業務を変えるkintoneユーザー事例 第255回
推進の秘訣は「製造業あるある」の解消と情シスとの「橋渡し役」の存在
ロート製薬にみる工場DXの進め方 現場社員の“気づき”がkintoneで全社に羽ばたく
2025年02月12日 09時00分更新
3万社以上に導入されているノーコード・ローコードツール「kintone」。日本の中核産業である製造業でも例外ではないが、「工場での活用イメージが湧かない」、「現場の巻き込み方がわからない」という声もよく挙がるという。
2024年11月に開催された「Cybozu Days 2024」では、三重県の工場を舞台に、kintoneの活用と定着に取り組んだロート製薬が登壇。改善活動において、現場の気づきをkintoneで広げる、同社の挑戦を紹介する。
現場の“気づき”の効率的な集計、可視化、拡散にkintoneを活用
大阪に本社を構え、2024年には創業125年を迎えたロート製薬。主力は売上の約7割を占めるスキンケア製品であり、約2割のアイケア製品も国内トップシェアを誇る。これらの製品を生産する工場のひとつが、三重県伊賀市上野にある「上野テクノセンター」だ。敷地面積は10万㎡以上で、2023年度にはスキンケア・アイケア製品を約1億6000万個も製造した。そして、この工場内では「改鮮隊」という組織が、改善活動を推進している。
この“改鮮”とは、日々新鮮な気持ちで、改善活動を学んだトヨタに近づこうという意味が込められている。上野新改鮮隊 隊長である辻森俊作氏は、「2005年の薬事法の改正で、ロート製品を他社でも製造できるようになった。ロートの工場が生き残っていくためには、現場力の強化、つまりQCD(品質・コスト・納期)で他工場に負けないことが求められた。QCDを改善できる人材を育成するために始めたのが改鮮活動」と説明する。
改鮮活動で注力するのが「気づき」ができる人材の育成だ。「問題がないと、改善のスタートラインに立てない」(辻森氏)ため、2005年から現場メンバー全員が「月に1件、改善の気づきとその対策」を見つけるという活動を継続してきた。20年近く続けている一方で、課題も多かったという。
まず、気づきの入力方法が、アナログの紙からデジタルのExcelやTeamsまで、チームによってバラバラ。そのため改鮮隊は、各チームの現場から気づきを回収して、Excelに打ち直すという作業を2時間かけて行っていた。
また、他チームが見つけた気づきも、現場にまで行かないと確認できないなど、良い気づきがあってもそれを広げるための仕組みが不十分だった。それを変えたのが、工場以外での活用が進んでいたkintoneだった。
kintoneを気づきを集約する基盤にすると共に、他部門との連携が必要な、修理が必要になるような気づきの対応においては、プロセス管理の機能でワークフローを回す仕組みを構築した。
工場ならではの課題は各プラグインで解決した。Webフォームを作成してkintoneと連携できる「FormBridge(トヨクモ開発)」によって、現場メンバーは、デバイスや時間、場所の制限なく、気づきを見つけたタイミングで入力できるようになった。kintone内の情報を外部公開できる「kViewer(トヨクモ開発)」を利用することで、kintoneアカウントを持っていないメンバーも、各チームの気づきや対応状況を参照できる。
時間を要していた集計作業も、Excelライクな見た目でkintone内のデータを可視化できる「krewDashboard(メシウス開発)」によって、自動でダッシュボード化され、対策率なども確認できるようになっている。
良い気づきは、各チームで週一回選抜され、工場の通用口のサイネージに表示される。社員証を使って投票もでき、気づきを見つけるモチベーションを高められるような設計になっている。
kintoneは、こうした気づきの基盤としてだけではなく、「アルバイトのシフト管理」や「工場の来訪者管理」にも活用されている。今後は、kintoneによる気づきの創出や共有の仕組みを全社展開していき、現場が見つけた気づきを全社で見られるようにしていく予定だ。ビデオ登壇した、新改鮮隊の総長である小口氏は、「kintoneで、“ひとりの気づきがみんなの気づき”になる。離れた人や部門の気づきの横展開が想定外に加速した」とコメントしている。

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