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35mm相当のパンケーキレンズも同時発売です

4020万画素に手ブレ補正搭載の超小型ミラーレスカメラ=富士フイルム「X-E5」実写レビュー

2025年06月13日 00時01分更新

文● 写真 岡田清孝 + 編集● ASCII PowerReview軍団

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 富士フイルムがAPS-Cミラーレス機「X-E5」を発表した。名前のとおりレンジファインダースタイルのスクエアボディー「X-E」シリーズの最新モデルになる。

「X-E5」実写レビュー

 前モデル「X-E4」が後継機のアナウンスが無いまま生産終了となったので、シリーズ存続を危ぶんでいたファンにとっては待望の新製品だ。しかも4020万画素の撮像素子に手ブレ補正も搭載とスペックが大幅にアップしている。

 またスリムなパンケーキ単焦点レンズ「XF23mmF2.8 R WR」(35mm換算35mm相当)も同時発表され、キットレンズにもなっている。

 ボディーカラーはシルバーとブラックの2色で、予想価格はボディのみ24万6400円、レンズキットは28万1600円で8月発売予定。「XF23mmF2.8 R WR」単体での発売は12月予定で、価格は未定だ。

 富士フイルムから試用機を借りたので、早速試してみた。

予想価格はボディーのみで24万6400円。ボディーはシルバーとブラックの2色を用意。

「X-E5」実写レビュー

「XF23mmF2.8 R WR」とのレンズキットは28万1600円だ。

小型軽量はそのままで
性能はフラッグシップなみに

 

 手ブレ補正を搭載したためかスペック上ではサイズが前モデルよりアップしているが、その差は幅3.6mmに奥行6.4mm、重量が86g増とごくわずかだ。手にしてみると十分コンパクトに感じるボディーだ。

「X-E5」実写レビュー

ボディーサイズは124.9×72.9×39.1mm、重量はメディアとバッテリー込みで約445g。

 突起部の少ないフラットなボディーだが、右側面前後には膨らみをもたせ、これがグリップ代わりになり構えやすい。

「X-E5」実写レビュー

上面はシャッタースピードと露出補正のダイヤルに、ネジ穴があいたシャッターボタン(ケーブルレリーズの使用も可)とアナログ感のあるデザインは変わらず。

「X-E5」実写レビュー

わずかな膨らみだが、これがあるかないかでホールド感は全然違う。

「X-E5」実写レビュー

 前面には「GFX100RF」にも採用された「コントロールレバー」を搭載。レバーの倒し方(一瞬か長倒し)で異なる機能を設定できるのも同様だ。

「X-E5」実写レビュー

フィルム時代のセルフテイマー的な「コントロールレバー」

「X-E5」実写レビュー

左右の倒しと長倒しに中央ボタンと計5つ機能を割り当てられる。

 上面には「X-T50」から採用された「フィルムシミュレーションダイヤル」を搭載。レトロ感のある丸窓もカッコイイ。ただ「フィルムシミュレーションダイヤル」をまわすと液晶画面にも名前とアイコンが表示され確認できるのだが、左手で操作しようとするとアイセンサーが反応し背面液晶が消灯してしまい、右手で操作するには位置が遠すぎる。アイセンサーをオフにするとか丸窓で確認すればいいのだが、何かモヤモヤする。

「X-E5」実写レビュー

新設した「フィルムシミュレーションダイヤル」は見た目がカッコイイ。なおプリセットは計6個(PROVIA・Velvia・ASTIA・クラシッククローム・REALA ACE・ACROS)と「X-T50」や「X-M5」の8個より少ない。自分でカスタマイズできる「FS」のポジションは3個と変わらない。

「X-E5」実写レビュー

「フィルムシミュレーションダイヤル」は液晶画面とも連動しているが、左手で「フィルムシミュレーションダイヤル」を回転させるとアイセンサーを塞ぎ消灯してしまう。

「X-E5」実写レビュー

「X-E5」実写レビュー

せっかくなのでフィルムシミュレーションの作例をいつくか。まずは定番ともいえる「Velvia/ビビッド」。発売当初(確か1990年くらいだったような)鮮やかすぎる発色に驚いたことが思い出される。絞りF5.6・シャッタースピード1/600秒・ISO125・ホワイトバランスオート。

「X-E5」実写レビュー

「ETERNAブリーチバイパス」は銀残しというあえてフィルム時代の手法。カラー現像は大変だったので、さすがに試したことはない。絞りF8・シャッタースピード1/180秒・ISO125・ホワイトバランスオート・撮影後にカメラ内RAW現像で処理。

「X-E5」実写レビュー

「ACROS」にグレンエフェクトと高感度ノイズ低減を-4にして粒状感を強調。さらにコントラスト(トーンカーブで調整)とシャープネスをMAXに。憧れの写真家を真似していた学生時代を思い出す。絞りF16・シャッタースピード1/420秒・ISO1600・ホワイトバランスオート。

 なお画像を加工するフィルター機能も搭載されているが、設定は「ドライブボタン」で表示される項目にまとめられ、なかなか見つけられなかった。「X half」で新搭載された「期限切れフィルム風」や「ライトリーク」なども採用されず、「フィルムシミュレーション」と比べると扱いに差があるような気がする。

「X-E5」実写レビュー

フィルターは「ドライブ」を押して表示される項目の下から2番目にある。なお一番下は動画撮影。

「X-E5」実写レビュー

フィルターの作例もいつくか。「トイフォト」はレトロ感のある描写がいい感じだ。絞りF5・シャッタースピード1/100秒・ISO640・ホワイトバランスオート。

「X-E5」実写レビュー

こちらは「ダイナミックトーン」。何気ない景色でも印象的に演出してくれる。絞りF5.6・シャッタースピード1/680秒・ISO125・ホワイトバランスオート。

 背面操作系では「X-E4」で一度無くなった後方コマンドダイヤルが復活。ボタン類は小振りだが配置に余裕があるので押しやすい。ただ上部中央に配置された再生ボタンの位置は、左右どちらの指からも少し遠く個人的には馴染みにくかった。

「X-E5」実写レビュー

背面操作系はコマンドダイヤルの復活や「Q」ボタンが上面から右側面側に移動した以外は「X-E4」と同等。

「X-E5」実写レビュー

左側面に配置されたAFモードの切換スイッチや端子類も変わりなし。

 EVFのスペックは236万ドット倍率0.62倍と控えめなままだが、接眼部がフラットな形状になった。そのためか視度補正ダイヤルが左側面に移動。突起が短いので回しにくさはあるが、その分不意に動いてしまうことはないだろう。

「X-E5」実写レビュー

接眼部がフラットになり視度補正ダイヤルは左側面に配置された。右下にあるのはアイセンサー。

 背面液晶はチルト式で上方は180度まで動く。収納時は背面がフラットになるデザインは「X100Ⅵ」と同様だ。

「X-E5」実写レビュー

チルト式の背面液晶だが180度回転するので自分撮りも可能。

「X-E5」実写レビュー

液晶を収納したときの一体感は「X100Ⅵ」と同様で、デザイン的にも美しい。

 底面にはスマホとBluetooth接続をするボタンを配置。メディアはSDのUSH-Ⅱに対応。バッテリーは「X-T50」や「X100Ⅵ」などXシリーズの小型モデル共通の「NP-W126S」だ。公称撮影可能枚数はノーマルモードで310枚。実際の撮影ではRAW+JPEGで200カット400枚撮影した時点で残4%だった。

「X-E5」実写レビュー

底面右下にSDとバッテリー室があり、左下にはBluetoothボタンが配置されている。

「X-E5」実写レビュー

Xフラッグシップと同じ4020万画素
手ブレ補正も搭載で安心

 

 撮像素子は前述のように4020万画素でAPS-C機では最高画素数だ。2022年発売したフラッグシップ機「X-H2」で初めて採用し、その後「X-T5」や「X100Ⅵ」などハイエンドモデルが続き、最近ではスタンダード機「X-T50」にも惜しみなく搭載されている。今後Xシリーズの主流になる撮像素子だろう。

 画質も従来製品と同等で、拡大して見たときの細部の精細感は高解像度であることを実感できる。

 また、高解像度を活用する機能として画像の一部をクロップする「デジタルテレコン」も上位機同様に搭載する。「X-E5」の初期設定では「コントロールレバー」の左倒しに割り当てられ、ズーム感覚で拡大することができる。ただ縮小しようと思い逆側にレバーを倒すと、違う機能が呼び出されるので慣れが必要だ。

「X-E5」実写レビュー

解像感がよくわかる遠景の作例。拡大したときの細部の精細さに注目。絞りF5.6・シャッタースピード1/1250秒・ISO125。
以下すべて「XF23mmF2.8 R WR」・フィルムシミュレーション:スタンダード、JPEG/SUPER FINE、ホワイトバランスオート。

「X-E5」実写レビュー

上記の写真と同じ位置から「デジタルテレコン1.4倍」で撮影。解像度は5472×3648ドット(2000万画素)になる。

「X-E5」実写レビュー

こちらは「デジタルテレコン2倍」で撮影。解像度は3888×2592ドット(1000万画素)。

スナップショットに打ってつけ
「XF23mmF2.8 R WR」

 

 キットレンズにもなる「XF23mmF2.8 R WR」はコンパクトなので「X-E5」と組み合わせて軽快に持ち歩ける。既にラインナップされている「XF27mmF2.8 R WR」(35mm換算41mm相当)より少し全長は長いが、ほぼ同じサイズ感なので兄弟レンズといえる。焦点距離を細かく刻んでくるあたり、今後シリーズとして拡張も期待できそうだ。

「X-E5」実写レビュー

「XF23mmF2.8 R WR」のサイズは最大径61.8×全長23mm、重量90g。シルバーとブラックが用意される。

「X-E5」実写レビュー

付属するフードもコンパクトなフジツボ型。

 高解像度撮像素子ではレンズ性能も大事になってくる。キットレンズ「XF23mmF2.8 R WR」はAFのレンズ繰り出し速度や動作音が少し気になるが、撮った写真をみると描写には満足できる。コンパクトなのによく写るレンズだ。

「X-E5」実写レビュー

F5.6まで絞っているので画面全域で整った描写。絞りF5.6・シャッタースピード1/400秒・ISO125。

「X-E5」実写レビュー

微妙な陰影が滑らかな階調で再現されている。絞りF5.6・シャッタースピード1/220秒・ISO125。

「X-E5」実写レビュー

建物隙間から日が差したので、逆光の描写をチェック。絞りF2.8・シャッタースピード1/400秒・ISO125。

「X-E5」実写レビュー

ショーウィンドウに写り込んだ街並みの景色が思ったより精細に写っていた。絞りF2.8・シャッタースピード1/450秒・ISO125。

「X-E5」実写レビュー

路地裏のスナップ。日陰なのに色乗りがよい発色。絞りF2.8・シャッタースピード1/220秒・ISO125。

「X-E5」実写レビュー

絞り開放で撮影。雑に撮ったのでピント位置が中途半端。反省しよう。絞りF2.8・シャッタースピード1/160秒・ISO125。

「X-E5」実写レビュー

明部と暗部に赤色と緑色の対比が重なり合って、わりといい感じ。絞りF5.6・シャッタースピード1/70秒・ISO125。

「X-E5」実写レビュー

大口径というわけではないが近景を絞り開放で撮れば、ボケ感も楽しめる。絞りF2.8・シャッタースピード1/640秒・ISO125。

「X-E5」実写レビュー

ほぼ最短撮影距離(20cm)で撮影。中心部ならピントのキレもかなりのもの。絞りF2.8・シャッタースピード1/400秒・ISO80。

 高感度も他の4020万画素機と同じく常用ISO12800、拡張でISO51200。やはり画質も同等で、ISO6400くらいでも画質低下は感じる。ただこれはノイズ処理が強めなせいもあるので、気になるならRAW現像で上手いこと処理するという手もある。

「X-E5」実写レビュー

感度別に撮影した写真の一部を拡大して比較。左上からISO1600・ISO3200・ISO6400・ISO12800・以下拡張感度ISO25600・ISO51200。

「X-E5」実写レビュー

ISO6400で撮影。厳密に見ると細部の解像にノイズ処理の影響をあるが、実用的な画質だ。絞りF5.6・シャッタースピード1/9秒。

「X-E5」実写レビュー

ISO12800で撮影。画質劣化はあるが解像度の高さでカバーしてくれる。絞りF2.8・シャッタースピード1/35秒。

「X-E5」実写レビュー

ISO25600で撮影。拡張感度になると細部の描写はツブれがち。絞りF5.6・シャッタースピード1/50秒。

「X-E5」実写レビュー

最高感度ISO51200で撮影。暗部はツブれているが、明部の解像は思いのほか悪くない。絞りF2.8・シャッタースピード1/40秒。

 初の手ブレ補正は中央7段、周辺6段の効果がある。レンズ手ブレ補正非搭載の「XF23mmF2.8 R WR」でも頑張れば遠景1秒、近景1/4秒くらいはギリいける。ただ小型ボディーのせいか雑に撮るとブレやすいので油断は禁物だ。

「X-E5」実写レビュー

遠景でシャッタースピード1秒だと、ブレ防止の確率は体感50%くらい。絞りF11・ISO500。

「X-E5」実写レビュー

近景シャッタースピード1/4秒で撮れた一枚。ちょっとうれしい。絞りF2.8・ISO160。

 撮っていてメカシャッターのバタつきや、再生ボタンを押してからから表示までワンテンポまたされるなど気になったが、やはりフラットなコンパクトボディーで街中を撮り歩くのは楽しかった。

 スペックだけ見ると、中身は「X-T50」とほぼ同等。それでも一眼スタイルとレンジファインダースタイルを好みによってユーザーが選べる懐の広さはお見事だ。

 また両機種とも一度はシリーズ終了と思わせ復活させるあたりも心憎い。そうなると次はあのハイブリットファインダーの後継機も期待してしまう。

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