アンチパターンがSaaS開発支援基盤で“AIエージェントエコノミー”参入を支援
“API公開率が2割未満”の国内SaaSを変える 生成AIでAPI実装を60分にまで短縮
2025年03月21日 07時00分更新
SaaSアプリケーションの機能拡張やサービス統合において、重要な役割を果たすAPI。今後の進化が期待されるAIエージェントも、APIを介してSaaSを操作することで、業務の自動化を推進する。
しかし、すべてのSaaSにおいてAPIが公開されているわけではない。スタートアップ企業であるアンチパターンの独自調査では、海外SaaSのAPI公開率は「86.3%」な一方で、国内SaaSは「14.7%」と大きなギャップが発生しているという。
このような状況下で、B2B SaaSの支援事業を展開するアンチパターンが提供開始したのが、生成AIを活用してAPI実装を60分にまで短縮する新機能「Smart API Gateway」だ。アンチパターンの代表取締役である小笹佑京氏は、「今後、AIエージェントのエコノミーに参入するために、APIの公開は不可欠であり、APIの需要はより高まっていく」と説明する。
国内SaaSのAPI公開率は2割未満、海外SaaSとの間に大きなギャップ
冒頭紹介した、アンチパターンの独自調査は、「SaaS業界レポート2024(スマートキャンプが公開)」のSaaSカオスマップに掲載されているHorizontal SaaS(業界や業種を問わずに利用できるSaaS)1226サービスを対象に実施された。
運営会社を国内か海外かで分類して、範囲や条件を問わず、何らかの形でAPIを利用できるSaaSを「API提供」サービス、その中で、APIドキュメントが公開され、外部の開発者がAPIを利用できるSaaSを「API公開」サービスと定義する。
調査の結果、海外SaaS(146サービス)では、API提供サービスは92.5%、API公開サービスは86.3%であった一方で、国内SaaS(1080サービス)では、API提供サービスは「42.3%」、API公開サービスは「14.7%」にとどまった。「現時点において、国内SaaSのAPI公開率は海外に対して低いといえる。直接的な要因分析は継続的な調査が必要であるが、API市場自体は伸びていることから、このギャップを埋めるアクションが求められる」(小笹氏)。
国内SaaSのAPI公開が進まない理由のひとつとして考えられるのが、API公開におけるさまざまな課題だ。
例えば、APIの公開によって外部からアクセスされるため、適切な認証・認可の仕組みなど高い「セキュリティ」が求められる。特に、BtoB SaaSでは契約企業の情報と紐づけての制御が不可欠だ。「パフォーマンス」の面でも、API利用による負荷が予測しづらいため、スロットリング(処理を超えるリクエストを制限する仕組み)やレート制限が必要となる。
加えて日本では、「システム老朽化とレガシー依存」という特有の問題もある。「オンプレミスのパッケージソフトが多いため、APIを公開する以前に、SaaS化・クラウド化が必要となる」と小笹氏。
数行のコード追加のみでAPI公開までの作業を1時間に短縮
このような課題を解決して、BtoB SaaSのAPI公開を推進するために提供される新機能が「Smart API Gateway」である。同機能では、生成AIを活用してAPI定義を自動生成、APIエンドポイントや各種APIゲートウェイも提供する。API公開に必要なインフラや認証・認可の機能も自動で整備され、セキュアなAPIを容易に外部公開できる。
公開までの流れは、まず、公開対象のメソッドにアノテーション(注釈)を付加したソースコードをアップロード。ソースコードを解析することで、API公開に必要なリソースが生成される。その後、各設定を完了させると、裏側で認証・認可の動作などが確認され、APIが公開される。
管理画面上では、APIを発行したり、カスタムドメインやスロットリング、IP制限などを設定したりすることができる。APIドキュメントを自動生成する機能も追加される予定だ。
小笹氏は、「ソースコードを10行程度追記してアップロードするだけで、一番時間がかかるソースコード解析も30分程度ですむ。APIの本数にもよるが、1時間程度でAPIを公開できる」と説明する。同社の見積りでは、Java言語のフレームワークであるSpring bootを使用してAPIを独自で実装した場合、約990時間要するという。同条件において、Smart API Gatewayを利用することで、作業は99%以上削減できることになる。
Smart API Gatewayは、SaaSの開発・運用・販売を支援する「SaaSus Platform」で提供される。同サービスは、BtoB SaaSに共通して必要となる、マルチテナントSaaSの認証やロール管理、料金プラン管理、SDKの公開といった管理機能(コントロールプレーン)をSaaSで提供するプラットフォームである。
Smart API Gatewayは、無償プランも含む、SaaSus Platformのすべてのプランで利用可能だ。現時点では、JavaアプリケーションのAPI公開に対応しており、ユーザーのニーズに応じて、対応言語を拡大していく。
小笹氏は、「(SaaSus Platformで)パッケージソフトウェアのSaaS化からその後のAPI公開までを一気通貫でサポートする。新規SaaSの立ち上げとあわせてAPIを実装でき、APIエコノミー、ゆくゆくはAIエージェントエコノミーにも素早く参入できるようになる」と強調した。
