶かしたプラスチックを金型に入れる射出成型よりもコストが高い。製品サンプルとしてとりあえず作ってみる、少量だけ生産するという用途に向いているはずなのだ。にも関わらず3Dプリンターによる製品が中国には溢れている。
その背景には中国の農村部で3Dプリンターを数多く導入し、量産する「3Dプリントファーム(3D打印農場)」なる存在が相当数生み出されていることがある。
3Dプリントファーム、そしてそれを運用する人を「3Dプリントファーマー」とここでは仮に名づけるが、かつて中国の農村の人々が世界中からのオンラインゲームプレイ代行依頼を受けてアイテムやゲーム内コインを稼ぐ「ゴールドファーマー」があったことから同じような命名にした。3Dプリントファームは、数十台から数千台もの3Dプリンターで構成されている。オーナーには通常、数人~10人を超えるサポーターがいて、日常業務の多くはサポーターに委任されている。
統計によると、中国全体には大小さまざまな3Dプリントファームが数千も存在するという。その多くは都会からUターンした若者によるもので、学生時代に3Dプリンターを認知体験をしたことで、自ら3Dプリントファームをつくることを決意したというパターンが多という。
農村や地方都市で運営するのはかつてのゴールドファーマー同様に地価と人件費が安いからだが、3Dプリンターでの製造はコストがかかるんじゃないの? という部分についても、中国企業による3Dプリンター自体と原料が登場して、相当に手頃になっている。拓竹(Bambu Lab)、創想三維維(Creality)、智能派、縦維立方の4社は中国の3Dプリンター四天王的な存在であり、なかでも拓竹は特に多くの3Dプリントファームで愛用されている。
たとえば浙江省の村にある3Dプリントファームでは、800台の3Dプリンターが同時に稼働し、20人を超えるスタッフがそれを管理している。1日あたり1万個を超える製品を生産し、年間売上高は2000万元(約4億円)以上だという。こうした3Dプリントファームが広大な中国各地にあるわけだ。ただ儲けるだけではなく、村民を多数雇用して村の景気を良くしたいと語る人もいる。

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