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JAWS DAYS 2025で聞いた地方銀行の本音とJAWS-UGで得たつながり

コミュニティは地方創生に貢献できる 地銀情シスたちの地元愛と熱量が胸アツ過ぎた

2025年05月16日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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コミュニティは地方創生に貢献できるのか?

 地銀社員がコミュニティに参加し、エンジニアをはじめとしたさまざまな人たちとつながることができた。こうしたコミュニティは、果たして地方創生につながるのか?

 広島銀行の森さんは、多くの参加者が集まった広島JAWS FESTAについてコメント(関連記事:中国新聞社やオタフクソース 広島の100年企業はAWSをどう活用しているのか?)。「広島大学というちょっと山奥の会場に、県外の人たちがいっぱい集まっていた。基調講演を行なった県知事も、AWSやJAWS-UGというキーワードに人が集まるんだねと驚いていました」(森さん)。

 こういうコミュニティの力、AWSやJAWS-UGの認知度を使えば、森さんが愛してやまない地元広島の魅力や、広島銀行でのAWSの取り組みを幅広くアピールできるのではないかと感じたという。また、JAWS FESTAのときに送迎バスの運行確認システムが構築された事例を引き合いに、地元でAWSを使ったシステムを構築すれば、強いアピール材料になるのではと提案した。

 佐賀銀行の平島さんは、地銀のミッションとしては、地元経済への貢献があるため、よいシステムを構築して、お客さまにメリットを還元していくことが重要だと語る。その点、AWSは「小さく始められる」「世界的もユーザーが多いので、いろいろな事例がある」などのメリットがあるため、「地方の企業でも、やりたいことが実現しやすい」(平島さん)という。

 昨年、自らJAWS-UG山梨を立ち上げた山梨中央銀行の重友さんは、野上さんに促され、「地元にJAWS-UG支部がなかったことに憤りを覚えた結果、行員がJAWS-UGを立ち上げた話」を厚めに語る。

山梨中央銀行の重友さん

 重友さんは生まれも育ちも大学も山梨。「実は『億ション』に住むことが夢だった。学生時代に『SIerの社長になるぞ』と意気込んでいました。でも、就職活動のとき、ある人事課長さんに『あなたが一番大切にしているものはなんですか?』と聞かれたとき、我に返って『あれ? 山梨じゃね?』と思った」と重友さんは振り返る。

 結果、山梨にデータセンターを持つ会社に就職し、システム開発の道に足を踏み入れる。お父さんが地元の伝統工芸である貴金属づくりに従事していることもあり、重友さん自身もシステム開発に「ものづくり」という意識を持っているとのこと。そんな背景から「山梨県民がみんなAWSを使えるようになったら、めちゃ地域創生になるんじゃないか。これは全国どこでも同じはず」と真剣に思っているという。

 重友さんがJAWS-UG山梨を立ち上げた理由も、まさにそこにある。「JAWS-UGなら、底上げの機会を作れるのではないかと感じたのが、1年前のこのJAWS DAYSでした。こんな熱いイベントを山梨でも再現できないかと考えたのが、JAWS-UG山梨を立ち上げたきっかけです」と重友さんは語る。さらに地元企業の人たちと技術力の高い在京のエンジニアがつながることで、地方の底上げができる。「JAWS-UGは地方と東京のエンジニアが、企業を超えてつながれるのがありがたい。それが地域創生に直結すると思っています」(重友さん)。

 もう1つの観点は、やはり学生へのアピールだ。「私自身が山梨大学出身で、当時はクラウドなんてなくて、オンプレのサーバーが本気で欲しかったけど、高くて買えなかった。大学に数台のLinuxサーバーがあって、それをいじるという程度だった」と重友さんは振り返る。社会人になり、エンジニアとしてリアルのサーバーを触り、さらにAWSを触ったことで、大きな衝撃を受けた。「もし大学時代にサーバー作りたい放題だったら、世界変わるなと本気で思った。今の学生はその世界をつかむチャンスがある」と重友さんは語る。

 しかし、「Amazonは知っているけど、AWSを知らない学生はいっぱいいる」というのが実態。そんな重友さんが運営するJAWS-UG山梨では大学生や高校生にAWSを体感してもらいたいという。「こうしたことは地域の学校や人たちと協力してもらわないと難しいので、一歩一歩進めていきたい」と重友さんは抱負を語る。

JAWS-UGでつながって、これからも世界を拡げたい

 野上さんは、「仕事でAWSを使っていたのが、AWSのテクノロジーを通じて地方のコミュニティに参加し、このお三方は二足のわらじを履いて、仕事と地元でいろいろなことができるようになった。まさにこれが今回のJAWS DAYS 2025のテーマである『Connecting the dots』」とコメント。続いてJAWS-UGと地方銀行について、3人に話を聞いた。

AWSジャパン 野上 忍さん

 広島銀行の森さんは、「ここにいるのは都会の方だと思うけど、地方ではいろいろな情報がない。情報収集もできず、東京にもそう頻繁に行けない。要は地方は情報に飢えている」とコメント。JAWS DAYSのような機会を通して、首都圏と地方のエンジニア同士がつながることこそ、大きな価値になると指摘した。

 その上で、活動が停滞しているJAWS-UG広島支部をリブートし、地元を盛り上げたいというのが目下の目標。「広島銀行は街中に大きなオフィスをかまえているので、JAWS-UGに貸し出したい。『銀行が言うなら行ってみるか』ということで、地元の企業も参加してくれるのではないかと思う。地方では銀行もまだ強いので、集客に貢献できるかもしれない」と森さんは語る。

 その上で、「一人でAWSをカタカタ使っていたときから比べて、JAWS-UGに関わって世界が拡がった。この体験を一人でも多くの広島の人にしてもらいたい」と語る。

 佐賀銀行の平島さんは、自身の参加しているJAWS-UG佐賀について、「バルーンフェスタや佐賀市内のお祭り、ロマサガのコラボイベントなどと合わせて開催してくれるので、佐賀の人もそれ以外の人も参加しやすいように企画されている」とアピール。また、佐賀銀行のメンバーも何人かLTに登壇しているが、「行員にはこうした機会がないため、プレゼンのよい機会にもなっている」という。

 JAWS FESTAに登壇した平島さんだが、別メンバーが参加したre:Inventでつながった人と仕事につながった例もある。「まさにこれが点と点がつながっている状態。これもJAWS-UGに参加しなければ、あくまで点のまま。参加したからこそ拡がった。懇親会でもいろいろな方とコミュニケーションして、森さんと同じように世界を拡げたい」と語る。

 3人目の山梨中央銀行の重友さんは、セミナーでJAWS-UGの説明をしたときの経験として、「AWSは知っているのに、JAWS-UGを知っている地銀の人たちがびっくりするほと少なかった」とコメント。アピールの結果、セミナーに参加している60~70行はJAWS-UGを認知してもらっているが、以前の重友さんのように「技術者のコミュニティに参加してフルボッコされるのではないか」という行員も多いはずだと指摘。「ぜひ、地元の地銀の方に声をかけてあげてほしい」と語る。

 当初は同僚と二人で立ち上げようと考えていたJAWS-UG山梨だが、多くのメンバーが参加してくれた。「実は山梨を盛り上げたいと思ってくれるメンバーがすごく多くて、本当にありがたかった。一人ではできなかったけど、他の支部のメンバーもすごく協力してくれた。点と点がつながるにも、片方の手からつなぐのは勇気が要る。だから、みなさんからもアプローチしてもらい、地方銀行とJAWS-UGをつながっていけるといいなと思っている」とのコメントには、会場から拍手が寄せられた。

地方支部×地方銀行で仲間募集中!

 最後、野上さんは、「銀行員というととっつきにくい、話しかけにくいというイメージはあるが、JAWS-UGと同じような気質を持ったエンジニアはいっぱいいます。自分の地元を盛り上げたいという方は、ぜひ声がけして、新たなつながりを拡げてほしい」とまとめた。普段なかなか接することのない地銀エンジニアたちの熱量や地元愛が伝わる胸アツのセッションだった。

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