2024年度の決算・事業説明会で振り返るkintoneの成長
kintone価格改定の影響は? 全社導入の推進で売上倍増を目指すサイボウズ
2025年03月03日 16時30分更新
生成AI対応に舵を切ったkintone、基幹システムとの連携も
ここからは、2024年度のトピックを4つのテーマで振り返る。
ひとつ目は、kintoneの課題である「全社・大規模導入の推進」だ。1000ユーザー以上の大企業での利用に対応すべく、2024年7月、kintoneに「ワイドコース」を追加。大規模利用向けの機能を追加し、利用可能なアプリ数やスペース数、APIリクエスト数の上限を拡張したプランとなる。
実際にkintoneの全社・大規模導入は徐々に増えている状況で、阪急阪神不動産では約1000名がDX基盤として利用、ダイドーグループホールディングスでは約450個のkintoneアプリが作られているという。
2つ目は、「kintoneの導入・活用用途の拡大」だ。活用用途としては、生成AI対応に舵を切った年となる。2024年11月のCybozu Daysでは、kintoneの検索機能とRAGの仕組みを組み合わせた「kintone AIアシスタント(仮称)」のベータ版を発表。kintoneのデータを生成AIと組み合わせて検索できる機能で、kintoneに蓄積されたデータの効率的な活用が可能になる。一部のユーザー企業でテストが進み、2025年度にはリリース予定だ。
また、2024年10月には、メールの送受信ができないというkintoneの課題を解決すべく「メール共有オプション」の機能を追加。kintone上でのメールの送受信や共有が可能になり、kintone上で管理する業務情報と紐づけることもできる。
導入先としては、自治体での活用が広がっており、kintone導入自治体数は約380団体に達した。2023年度から開始した「まるごとDXボックス」の参画パートナー企業は40社を超え、自治体向けのエコシステムも拡大中だ。
3つ目は、「エコシステム拡大への取り組み」だ。2024年度には、オフィシャルパートナー社数は500社、連携サービスは400サービスを突破するなど、年々拡大を続けている。生成AI関連のサービスも登場しはじめた。クラウドの間接販売の比率も、64.7%にまで達している。
アーリーステージ以降のスタートアップに対しては、「kintone Teamwork Fund」というファンドも立ち上げており、2024年度は4社に出資。注力投資領域は、「生成AIをはじめとする新技術」「業界特化」「グローバル市場向け」とkintoneとのシナジーを重視する。
また、エコシステムで進展したのは、主要な基幹システムとの連携だ。「勘定奉行クラウド」とkintoneの密連携が可能となり、2024年10月より連携サービスを開始している。「基幹システムと情報システムがデータ的に陸続きとなり、低価格かつ柔軟に周辺を含めた基幹システムが構築できる時代が近づいている」(青野氏)。
最後は、「信頼性強化に向けた取り組み」だ。サイボウズでは、クラウド事業の開始時から、外資に頼らずに価格を最適化できるよう、自社でクラウドインフラ基盤を開発・運用している。2018年からは1000台規模のインフラをKubernetesの基盤で刷新するプロジェクトを開始。この信頼性を高めた新クラウドインフラ基盤「Neco」への移行を順次進めており、データベースやアプリケーション領域は、既に新環境で稼働している。
認証の取得にも継続的に取り組んでいる。情報セキュリティマネジメントシステムの「ISMS」や政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)の取得・更新を続けているほか、海外向けのkintoneにおいては、「SOC2 Type2保証報告書」を2024年8月に受領している。
その他にも、事業状況に合わせた新たな組織体制として、大企業およびグローバル展開に注力すべく、「エンタープライズ事業本部」「グローバル事業本部」を設置。また、全社横断的な意思決定をするための「全社戦略室」も設けている。










