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Antutu300万点越え! Snapdragon 8 Eliteをベンチマークしまくったら、エリートにふさわしい実力とわかった

2024年10月25日 10時00分更新

文● 石野純也 編集●ASCII

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 10月21日(現地時間)から3日間に渡ってマウイ島で開催されたクアルコムの「Snapdragon Summit 2024」。会期3日目にあたる23日には、ベンチマークセッションが開催された。21日に発表された最新のプロセッサー「Snapdragon 8 Elite」を内蔵したリファレンスモデルを手に取り、一般公開されている各種ベンチマークアプリでその性能を比較するというのがこのデモの趣旨だ。

Snapdragon

Snapdragon 8 Eliteを搭載したリファレンスモデル

様々なベンチアプリで
最新のSnapdragon 8 Eliteの実力を知る

 リファレンスモデルは一般的なスマホと同じで板状の端末。側面のフレームにはアルミとみられる金属素材が使われており、ここをアンテナにするための切り欠きもあった。市販のスマホよりもスリットが太いのは、リファレンスモデルとして電波の利得を最大化するためか。このモデルを使い、複数のベンチマークアプリで比較を行なった。

Snapdragon

アンテナの実装の仕方などリファレンスモデルっぽさはあるが、おおむね市販の端末に近い形で仕上げられている

Snapdragon

 Snapdragon 8 Eliteは、CPUにモバイル端末に合わせた最適化を施した「Oryon」が搭載されている。昨年登場した「Snapdragon 8 Gen 3」までは、Armのコアをそのまま利用した「Kryo」が採用されていたが、これをクアルコムのカスタムコアであるOryonに一新し、パフォーマンスや省電力性能を大きく底上げした格好だ。GPUもスライス型になり、処理能力が上がった。これに加えてNPUも処理能力を高めている。

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性能面に関するSnapdragon 8 Eliteの主な特徴

とんでもない進化!
これからAntutuは300万点の時代に突入

 まずは、みんな大好きAnTuTu Bencmarkから。このベンチマークはAndroid、iOSをまたがったクロスプラットフォームで提供されており、CPU、GPU、メモリ、UXなどをまとめて計測したあと、総合点を算出する仕組みを採用している。最新のハイエンドモデルだと、このスコアはおおむね200万点前後になるが、150万点程度あればゲームなどもサクサクと動くことが多い。

 Snapdragon 8 Eliteで計測した結果は以下のとおり。いきなり300万点を超えるスコアをたたき出した。筆者もレビューなどの際にAnTuTu Benchmarkを使って性能を測ることがあるが、300万点超のスコアは初めて見た。クアルコムは、Snapdragon 8 Eliteを過去最速とうたっているが、その宣伝文句に偽りなしといったことが分かる。

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AnTuTu Benchmarkでは、なんと300万点を超えた

 では、過去のモデルと比較するとどうか。Snapdragon 8 Gen 3を搭載する「Galaxy Z Fold6」や、Googleが独自設計した「Tensor G4」を搭載する「Pixel 9」と比較してみた。なお、2モデルとも筆者私物で普段使いしているため、一部バックグラウンドでアプリが動作している可能性があり、素の状態よりもベンチマークにリソースを割けないことから、スコアが低下している可能性がある点にはご留意いただきたい。

 また、「iPhone 16 Pro」でAnTuTu Benchmarkを取ろうとしたが、アプリが起動しなかったため比較から省いている。

Galaxy Z Fol6やPixel 9と比較
CPUやGPUで性能の差が大きく開いた

 まず、Galaxy Z Fold6は170万点強のスコアを記録した。Snapdragon 8 Gen 3を搭載する端末の中には200万点を超えるものもあるため、やや低い数値と言えるかもしれない。実利用環境で測定したことが影響している可能性もある。とは言え、この差からSnapdragon 8 Eliteがいかに大きく性能を上げているかも分かる。

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Galaxy Z Fold6から、100万点以上スコアが伸びている

 細かく数値を比較していくと、特にCPUやGPUでの差が大きく出ていることが分かる。CPUやGPUを一新している影響は大きいと言えそうだ。単純な世代表記ではなく、“Elite”を冠しているのも納得だ。

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CPUやGPUで特に得点差が大きくなっている

 Pixel 9との差は、さらに大きい。Pixel 9で計測したスコアは110万点台。もともと、Pixelシリーズはあまりベンチマークアプリで高スコアが出る端末ではなく、GoogleのアプリやAIサービスに最適化しているきらいはあるものの、フラッグシップモデルとしてはやや寂しい数値だ。Snapdragon 8 Eliteとは、3倍程度の開きが出ている結果となった。

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Pixel 9には3倍近い差をつけている

 Snapdragon 8 Eliteは、一般的なユーザーのユースケースに合わせた高速化も図られており、具体的には利用頻度の高いChromeが素早く動作することも売りにしている。これを計測するブラウザーベンチマークの「Speedometer 3.0」では、34.5というスコアが出た。Snapdragon 8 Gen 3のGalaxy Z Fold6では13.7、Tensor G4のPixel 9では11.4で、ブラウザーの動作速度も大きく伸びていることが確認できた。

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ブラウジングの速度も大きく伸びた。右がSnapdragon 8 Elite

 一方で、ブラウザーの速度に関してはiPhoneもかなり優秀だ。「A18 Pro」を搭載したiPhone 16 Proでは、Snapdragon 8 Eliteと同じ34.5という結果が出た。3回程度測りなおしたが、結果は1勝1敗1分。Chromiumを使うChromeと、WebKitのSafariでは、ブラウザーのレンダリングエンジンも異なるため、この差は一概にチップセットだけのものとは言えないが、Snadpragon 8 Eliteに勝るとも劣らない性能だ。逆の見方をすれば、Snapdragon 8 Eliteによって、AndroidもiPhone並みになると言えそうだ。

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iPhone 16 Proはブラウジングの性能も高く、スコアはSnapdragon 8 Eliteとほぼ互角だった

GeekbenchでCPUスコアを計測
M4搭載のiPad Proと遜色ない数値が出た!

 CPUに関しては、「Geekbench 6」を使ったスコアも算出した。結果はシングルコアが3219、マルチコアが1万413。スマホで1万点超えのスコアは初めて見た。筆者が所有しているデバイスだと、数値はM4搭載の11インチiPad Proに近い。

 Snapdragon 8 Gen 3のGalaxy Z Fold6はシングルコアが2167、マルチコアが6573。シングルコア、マルチコアともに1.5倍前後の開きがあり、公式にうたっている45%のパフォーマンス向上という数値が正確であることが分かる。

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Geekbench 6のスコア。右がSnapdragon 8 Eliteだが、左のGalaxy Z Fold6と比べると公称値に近い差が出ている

 Geekbench 6に関しては、iPhone 16 Proも優秀で、シングルコアスコアについてはSnapdragon 8 Eliteを超える3502をたたき出した。一方で、マルチコアスコアに関しては8738と及んでいない。Snapdragon 8 EliteはPrimeコア2つとPerformanceコア6つの計8コアで、A18 Proの6コアよりコアが1つ多い。クロック周波数も高いため、こうした差がマルチコアの性能差につながったようだ。

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シングルコアスコアではiPhone 16 Pro(左)に及んでいない。マルチコアスコアではコア数の差もあり、Snapdragon 8 Eliteが高スコアを出した

 ただし同じGeekbenchでも、GPUスコアについてはiPhone 16 Proの性能が非常に高く、3万3337を記録。対するSnapdragon 8 Eliteは1万8120にとどまった。とは言え、これでもGalaxy Z Fold6の1万6079より高く、パフォーマンスが確実に底上げされていることが分かる。

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GPUのスコアはiPhone 16 Proに軍配が上がった

 トータルで見ると、やはりSnapdragon 8 Eliteのパフォーマンスは非常に高いと言っていいだろう。チップセットの処理能力では、Aシリーズを搭載するiPhoneにリードを許していたAndroidだが、Snapdargon 8 Eliteの登場によってその定説がくつがえることになりそうだ。

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